第14戦シンガポールGP「クリティカルなアジア・ラウンドへ」【F1 2012 続報】

2012.09.24 自動車ニュース

【F1 2012 続報】第14戦シンガポールGP「クリティカルなアジア・ラウンドへ」

2012年9月23日、シンガポールのマリーナ・ベイ市街地コースで行われたF1世界選手権第14戦シンガポールGP。これまで3連勝し波に乗っていたマクラーレンが、ルイス・ハミルトンの手によりポールポジションからレースをリードしたものの、メカニカルトラブルで戦列を去るというハプニングが……。代わってトップに立ったのは、5カ月も勝利から遠ざかっていたセバスチャン・ベッテル。ようやく今季2勝目を飾った現チャンピオンの登場で、タイトル争いはますます混迷の度合いを増すことに。

■覇権争いのポイントとなるシンガポール

2012年のF1はヨーロッパを離れ、ここシンガポールから5戦続くアジア・ラウンドに突入。そしてシーズンは、11月25日に行われる最終戦ブラジルGPまで、ほとんど間を開けず鎖のように連なる最後の7レースに足を踏み入れた。

これまでの13戦で7人のドライバーと5つのチームが勝利。6月の第7戦カナダGPまでは毎戦違うドライバーが表彰台の頂点に立つという史上まれにみる混戦模様だったものの、以降は“常連組”が上位を占め始めた。

中でもシーズン中盤にきてのマクラーレンの台頭は目覚ましく、ルイス・ハミルトン2勝、ジェンソン・バトン1勝で現在3連勝中と絶好調。ドライバーズチャンピオンシップでは、カナダ以降の6戦で2勝しているフェラーリのフェルナンド・アロンソが首位を守り続けるものの、ハミルトンが37点差の2位から、虎視眈々(たんたん)とトップの座を狙っている。

とはいえ、ランキング2位以下はわずか1点ずつの違いで、未勝利ながら表彰台6回のキミ・ライコネンが3位、バーレーンGP以来勝利がないセバスチャン・ベッテルが4位に控えている。5位マーク・ウェバーは若干離れアロンソの47点ビハインドだが、4位ベッテルとは8点しか差がない。

これまでたとえ勝てずともライバルの不運などでポイントリードを維持し続けているアロンソ。シンガポールGPを前に、シンガポール、日本、韓国の3戦は勝ってリードを広げたいと意気込んだ。これに続く最後の4戦(インド、アブダビ、そして初開催となるオースティンでのアメリカ、ブラジル)は、フェラーリ「F2012」のパフォーマンスに不安を抱えている中で、何としても最初の3戦で得られる最高得点=75点を可能な限り奪いタイトルにつなげたい、という考えである。

いっぽうで追う立場の陣営にしたら、この後半7戦の序盤で一気に抜け出し、いきおいそのままタイトルを手中に収めたい。マクラーレンのスポーティング・ダイレクター、サム・マイケルも、シンガポールでの1戦をタイトル獲得の“重要なポイント”と位置づけた。
第12戦ベルギーGP、そして前戦イタリアGPと、極めて特殊な超高速・低ドラッグコースから一転、2、3速を駆使するツイスティーでトラクション重視のハイダウンフォースサーキット、マリーナ・ベイでは、前者を苦手としてきたレッドブルも息を吹き返すかもしれない。連勝中のマクラーレンが、レッドブル、フェラーリを上回るペースで走れれば、流れは一気にマクラーレンに向くかもしれないのだ。

今年で5回目を迎え、向こう5年間の継続開催も決まったシンガポールGPは、F1初にして唯一の完全ナイトレース(アブダビGPはトワイライトレース)。人工の光が煌々(こうこう)と輝く全長5kmのコースには、市街地ならではの直角ターンを中心に23ものコーナーがちりばめられており、抜きづらいこと、そして熱帯気候の蒸し暑いコンディションの中、2時間近くの長く厳しいレースが繰り広げられることで知られている。

10月には屈指のドライバーズサーキットである鈴鹿を皮切りに、1.2kmの長いストレートを持つ韓国の霊岩(ヨンアム)、直線の前にトリッキーなターンを置く典型的な“ティルケ・サーキット”、インドのブッダ・インターナショナル・サーキットらが待ち構えている。
コース特性の違いをものともせず勝てるものこそ、真にタイトルにふさわしい力量を備えたものといえる。大詰めを迎える今シーズン。たしかにアジア・ラウンドは、クリティカルな戦いとなる。

■ハミルトン、2戦連続今季5回目のポールポジション

金曜、土曜の3回のフリー走行すべてでトップタイムをマークしたのがベッテルだった。今年まだ1勝しかしていない2年連続王者は、ベルギーのスパ・フランコルシャン、イタリアのモンツァと、苦手な超高速コースを脱したレッドブル「RB8」にむちを打ち、昨年ポール・トゥ・ウィンを飾ったマリーナ・ベイ市街地コースで久々の勝利を目指し、静かに闘志を燃やしていた。

しかし、いざトップ10グリッドを決める予選Q3に入ると、ポールポジションを奪ったのはハミルトンだった。後続を0.442秒も突き放し、2戦連続、過去4戦で3度目、そして今季5回目、自身通算24回目となる予選1位を獲得した。

フロントローのもう一角には、スペインGPウィナー、ウィリアムズのパストール・マルドナドが入った。このベネズエラ人ドライバーは、5月の初勝利以来得点がなく、しかもクラッシュなどドライビングミスでポイントを取りこぼしており、今回のレースで汚名返上といきたいところだ。

ベッテルは悔しい予選3位。どうやらタイムアタックで他車に邪魔をされたということらしいが、こちらもレースでの挽回をもくろんでいた。4位ジェンソン・バトンのマクラーレンを間に挟み、ポイントリーダーのアロンソは5番グリッド。ポールポジションタイムの0.854秒遅れという現実に、当初自信を持っていたアロンソもショックを隠せず、早急なマシン改善をチームに訴えた。

フォースインディアのポール・ディ・レスタ6位、レッドブルのマーク・ウェバー7位、ベルギーGPの多重クラッシュの責任を問われ1戦出場停止処分を受けたロータスのロメ・グロジャンは8位。Q3に進出したメルセデスの2台はタイヤ温存のためアタックせず、ミハエル・シューマッハー9位、ニコ・ロズベルグ10位からレースを組み立てることとなった。

■首位走行中に起きたギアボックストラブル

夜の帳(とばり)が下りた日曜日のシンガポール、24台のマシンがおよそ2時間後のゴールを目指しスタートを切った。
まずは曲がりくねったターン1〜3の間で、2番グリッドのマルドナドをベッテルがオーバーテイクすることに成功。マルドナドはバトンにも抜かれ、オープニングラップで1位ハミルトン、2位ベッテル、3位バトンというトップ3が出そろった。

大勢がソフトとスーパーソフトのうちやわらかいスーパーソフトタイヤを最初に履いた今回、ベッテルのレッドブルは早々にタイヤが厳しくなり、当初1.5秒前後の間隔でハミルトンを追っていたが11周目には4.5秒にまで広がる。ここでたまらずピットに飛び込んだレッドブルは、ソフトタイヤに履き替えマクラーレンの2台を追った。

ベッテルから2周後の13周目に1位ハミルトンが、そのまた2周後にバトンがタイヤ交換を済ませると、上位3台の順位は変わらず。トップのハミルトンがベッテルに対し1秒半から2秒のクッションをキープしての走行となった。

均衡が崩れたのは22周目。スタート・フィニッシュラインを通過したハミルトンのマシン「MP4-27」のリアから薄い白煙があがったかと思うと失速、その横をベッテルやバトンらが抜けていった。トップ走行中のマクラーレンを襲ったギアボックストラブルで、ハミルトンはリタイア。天国から一気に地獄に突き落とされた。

■劣勢フェラーリのアロンソが3位表彰台

“棚ぼた”で1位の座が転がり込んできたベッテルの前には、2度のセーフティーカーランが待ち構えていた。
まずは33周目、HRTのナレイン・カーティケヤンが起こした単独クラッシュによるもの。39周目に再スタートが切られたが、その周に、今度はシューマッハーが前を走るジャン=エリック・ベルニュに追突する事故が発生し、42周目まで徐行運転が続いた。

いずれの再スタートでも、ベッテルがバトンを抑えトップを守った。最初の再開直前には、前を行くベッテルのマシンが急ブレーキを踏んだことで危うくバトンが追突しそうになるシーンもあったが……。
トップ2台の間にあった1.5秒程度のギャップはついぞ縮まることなく、最終的には9秒にまで拡大。予定周回数の61周を待たずして2時間ルールが適用され、59周でチェッカードフラッグが振られた。

ベッテル、バトンに次いで3位に入ったのは、ポイントリーダーのアロンソ。予選5位からトップ争いに食い込むことはできなかったが、前を走るハミルトン、そしてマルドナドがリタイアしたことで表彰台の一角を射止めることができた。

■それぞれが抱える課題

ベッテルの5カ月ぶりの勝利=25点獲得と、アロンソのダメージ最小化となる3位=15点追加。194点でチャンピオンシップを引き続きリードするアロンソにとっては、165点でランキング2位にあがったベッテルに29点差まで詰め寄られるいっぽうで、レース前まで2位だったハミルトン(今回無得点で142点)、そしてライコネン(6位8点追加で149点)やウェバー(無得点で132点)は突き放すことに成功した。

これまで強運にも助けられてきたアロンソだが、残る6戦すべてを運頼みで乗り切ることは現実的ではない。「今年は予想困難なシーズンだけど、われわれはここでみたようにパフォーマンスを向上させる必要がある」とはレース後のアロンソの弁。「グリッド順位が5位と13位(フェリッペ・マッサ)というのは、われわれが望んでいたものではない。鈴鹿ではもっといいポジションにいないといけない」。

タイトル争いに“帰ってきた”ベッテルは、「この週末、レッドブルが最速だったわけではないが、勝てたのだからハッピーさ」と語り、マクラーレンに速さで負けていたことを認めた。もちろん、勝利目前でマシンが壊れるという失態を演じたマクラーレンは、抜群の速さを維持しながら信頼性の向上が望まれる。

それぞれがそれぞれの課題を残しながら迎える次なるレースは日本GP。クラシカルでチャレンジング、ミスを許さない屈指の難コース、鈴鹿サーキットが舞台となる。決勝日は10月7日だ。

(文=bg)

レッドブルのセバスチャン・ベッテル(写真左から3番目)が、4月の第4戦バーレーンGP以来となる今季2勝目を飾った。2位はマクラーレンのジェンソン・バトン(左端)、3位にはフェラーリのフェルナンド・アロンソ(右端)が入った。(Photo=Red Bull Racing)
レッドブルのセバスチャン・ベッテル(写真左から3番目)が、4月の第4戦バーレーンGP以来となる今季2勝目を飾った。2位はマクラーレンのジェンソン・バトン(左端)、3位にはフェラーリのフェルナンド・アロンソ(右端)が入った。(Photo=Red Bull Racing)
ポールポジションからレースをリードしたマクラーレンのルイス・ハミルトンがリタイアしたことでトップの座が転がり込んできたベッテル(写真前)。この勝利でランキング2位に上昇、ポイントリーダーのアロンソとの差を10点縮め29点差とした。ベッテルはシンガポール2連覇。これで自身通算23勝目をマークしたことになり、記録上では3度ワールドチャンピオンとなったネルソン・ピケに並んだ。(Photo=Red Bull Racing)
ポールポジションからレースをリードしたマクラーレンのルイス・ハミルトンがリタイアしたことでトップの座が転がり込んできたベッテル(写真前)。この勝利でランキング2位に上昇、ポイントリーダーのアロンソとの差を10点縮め29点差とした。ベッテルはシンガポール2連覇。これで自身通算23勝目をマークしたことになり、記録上では3度ワールドチャンピオンとなったネルソン・ピケに並んだ。(Photo=Red Bull Racing)
レース前の時点でアロンソの78点後方に位置していたバトン。今回2位に入ったもののポイントリーダーとのギャップは3点縮まったのみで、きっかり3勝分の75点もある。残り6戦でのキャッチアップは相当に厳しく、今回リタイア、無得点でトップから52点も離されたチームメイトのルイス・ハミルトンをアシストするというアイデアは、徐々に現実味を帯びてきたといえる。(Photo=McLaren)
レース前の時点でアロンソの78点後方に位置していたバトン。今回2位に入ったもののポイントリーダーとのギャップは3点縮まったのみで、きっかり3勝分の75点もある。残り6戦でのキャッチアップは相当に厳しく、今回リタイア、無得点でトップから52点も離されたチームメイトのルイス・ハミルトンをアシストするというアイデアは、徐々に現実味を帯びてきたといえる。(Photo=McLaren)
予選、決勝を通じ、マクラーレンやレッドブルから遅れをとったフェラーリ。それでもアロンソ(写真前)は、予選5位からハミルトン、パストール・マルドナドのリタイアで3位表彰台まで挽回してみせた。ポイントリードは37点から29点に縮小。今季これまで何度も口にしてきた、マシンの改良をチームに求めた。(Photo=Ferrari)
予選、決勝を通じ、マクラーレンやレッドブルから遅れをとったフェラーリ。それでもアロンソ(写真前)は、予選5位からハミルトン、パストール・マルドナドのリタイアで3位表彰台まで挽回してみせた。ポイントリードは37点から29点に縮小。今季これまで何度も口にしてきた、マシンの改良をチームに求めた。(Photo=Ferrari)
フォースインディアを駆るデビュー2年目の“フライング・スコット”、ポール・ディ・レスタが、予選6位から上位グループを常に視野に入れながら走行、見事自身最高位となる4位でゴールした。フォースインディアは現在75点を獲得しランキング7位。26点前方に6位ザウバーがいる。(Photo=Force India)
フォースインディアを駆るデビュー2年目の“フライング・スコット”、ポール・ディ・レスタが、予選6位から上位グループを常に視野に入れながら走行、見事自身最高位となる4位でゴールした。フォースインディアは現在75点を獲得しランキング7位。26点前方に6位ザウバーがいる。(Photo=Force India)
予選で速くないロータスは、今回決勝でも苦戦。キミ・ライコネン(写真右)は12番グリッドから、1戦出場停止明けのロメ・グロジャン(同左)は8番グリッドからスタート。途中前を行くグロジャンにチームオーダーが伝えられライコネンが先行、結局6、7位でフィニッシュした。ライコネンはハミルトンのリタイアにも助けられランキングでは3位のままだが、首位アロンソとの差は38点から45点に広がった。(Photo=Lotus)
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ザウバーの小林可夢偉(写真前)はシンガポールで苦しんだ。予選ではQ1敗退となる18位。ブルーノ・セナのペナルティーで17番グリッドからスタートし13位完走。次戦日本GPでの挽回が期待されている。(Photo=Sauber)
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