トヨタ、環境技術開発の取り組みを発表

2012.09.25 自動車ニュース
今回の環境技術説明会は、東京・台場にある「MEGA WEB」の「トヨタ ユニバーサルデザイン ショウケース」で行われた。
トヨタの環境技術開発の取り組みを発表

トヨタ、環境技術開発の取り組みを発表

トヨタ自動車は2012年9月24日、環境技術開発の最新の取り組みと2015年までの展開計画を公表した。

アトキンソン化、低フリクション化による熱効率の向上と直噴化により、環境性能と動力性能を高次元で両立したというハイブリッド用のAR系2.5リッター直4エンジン。次期「クラウンハイブリッド」にV6に代わって搭載されるそうだが、クラウンの上級グレードに4気筒エンジンが積まれるのは45年ぶりとなる。ある意味とても感慨深い。
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AR系2.5リッターをベースに2リッターに縮小しターボを装着した、トヨタ初となる過給ダウンサイジング直噴エンジン。こちらの市場投入予定は2014年以降で、搭載車は未定という。トヨタの乗用車用ターボエンジンは、2007年で販売終了した「カルディナGT-FOUR」に搭載された3S-GTE以来となろうか。
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ヨーロッパ市場向けの小型車用として2015年以降に市場投入予定という1.4リッター直4ディーゼルターボエンジン。基本設計は従来型と同じコンベンショナルなSOHC2バルブだが、小型高効率ターボやLPL EGRシステムなどの採用により、低燃費と走行性能、そしてNOx触媒なしに「EURO6」に対応する環境性能を実現した。
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トヨタは、燃費向上・エミッション低減に向けた「省エネルギー」、電気や水素をはじめとした代替エネルギーの利用促進による「燃料の多様化」、そして「エコカーは普及してこそ環境への貢献」の三つを基本スタンスに環境技術開発を進めている。

■2015年末までに21モデルの新型HVを投入

まず、エンジンの熱効率向上とドライブトレインの伝達効率向上がポイントという「省エネルギー」への取り組みについては、開発中のガソリン/ディーゼルエンジンおよび高効率トランスミッションが公開された。

最大熱効率40%を目指すというガソリンエンジンは2基あり、1基は低燃費と高出力の両立を狙ってアトキンソンサイクルと直噴D-4Sシステムを採用し、世界最高の最大熱効率38.5%を追求したというハイブリッド用のAR系2.5リッター直4エンジン。2013年初頭にデビュー予定の次期「クラウンハイブリッド」に搭載されるという。
もう1基は、トヨタ初となる過給ダウンサイジング直噴エンジン。AR系2.5リッターをベースに2リッターに縮小、小排気量化による燃費向上とターボの採用による出力向上の両立を狙ったもので、2014年以降に市場投入の予定だそうだ。

いっぽう最大熱効率45%を目指すディーゼルエンジンも2基公開された。1基は燃料噴射システムの高圧化、高効率の小型ターボチャージャーなどの採用により低燃費と走行性能を両立させ、さらに新開発の排ガスクリーン化技術によってNOx触媒なしに「EURO6」に対応するというND系1.4リッター直4。「ヴィッツ」「カローラ」などの小型乗用車用で、2015年以降に市場投入予定という。
残る1基は、すでにブラジル向け「ハイラックス」に搭載されている商用車用KD系3リッター直4。こちらは高圧で高い噴射精度を維持する世界初のシステム「i-ART」を導入し、低燃費と低エミッションを実現している。

トランスミッションは今年フルモデルチェンジしたカローラに採用された「Super CVT-i」と、本年8月から北米向け「レクサスRX350 Fスポーツ」に搭載されている、6段ATと同等のサイズおよび重量に収め、優れた燃費性能を誇るFF用8段ATが展示されていた。
こうしたエンジンおよびドライブトレインを組み合わせたパワートレインの改良で、2015年までに10〜20%の燃費向上を目指すという。

トヨタの環境技術といえば、世界に先駆けて開発・実用化したハイブリッドだが、「アクア」および欧州向け「ヤリスハイブリッド」の投入により、コンパクトカーから商用車まで全カテゴリーにハイブリッド車(HV)をラインナップした2012年、HVの年間世界販売台数は100万台を超える見込みとなった。もはやメインストリームのひとつになったHVについては、2015年末までの約3年間で、14車種の新型車と7車種の既存車のモデルチェンジを合わせ、全21モデルの新型HVを投入する予定だそうだ。

北米向け「レクサスRX350 Fスポーツ」に搭載されている、世界初というFF用8段AT。ワイドかつクロスな変速比で燃費および加速感を向上したいっぽう、低フリクション化により効率を高めたという。
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この9月からカリフォルニアなど一部の北米市場に導入される「RAV4 EV」。トヨタと提携しているアメリカのEVメーカー、テスラモーターズと共同開発されたもので、リチウムイオンバッテリーやモーターなどはテスラから供給を受ける。モーターの最高出力は115kW(156ps)で、最高速度約160km/h、航続距離は約214kmという。
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「iQ」をEV化した「eQ」。フロントに充電口(普通充電/急速充電)が備わるほか、前後バンパーやホイールキャップも専用となる。ツートンカラーも特別に用意されたもの(モノトーンも選択可能)。価格は360万円(税込み)。
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■「iQ」ベースの新型EV「eQ」公開

次に「燃料の多様化」への取り組みは、EV(電気自動車)、PHV(プラグインハイブリッド車)、FCV(燃料電池車)を中心に言及された。

なかでもEVは新型を2車種公開、特に「iQ」をベースにした「eQ」は試乗も行われ、今回の技術発表会のハイライト的存在だった。コンパクトなパッケージに容量を最小限に抑えた高出力の新型リチウムイオン電池を搭載し、12kWhの少容量電池ながら、一充電走行距離100km、最高速度125km/hを達成。104Wh/kmという世界最高の電費を実現したいっぽう、AC200Vで約3時間の短時間で充電可能と、なかなか魅力的なスペックが発表された。

しかし、今後の予定を聞いて肩透かしを食らった気分に。2012年12月以降にリリースされるが、官公庁や自治体、企業などに向けたリース販売のみで、一般ユーザーへの市販予定はないというのだ。
もう1車種は「RAV4 EV」で、この9月から米国市場に導入されるが、こちらも国内販売予定はなしとのことである。

トヨタがHVに次ぐ次世代エコカーの柱と見込んでいるPHV。2012年1月に市販開始した「プリウスPHV」は、ユーザーの平均燃費でプリウスの2倍近い低燃費が実証されているが、販売状況は計画を下回っているとのこと。対策として、外部電源供給システムの設定およびグレード追加により商品力を強化するという。

FCVについては自社開発のFCスタックの性能が大幅に向上、小型・軽量化も進化、さらに高効率の昇圧コンバーターも開発され、FCシステムの小型・高性能化とコストの低減が進んだとアナウンスされた。今後はセダンタイプのFCVを、日米欧の水素供給インフラが整備される見込みの地域で2015年頃から販売開始予定という。

また、将来の電動化技術についての開発状況も公表された。EVの本格普及には、エネルギー密度の高い次世代電池の開発が必須だが、リチウムイオン電池の電解液を固体電解質に置き換えた「全固体電池」において、電解質性能が世界最高レベルの新たな固体電解質を開発。研究段階ではあるが、出力密度が従来比で5倍に向上したという。さらにEVへの充電をコードなどの接続なしに行う「非接触充電」についても開発を進めており、2013年に愛知県豊田市で実証実験を実施予定とのことである。

冒頭に記した、環境技術開発の基本スタンスでも述べているように、トヨタは「エコカーは普及してこそ環境への貢献」と考えている。そのために車両のタイプ/サイズや走行距離による将来的なモビリティーのすみ分けを考慮しつつ、従来型エンジンの改良をはじめHV、PHV、EV、FCVとさまざまな環境技術開発を進めているが、その核となるのはHV技術。トヨタはHV技術こそPHV、EV、FCVの要素技術を含むコア技術と位置づけ、今後もこれを中心に環境技術開発に取り組んでいくという。

(文と写真=沼田亨)

ブラックとホワイトのインテリアトリムは専用。リチウムイオンバッテリーを床下に収めたため、フロアトンネルが「iQ」より高くなっている。
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メーターパネル、電費計などを備えたナビも「eQ」専用となる。
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MEGA WEB内の試乗コース「ライドワン」では「eQ」のミニ試乗会が実施された。わずか2周のドライブだったが、EV特有のトルクフルな走りで動力性能にまったく不満はなく、完成度は高く感じられた。
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