伝説の「インディマシン」たち
2003.04.04 自動車ニュース伝説の「インディマシン」たち
インディカー(IRL)公式戦「インディ・ジャパン300マイル」を2003年4月13日に控えたツインリンクもてぎは、1911年に始まった「インディアナポリス500」で活躍した往年のレーシングマシンなどを展示した「レジェンド・オブ・インディ」を開催している。インディアナポリスの「ホール・オブ・フェイム」からはるばるやってきた貴重なレーシングマシン4台を紹介する。
■戦前のセミストックカー
・・・フォード・ミラーV8(1935年)
1920年代のインディ500には、シボレーやデューセンバーグなど、その後の自動車業界を背負って立つメーカー創設者たちがこぞって参戦していた。
ハリー・ミラーもその中のひとり。ミラーとフォードが共同で手がけたマシンが「フォード・ミラーV8」だ。
ミラーが設計した市販車ベースのマシン(“セミストック”と呼ばれる)に、フォードの3.6リッターV8ユニットを搭載。前輪駆動、四輪独立懸架、着座位置の低いボディが注目を集めたが、レースでの成績は振るわず。4台が出場したが、ステアリング系統の設計にミスがあり続々とリタイア。展示車はテッド・ホーンにより16位でフィニッシュしたものだ。
巨額の資金を投資したフォードはこの年に撤退、その28年後に復帰した。
■2人を優勝に導いたマシン
・・・ノック-アウト・ホース・クランプSpl(1941年)
このマシンの特徴は、ハードウェアよりもレースでの“活躍”にある。ポールポジションのマウリ・ローズは、ノック-アウト・ホース・クランプSplを駆りレースに出場。60周目に点火系統のトラブルで戦列を去ったが、同じマシンに乗っていたチームメイトのフロイト・デイヴィスがピットインした際にデイヴィスのマシンにスイッチし、優勝を掻っ攫った。レース後、ローズ、デイヴィス双方が勝者として認められ、1924年以来の“2人ウィナー”となった。
シャシーはウェッタロス製、エンジンは“オッフィー”の名前で知られる4.4リッター。
この年の12月に太平洋戦争が勃発、次にインディ500が行われたのは1946年だった。
■強烈なインパクト
・・・ロータス56“ウェッジ”タービン(1968年)
インディ史上、これほど強烈なインパクトを与えた1台はなかったかもしれない。ガスタービンを動力源とした四輪駆動車が初めて決勝に駒を進めたのは1967年。エントリーしたのは、オイルなどで有名な「STP」を興した男、アンディ・グラナテリだった。
「ヒュイーン」という独特のサウンドを響かせ、圧倒的な速さを見せつけレースをリードしたが、残り3周というところでギアボックスが壊れリタイアした。
規制が強まった翌1968年は、ロータスが手がけた3台のガスタービンカー「56」がエントリー。ズングリムックリした前年型とは違い、ウェッジシェイプ(くさび形)の美しいボディを身に纏っての登場だった。予選では上位に食い込んだものの、規制の影響か、レースでは苦戦をしいられた。F1チャンピオンのグラハム・ヒルはクラッシュしてリタイア。ジョー・レオナードの56は、トップを走行していた残り9周という時点で突如スローダウンし、チェッカードフラッグを受けずに終わった。
優勝は、ボビー・アンサーのイーグル・オッフィー。名門アンサー家の記念すべきインディ初勝利となった。
■バーナード作“イエローサブマリン”
・・・シャパラル2K(1980年)
コーリン・チャップマンがF1マシン「ロータス79」でグラウンドエフェクト(対地効果)を導入したのは1978年。揚力を生む飛行機の翼の原理を利用し、マシン下を逆翼状としダウンフォースを得るという考えは、1979年にインディへも飛び火した。
ジム・ホール率いる「シャパラル」の名を冠した「2K」は、その後F1のマクラーレン、フェラーリなどでマシンを手がけることになる名デザイナー、ジョン・バーナードのデザイン。初インディは1979年。アル・アンサーがステアリングを握り独走を見せたものの、ギアボックスからオイルが漏れ、あえなくリタイアとなった。
翌年、2Kのコックピットには、1974年と76年のウィナー、ジョニー・ラザフォードが座った。予選でポールポジションを獲得、圧倒的な速さでレースでも主導権を握り、グラウンドエフェクトカーでの初勝利を飾った。
(webCG 有吉)
「ツインリンクもてぎ」:
http://www.twinring.jp/
「インディ・ジャパン300マイル」:
http://www.indyjapan.com/
「ホンダコレクションホール」:
http://www.honda.co.jp/collection-hall/
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
-
第497回:ダウンサイズ&ミニマル志向のキャデラック 新型クロスオーバー「XT4」を解説する
2018.4.21エディターから一言ニューヨークオートショー2018で、キャデラックは新型クロスオーバー「XT4」を世界初披露した。同ブランドの新世代戦略の皮切りに位置付けられるXT4の見どころとは? ショー開幕前夜に開催されたプレビューの模様をまじえて、詳しく解説する。 -
ホンダ・クロスカブ110(MR/4MT)【レビュー】
2018.4.21試乗記ビジネス用途の「スーパーカブ」をベースに開発された、ホンダの小型バイク「クロスカブ」。その最新型は、「単なるバリエーションモデル」と割り切れない、独自の魅力を持っていた。 -
第550回:伝えたいことはボディーに書いちゃえ!? iPhoneや飛行機になりたかった(?)クルマたち
2018.4.20マッキナ あらモーダ!30年前のジウジアーロのコンセプトカーから、ボルボの最新の電動化モデルまで。クルマのボディーにデザインされた“文字”には、デザイナーのどんな思いが込められている? 大矢アキオが考えた。 -
メルセデス・ベンツE200カブリオレ スポーツ(FR/9AT)【試乗記】
2018.4.20試乗記新型「メルセデス・ベンツEクラス カブリオレ」に試乗した。“先代よりも大きく広くなった”とはいえ、セダンと比べると実用性では大きく劣るのがオープントップモデルの宿命。過去に3台のオープンモデルを乗り継いできたリポーターは、どこに価値を見いだした? -
第169回:悲劇の真実を世界に伝えたキア・ブリザ 『タクシー運転手~約束は海を越えて~』
2018.4.20読んでますカー、観てますカー実在の人物をモチーフに、韓国現代史上最大の悲劇となった光州事件を描く『タクシー運転手~約束は海を越えて~』を紹介。戒厳令下の言語統制をくぐり抜け、全世界に実情を伝えたドイツ人記者と、彼を乗せてタクシーを走らせた運転手の見たものは? -
祝! 生誕50周年 いまや希少な初代「ローレル」を振り返る
2018.4.20デイリーコラムメカニズムは当時のBMWを超えていた!? 1968年に生まれた初代「日産ローレル」はどんなクルマだったのか、生誕50周年を迎えたいま、詳しく解説する。