日産、「1.2GPa級超ハイテン材」で車体を軽量化

2013.03.12 自動車ニュース

日産、「1.2GPa級超ハイテン材」で車体を軽量化

日産自動車は2013年3月12日、1.2GPa(ギガパスカル)級の高成形性超ハイテン材を、世界で初めて量産車に採用すると発表した。

■大幅な車体軽量化を実現

「1.2GPa級の高成形性超ハイテン材」とは、特別に強度が高く、しかも加工性に優れるスチール材のこと。この素材が初採用されるのは、2013年に北米で発売される「インフィニティQ50」。次期型「スカイライン」と目されているモデルなので、遠からず日本でも発売されることになる。

これまでも一部ドイツ車には、1.2GPaを越す強度の超ハイテン材が用いられていた。ただし、その成型にはいずれもホットスタンプ(熱間成型。高熱をかけてから急冷させる特殊なプレス加工)が不可欠だったため、専用の設備が必要となり、コスト面で不利とされてきた。また、熱間成型で加工すると素材の粘り強さを示す「じん性」が低下する傾向があり、自動車の素材としては使用目的が限られるとの指摘もあった。

今回日産は、加工性に優れた高強度鋼板を新日鉄住金、神戸製鋼所と共同で開発、冷間成型で加工できる1.2GPa級の超ハイテン材を量産車に応用できることになった。従来、日産が用いるもっとも強度の高い超ハイテン材は980MPa(メガパスカル:1GPa=1000MPa)だった。
高強度のハイテン材を用いると、ボディー剛性を下げることなくパネルの板厚を薄くすることが可能になり、軽量化を実現できる。ただし、高強度のスチール材は一般に加工性が低く、冷間成型が難しかった。今回、日産は鋼板メーカーとともに素材の結晶構成に工夫を凝らすことで、高強度でありながら高延性(素材の伸びやすさを示す)の超ハイテン材の実用化にこぎ着けた。

この超ハイテン材は通常のプレス機で加工できるが、強度の高い素材はプレス成型後にスプリングバックと呼ばれる材料の“戻り”が発生する。日産はプレス型の形状や素材を工夫して、このスプリングバックの問題を解消した。
また、強度の高い超ハイテン材は一般に炭素の含有量が多いが、こうした素材にスポット溶接を行うと接合強度が低下する傾向があった。この問題を日産は溶接時の加圧力と電流値の最適設定によりクリアしたという。

間もなく登場するインフィニティQ50では、この超ハイテン材をボディー全体のおよそ9%に使用し、11kgの軽量化を達成。ただし、2017年以降は材料を改良するなどして使用率を25%程度まで高め、さらに車両構造の合理化をも行うことで、15%の車体軽量化を実現する計画だ。

(文と写真=大谷達也/Little Wing)

発表会場に展示された、材質の違いを示すカットモデル。
日産、「1.2GPa級超ハイテン材」で車体を軽量化
2013年のジュネーブショーで公開された「インフィニティQ50」。日産車として、1.2GPa級の高成形性超ハイテン材が初めて採用される。(写真=日産自動車)
日産、「1.2GPa級超ハイテン材」で車体を軽量化
カットモデルで赤く示される部分が、今回話題となっている1.2GPa級の高成形性超ハイテン材。以下強度の順に、オレンジの部分が780〜980MPa、青い部分は440〜590MPa、地色(無色)の部分は200〜300MPa程度の「軟鋼」を示す。
日産、「1.2GPa級超ハイテン材」で車体を軽量化
日産、「1.2GPa級超ハイテン材」で車体を軽量化
日産、「1.2GPa級超ハイテン材」で車体を軽量化

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