第31回:日本のチューニング界は今!(その1)恒例ワークスチューニング合同試乗会に潜入

2003.06.06 エッセイ

第31回:日本のチューニング界は今!(その1)恒例ワークスチューニング合同試乗会に潜入


第31回:日本のチューニング界は今!(その1)恒例ワークスチューニング合同試乗会に潜入の画像
STiとラリーアート、ラリーフィールドのライバル同士は、会場にメカニックカー(?)を用意していた。
STiとラリーアート、ラリーフィールドのライバル同士は、会場にメカニックカー(?)を用意していた。

■“ハグレ者”の集まり!?

またまた今年もやってきました。春恒例の「ワークスチューニング合同試乗会」。1996年に行われたのが最初で、もう7年目なんだそうだけど、毎回参加してる気がする……。全然「走り」の人じゃないのになぁ、俺。
分析すると結局、自動車ジャーナリスト界の“バラエティ班”(別名なんでも屋)の俺ゆえに、こういう仕事がまわってくるんでしょう。ポルシェの海外試乗は大御所Yさんとか、フェラーリ・エンツォは各名門雑誌の編集長とか暗黙で決まってるように。タマにはコッチにも来ればいいのにねぇ。面白いよ!

さて、今回(も!)乗ったのは、トヨタのTRDと、日産のNISMOと、スバルのSTiと、マツダのマツダスピードと、ホンダの無限と、三菱のラリアートチューンの、各“イチオシチューンドカー”。
見ればわかるが、それぞれの“オフィシャル”チューニングブランドばっかり。元々90年代半ばの「東京オートサロン」会場で、各チューニング部門の担当者が「俺たちもこういうのできないかなぁ」という雑談をしてて決まったらしい。要するに“日本株式会社”にしては珍しい「横のつながり」がきっかけなのよ。だからこそノリがユルく、だからこそ今だマイナーイベントにとどまってるような気もする……って気のせいか!
そのぶん、この試乗会の場合、特に「夜」盛り上がるんだそうで、そりゃトヨタ、ホンダ、日産、マツダ、スバル、三菱の各“ハグレ者”(!?)の集まりだもんなぁ。果たしてどういう愚痴が飛び出るんでしょうか。ホントはそこに潜入したいような気もするが……。

ま、とりあえずはTRDから行ってみましょ〜


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「TRD ヴィッツ Street Spec. “with TRD Turbo kit”」は、「ヴィッツRS」(1.5リッター4AT)をベースにする“ストリート快適スポーツ”仕様。足まわりは「TRD Sportivo」サスペンションセットを装着。ブレーキラインやフールドなども変更されている。
「TRD ヴィッツ Street Spec. “with TRD Turbo kit”」は、「ヴィッツRS」(1.5リッター4AT)をベースにする“ストリート快適スポーツ”仕様。足まわりは「TRD Sportivo」サスペンションセットを装着。ブレーキラインやフールドなども変更されている。
サイドサポートのきいた「スポーツシート」を装着。ヒップポイントは、ノーマルより約15mm低い。
サイドサポートのきいた「スポーツシート」を装着。ヒップポイントは、ノーマルより約15mm低い。

■TRDの前に……最新チューニングカー事情!

まずはTRDだけど、今年は「ヴィッツ・ターボ」の5MTと4ATが来てました。
ここで全体の流れをいっちゃうと、昨今の傾向としては、TRDに限らず、メカチューンは全然流行っておらず、エアロチューンがメイン。つまり、ターボキットや足まわり関係はあまり売れず、エアロパーツばかりが売れる状態。
ここ10年はそういう感じで、最近はエアロすらヤバいって話もあった。それはチューニングカーの祭典「東京オートサロン」でもうかがえて、なんせ一時、「RE雨宮、倒産!?」のウワサすらあったもんね。いまだに「全日本GT選手権」にも出てるってのにさ。
でも、RE雨宮の本拠地が東京の東砂から千葉の富里に変わったのは事実で、昔ほど潤ってないみたいではあるのだが……。

では、ここ数年なにが大きな流れなのかというと「純正チューニングパーツの台頭」につきる。要はディーラーで付ける純正オプショナルパーツとして、TRDや無限、NISMOパーツが出るケースが増えているのだ。
理由は昔に較べ、普通のユーザーでも「チューニングに対する抵抗」がなくなってるのと、ミニバン、コンパクトカー等、バカ売れだけど、どうしてもセダン以上にみんな似通っちゃうため「差別化」としてエアロパーツ需要が増えてるから。もうひとつの理由は「不況」で、そういう事情に目をつけて、メーカー側がバシバシ純正パーツを出してるってのもあるし、さらに純正チューニングパーツの場合、買う時に車両本体価格とひっくるめてローンが組めるため気楽に買えるという事実がある。
ついでに次にクルマを売る場合、今までの外付けパーツだったら査定が下がっちゃうのに比べ、「純正」がゆえに値段が下がらない、どころか逆に人気パーツの場合、査定が上がるケースがあるというのも人気の秘密。ま、やっとチューニングカーがマトモに評価される時代になったともいえるけどね。


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ターボチャージャーにより過給される1.5リッター直4は、ノーマルより41psと5.6kgm高められた、150ps/6400rpmの最高出力と20.0kgm/4800rpmの最大トルクを発生する。
ターボチャージャーにより過給される1.5リッター直4は、ノーマルより41psと5.6kgm高められた、150ps/6400rpmの最高出力と20.0kgm/4800rpmの最大トルクを発生する。

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■ATでも本格的

ってなわけでTRDに戻るんだけど、実は今一番売れてるパーツって「ウィッシュ」のエアロなんだそうな。そりゃそうだ。発売直後1ヶ月の受注台数が3万8000台、いまだにひと月1万5000台ぐらい売れてるオバケグルマ。エアロ需要の多さも当然。でもね。TRDはそこであえて「中身で勝負」と行きたいらしいのだ。
「エアロが売れてるからエアロを出す」じゃ、世の中の動きは変えられない。易きに流れるのではなく、しっかりとした「チューニング本来の喜び」を味わえるパーツを出しましょう、と。そこで出てきたのがこのヴィッツターボだ、と。とくに4AT仕様ね。

ヴィッツターボの5MTは、今までにもモデリスタのコンプリートカーと存在していた。だが4ATはなかった。そこでTRDがボルトオン・ターボパーツとしてこのたびリリースしたのだが、目的は「レースなどではなく、普通にヴィッツを運転される方で、速いクルマを求められる人」向け。
これがまあ乗ってみると速いんだわ。それもドッカンじゃなくって、踏むといきなり速い。「日常的な速さ」を求めたってのがよくわかるでき。
でもね。特に驚いたのが足の硬さと音、そしてブレーキのタッチよ。無論、TRDが全面的に手を入れた仕様になってるんだけど、エンジンは3000rpmを超えればいきなり「ゴーッ」ってサウンドが鳴り響くし、足の硬さもかなりのもの。普通にコーナリングしてるだけじゃ、ロクにロールもしない。ブレーキもやたらよく、しかもカクっと効く。「これで本当に素人向けなのかぁ〜?」って感じなんだけど、こういうのが欲しい人ってのもいるんだろうなぁ。

世の中、ホント「走りたい欲求」を持った人は外からじゃわからない。そういう人には、ATでもこれくらい本格的な仕様が必要かもしれないし、これまたひとつのチューニング業界の広がりかもね……、とか思っちゃいました。

(文=小沢コージ/写真=峰昌宏/2003年6月)

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小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 ホームページ:『小沢コージでDON!』