第17回:バーゼル通信(その1)〜時計はクルマの100年後である!?

2003.04.30 エッセイ

第17回:バーゼル通信(その1)〜時計はクルマの100年後である!?

いやー、やっと報告できます「バーゼルショー」。そう、年に1回、スイスで開かれる世界ナンバーワンの時計ショー。コレに来てるんだけど、ゼンゼン写真送れなくってさ。読者のみなさま、遅くなってすいません。

さて、なんで俺が時計の取材してるかってね。改めていうと、「時計業界はクルマ業界の100年後を暗示している!」と思うわけですよ。
というのも今後10年以内に燃料電池はもっと普及し(たぶん)、電気自動車が出まわるわけです(おそらく)。どのくらい普及するのかって疑問はあるけど、もしコスト的にも安全性的にも「ゼンゼンOK!」となったら、環境&エネルギー問題的に、数10年のスパンでイッキにそっちにいく可能性がある。なかなか想像できないけどね。

それは完全に「時計でいえばクオーツ」なわけです。セイコーが1969年に腕時計クオーツを実用化して以来、その正確さ、耐久性、小型軽量さからイッキに広まり、70、80年代にはそれまでのひげぜんまいとテンプで動く機械式時計は壊滅的被害を被った。一時は、今をときめく「ゼニス」とか「オメガ」だって売却の憂き目にあっていたんだからね。ところがやっぱり90年前後の、日本でいえば「ロレックス」ブームなどから始まり、機械式時計は完全復活。いまや売上ではクオーツを凌ぐほどになった。
それはね。もちろん計時の正確さでは劣るんだけど、“金属のタッチ”とか“ギアの動き”とか「目ですべての仕組みが追える」ことの魅力なわけです。人間、特にオトコにとっては、そういうのってわりと本能的なものなんだろうね。要するに内燃機関と一緒なわけですよ。ガソリン、ディーゼルエンジンと。ガソリンの匂い、燃焼しているフィーリング、音、パワー感が魅力なわけでしょ。

だからさ。今後数10年の間で、たとえ実用面で電気自動車や燃料電池車にとってかわられたとしても、内燃機関はなくならないと思う。いや、たとえなくなっても復活するはずだ。まるで機械式時計のように。
実際、「フェラーリ」や「メルセデスベンツ」、ましてや「F1」が完全になくなるとは思えないでしょうが。たとえ一般大衆的には使われなくなっても、一部お金持ち用、一部娯楽としては残るはずだ。

その時にはいまよりもっとエンジンがハチャメチャな進化、つまり技術を安全や環境ではなく、“娯楽”方面に費やすものが出てくると思う。いわばW12気筒とかV14気筒とかね。ダブルウィッシュボーンを越えたトリプルウィッシュボーン!? とか。
それって要するに、機械式時計のトゥールビヨンとかミニッツリピーターなんてそういうノリなわけだよね。

そういう意味で、機械式時計の世界はすんごく勉強になるんです。だから俺はバーゼル&ジュネーブくんだりまで出てきたと。
単純に好きだってこともあるけどね。『時計Begin』(世界文化社)の連載もあるし。ま、とりあえずしばらくは報告し続けるんで、こうご期待!

(文=小沢コージ/2003年4月)

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小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 ホームページ:『小沢コージでDON!』