2003年のF1、タイムアタックは1発勝負

2002.10.29 自動車ニュース

2003年のF1、タイムアタックは1発勝負

2002年10月28日、F1チームの代表や関係者で構成されるフォーミュラワン・コミッションは、イギリスのロンドンで会合を開き、2003年シーズンに向けたルール変更を発表した。予選方式やポイントシステムの変更など、6項目にわたる大きな改革が行われることになった。

■過激さは、より現実的に

2002年、F1は2つの大きな問題に直面した。
ひとつは、“ショウ”としての魅力の欠如だ。コース上の抜きつ抜かれつも今は昔、ピット作戦による順位変更で勝敗が分かれるのが今のF1の姿。おまけに2002年はフェラーリとミハエル・シューマッハーの独走に次ぐ独走。F1の興行面を支えるテレビの視聴率は、全世界的に落ち込んだ。

もうひとつの問題は、高騰するチームの運営コストだった。シーズン前、プロストがフランスの裁判所から解散を宣告され、シーズン中にはアロウズが参戦不能状態に陥った。佐藤琢磨が所属するジョーダンは人員削減を行い、また“テールエンダー”のミナルディも、常に撤退の可能性を孕んでいるといわれている。上記は、資金難でF1を去ったチーム、あるいは台所事情が苦しいチームだ。
昨年、トラクションコントロールをはじめとする電子制御技術、いわゆる“ドライバーズ・エイド”が再び解禁されるなど、マシン開発にかかる費用も増加の一途をたどっている。そして(特に昨年のアメリカ同時多発テロ以降)不活発な世界経済が、さらに追い討ちをかける。
フェラーリ、マクラーレン、ウィリアムズのいわゆる“3強チーム”、そしてルーキーながら潤沢な資金を投入できるトヨタなどを除き、コスト削減が必須のチームが多く存在するのは事実である。

シーズンも終わりに差し掛かった頃、F1を統括する国際自動車連盟(FIA)のマックス・モズレー会長は、ルール面での改革案をチームに提案。ドライバーが全チームを渡歩くという「ドライバーズ・スワッピング」や、ポイント1点につき1kgのバラスト(おもり)を載せる「サクセス・バラスト」など9つのルールチェンジを打診した。

今回発表されたルール変更は、モズレー会長の“過激”な提案を、より現実的にしたもの。“玉虫色の決着”ともいえる。
詳しい内容は以下の通り。

■予選は1発勝負

もっとも大きく変わるのは予選方式だ。
今シーズンまでの予選は、土曜日の午後に1時間行われ、規定周回数12周のうちのベストラップをもって決勝のスターティンググリッドが決まった。

2003年からは、金、土曜日に各1時間の予選セッションが設けられる。ドライバーに許されるタイムアタックは各日1周だけ。金曜日はチャンピオンシップの順位に応じて出走順が決められ、土曜日は前日もっとも遅かったドライバーからアタックに入る。グリッドは、土曜日のタイムで決まる。
見る側はドライバーひとりひとりのタイムアタックに集中できることや、アタック1発という不確実性がもたらす演出効果などを狙ったものと思われる。

なおフリープラクティスは、金曜日に1時間、土曜日に90分間設定される。

■テスト禁止

チームが、レースウィーク以外にサーキットでプライベートなテストを行うことについては、これまでいくつかの制限が加えられてきたが、2003年からは若干様相が変わる。
シーズン中のテストを10日以内に抑えるとFIAに約束したチームは、各レースの金曜日にプラス2時間の走行が許される。ただしこのルールは、3チーム以上集まらなければ適用されない。
コストのかかるテストに日数制限を課す分、レースウィークに走行時間を割り当て、資金面での負担を軽減するのが狙いだ。

■8位までが入賞

従来までのポイントシステムは、1位に10点、2位6点、3位4点、4位3点、5位2点、6位1点というものだったが、2003年からは8位フィニッシュのドライバーまで得点を与える。1位10点は変わらず、2位8点、3位6点、以下5、4、3、2、1点となる。

1位と2位の差を2点に縮めて、あるドライバーが圧倒的に強い場合の、その独走の“度合い”を和らげる。

■チームオーダーの禁止

レースの結果を左右するチームオーダーは禁止。ただし具体的な内容は明らかにされていない。2002年のフェラーリを対象としていることは明白。

■タイヤ

タイヤ会社(現在はブリヂストンとミシュラン)は、それぞれのチームに適した、コンパウンドの異なる2種類のドライタイヤを供給するというもの。従来、タイヤ会社は供給先チーム共通のドライタイヤを2種類用意していた。

2002年、フェラーリとブリヂストンの“蜜月”ぶりは度々取り沙汰され、批判の対象となった。このルールは、あるマシンに偏ったタイヤ開発に楔を打つことが狙いとされる。

■ベルギーGP、なくなる

最後は、F1エンスージアストにとって極めて残念なニュース。ベルギーGPがカレンダーから姿を消し、2003年は今シーズンより1レース少ない全16戦で争われることが判明した。

F1を古くから支えてきたタバコ会社の広告は、2006年から全面的に禁止される。ベルギー政府は、それに先立ち2003年からタバコ広告禁止に踏み切る。F1側はこれに反発、折衝を重ねてきたが解決策は見つからず、同国でGPを行わない決断を下した。

ベルギーGPの舞台、スパ・フランコルシャンは、現存するサーキットの中でもっともチャレンジングなコースとして名高い。アルデンヌの森の自然の地形を活かして造られた約7kmのコースには、名物の「オールージュ」をはじめ、高中低速様々なコーナーが散りばめられ、優れたドライバー/マシンとそうでないものの差を歴然とさせる。

モズレー会長は、ベルギー政府がF1に特例措置を講じれば、2004年以降の復活もありえると示唆する。

最高のサーキットがF1カレンダーに1年でも早くよみがえることを、ファンは切に願っている。

(文=webCG 有吉/写真=本田技研工業)

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