第12回:楠みちはる先生とのジョナサントーク(その2)

2003.03.31 エッセイ

第12回:楠みちはる先生とのジョナサントーク(その2)

(前回からの続き)ところで、楠みちはる先生は、なぜ漫画家になったのか。今回、その話になったのでちょっとご紹介。

もともとセンセーはかなりの不良だったそうな。『シャコタン☆ブギ』にあるように、四国は高知の生まれで(主人公のハジメはセンセーそのもの!)、高校時代にバイクに目覚める。ご両親は確か青果業をやっておられ、それなりにお金はあるが苦労人って感じ。
そこで第一のドラマが。高校時代、バイクでケガをしてしまうのだ。結構な大事故で長期入院。それをきっかけに退学してしまう。学校行くのがやんなっちゃったのね。

で、ここからが泣ける。見かねたオヤジさんが「クルマ買ってやるから高校いけ」と言って今もセンセーが持っている「いすゞ117クーペ」を買ってくれるのだ。それも新車で。本当は「GT-Rが欲しかった」そうだが、下取りに出せたのがオヤジさんが使ってたいすゞのトラックなんで仕方なく。
いい話なのだが、なんとこのセンセー、親不孝なことにすぐシャコタンにしてしまい、こっぴどく怒られる。オヤジさんが生まれて初めて買った新車だったそうな。当然だよね。

で、この117クーペでナンパだの走りだのに精を出すわけだが、ここんとこの体験が漫画『シャコタン☆ブギ』になる。
ちなみに漫画に出てくる初代「ソアラ」は117の代わり。当時、ちょうどソアラみたいな存在のクルマだったそうな。

さて高校を卒業して大阪に出たセンセー。なにを思ったかバーテンを始める。そこで例の名作『サーキットの狼』を読むと同時に、街角で「フェラーリ・デイトナ」を偶然見かけるわけだけど、ここで「な、なんてかっこいいんだ〜」と衝撃! クルマ漫画を描き始めるとか。
なるほど。
そう、やっぱりそういう出会いがあった。それから十分多感で面白い青春時代も送ってる。高知だしね。自由奔放でクルマを取り巻くすべてが楽しかったんでしょう。

でもね。そういう面白い体験もさることながら、物語を描けるか、描けないかはまったくの才能だとも思った。とかく普通は「俺の青春は面白かった」だけで終わっちゃうんだよね。せいぜい飲み屋で話すか、彼女に話すだけ。だけどセンセーはそれをOUTPUTする方向に向う。それは才能だよね。まったくの。

あとつくづく「漫画」というスタイルと「フェラーリ」の凄さも思い知る。おそらくこの2つがなければセンセーは世に出なかったでしょう。なかなか「小説家」ってのは思いつかないし、クルマも単純に「トヨタ・スープラ」とか「ホンダNSX」じゃ感銘を受けないから。やっぱ「フェラーリ」それも「デイトナ」ってとこがよかったんだろうなぁ。つくづく人生、出会いが大切です!

(文=小沢コージ/2003年3月)

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小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 ホームページ:『小沢コージでDON!』