新型「トヨタ・クラウン」、大胆な顔で登場

2012.12.25 自動車ニュース
新型「トヨタ・クラウン」。写真は「ロイヤル」シリーズのハイブリッド車。
14代目の「トヨタ・クラウン」がデビュー

新型「トヨタ・クラウン」、大胆な顔で登場

トヨタ自動車は2012年12月25日、高級セダン「クラウン」シリーズの新型を発売した。

「トヨタ・クラウン」の象徴たる、王冠型エンブレム。
「トヨタ・クラウン」の象徴たる、王冠型エンブレム。
1955年に誕生した初代「トヨペット・クラウン」(RS型)。観音開きドアを持つボディーは全長4285mm、全幅1680mm、全高1525mmと高さを除けば現行「カローラ・アクシオ」よりもコンパクト。エンジンは直4OHV1453cc、最高出力は48psだった。価格は101万4860円。
1955年に誕生した初代「トヨペット・クラウン」(RS型)。観音開きドアを持つボディーは全長4285mm、全幅1680mm、全高1525mmと高さを除けば現行「カローラ・アクシオ」よりもコンパクト。エンジンは直4OHV1453cc、最高出力は48psだった。価格は101万4860円。
新型「クラウンアスリート」(ハイブリッド車)のリアビュー。
新型「クラウンアスリート」(ハイブリッド車)のリアビュー。

■「革新」続けて14代

初代「クラウン」の誕生は1955年1月1日。以来半世紀以上にわたってトヨタの看板車種として君臨してきた国産最長寿ブランドであり、日本を代表する高級車であるが、満58歳のバースデイを迎える直前にデビューした新型は、実に14代目となる。

新型クラウンの開発に際してチーフエンジニアが込めた思いは、「“いつかはクラウン”という憧れを、“私のクラウン”という感動へ」。クラウンのあるべき姿を徹底的に追求しながら、デザインやパワートレインはもとより、クラウンという存在そのものの革新をも目指した新型がもたらす感動を、幅広いユーザーに届けたいという。

12代目の通称「ZEROクラウン」がデビューした際も似たようなセリフを聞いた覚えがあるが、伝統を誇る高級車であるクラウンにとって、ここしばらく最大の問題となっているのがユーザーの高齢化。かつてZEROクラウンはそれを阻止すべく若返りを図ったが、それから9年が経過して、再び革新の必要に迫られたということなのだろう。

成り立ちといい、ユーザー層といい、保守の王道のようなクラウンに「革新」という言葉は似合わないと思われるかもしれない。だが、トヨタに言わせれば「クラウンの歴史は、挑戦と革新の歴史」。たしかに、さかのぼれば他社が戦中・戦後の技術的空白を取り戻すべく外国メーカーと技術提携を結ぶなか、純国産にこだわったトヨタが独力で初代クラウンを開発したのは、その後の日本の自動車産業の方向性を左右するほどの挑戦だったのだ。

また、クラウンが先陣を切って採用した技術も少なくない。例を挙げれば、前輪独立懸架や自動変速機(初代)、V8エンジン(2代目)、スーパーチャージドエンジン(7代目)などは、いずれも量産車としては日本初採用だった。技術面のみならず、個人オーナー市場を広げた3代目の「白いクラウン」のセールスキャンペーンや、全車ビルトイン式のカラードバンパーを採用した、通称「クジラ」こと4代目の斬新なスタイリングなども、革新的だったといえるだろう。

フロントまわりのデザインは、「ロイヤル」と「アスリート」(写真手前)とで異なる。上方のスクリーンに見えるのは、過去13台の歴代「クラウン」。
フロントまわりのデザインは、「ロイヤル」と「アスリート」(写真手前)とで異なる。上方のスクリーンに見えるのは、過去13台の歴代「クラウン」。
こちらは「ロイヤル」の“顔”。クロムで凸型に縁取られるグリルは、エンブレムと同じく王冠がモチーフとなっている。
こちらは「ロイヤル」の“顔”。クロムで凸型に縁取られるグリルは、エンブレムと同じく王冠がモチーフとなっている。
インテリアの様子。写真は「ロイヤル」(ガソリン車)のもの。
インテリアの様子。写真は「ロイヤル」(ガソリン車)のもの。

■新たな顔は“押し”強し

今回登場した新型クラウンには、「ロイヤル」と「アスリート」の2シリーズがある。先代は「ロイヤルサルーン」「アスリート」「ハイブリッド」の3シリーズだったが、新型は「ロイヤル」「アスリート」双方に“ハイブリッド仕様”が設定されたため、シリーズとしての「ハイブリッド」は消滅した。

新型クラウンの革新への意気込みを端的に表現したスタイリングは、「ロイヤル」「アスリート」ともに王冠(クラウン)がモチーフのグリルが最大の特徴。トヨタによれば、「クラウンらしい品格や威厳を備えながら、躍動感にあふれたダイナミズムを感じさせる、新たな時代をけん引するにふさわしい新しい顔」とのことだが、写真のとおり、中国市場向けかと思われるほど押し出しが強い。

とりわけ「ロイヤル」との大規模な差別化が図られた「アスリート」は、なんとも大胆でアグレッシブな表情を見せる。トヨタ自ら「すごみを利かせた」とうたっているが、東京オートサロンに出展するようなドレスアップメーカーも、ノーマルでここまでやられたらマスクには手の入れようがないのでは、と思えるほどである。

いっぽうインテリアは、伝統と革新の融合を表現したという。日本の美意識を織り込んだ造形や手工芸的な趣を感じさせる質感表現と、先進のオペレーションシステムが同居したインテリアは、高級感や上質感はあれども、エクステリアのような威圧感はない。なお、「ロイヤル」「アスリート」ともシートを除き基本となるデザインは共通だが、インテリアを彩る木目パネルが「ロイヤル」は茶木目(金糸柄入り)、「アスリート」は黒木目(幾何学柄入り)となる。

サイドビュー。“視覚的な重心”を後方へと移しつつ、躍動感を表現したという。
サイドビュー。“視覚的な重心”を後方へと移しつつ、躍動感を表現したという。
車体左側から見た後席。先代モデルに比べ、ニースペースは20mm拡大された。
車体左側から見た後席。先代モデルに比べ、ニースペースは20mm拡大された。

■より軽く、より広く

プラットフォームは基本的に先代からのキャリーオーバーだが、ボディーは高張力鋼板を骨格全板金質量の約43%に使用し、スポット溶接の打点を増やしたことなどによって、剛性を飛躍的に高めつつ軽量化に成功。乗り心地および車両応答性の向上に貢献している。
フロントがダブルウィッシュボーン、リアがマルチリンクというサスペンション形式も先代と同じだが、一部のアーム、ロッド類を新設計し、剛性を綿密にチューニング。高い操縦安定性と快適な乗り心地の高次元での両立を追求した。

ボディーサイズは、全長4895mm、全高1800mm、全高1460(アスリート1450)mm。それぞれ4870mm、1795mm、1470mmだった先代と比べると若干長く、広く、低くなったが、トヨタによれば全高を10mm(アスリートは20mm)低めたことで躍動的なフォルムが実現したという。ホイールベースは先代と同じ2850mmである。車重は2.5リッターV6搭載の「ロイヤルサルーンG」同士の比較で、先代の1630kgに対して新型は1590kgと軽量化が図られている。

全高を低めたにもかかわらず、前席バックレストの形状変更によって後席膝まわりのスペースを広げ、前席のヒップポイントを下げるなどして、先代よりもさらにゆとりのある居住空間を確保。またラゲッジスペースも広げられ、特にハイブリッドのトランクルーム容量は450リッターと先代に比べ86リッターも拡大された。

ハイブリッドユニットは、ベースとなるエンジンをダウンサイジング。最高23.2km/リッター(JC08モード)の燃費を実現した。モーターの動力源は、ニッケル水素バッテリー。
ハイブリッドユニットは、ベースとなるエンジンをダウンサイジング。最高23.2km/リッター(JC08モード)の燃費を実現した。モーターの動力源は、ニッケル水素バッテリー。
ハイブリッド車の計器盤。パワーメーターとスピードメーターの間には、インフォメーションディスプレイが備わる。
ハイブリッド車の計器盤。パワーメーターとスピードメーターの間には、インフォメーションディスプレイが備わる。
トランクルームの容量は、ガソリン車(写真)で552リッター、ハイブリッド車で450リッターが確保される。
トランクルームの容量は、ガソリン車(写真)で552リッター、ハイブリッド車で450リッターが確保される。

■燃費は最高23.2km/リッター

スタイリングと並ぶ、新型クラウンの革新のポイントがパワートレインである。
主役は、新世代の高級車のパワーユニットとして開発された、2.5リッター直4エンジンとモーター、電気式無段変速機で構成されたFRセダン専用のハイブリッドシステム。直4DOHC2.5リッターの2AR-FSE型エンジンは、アトキンソンサイクル、Dual VVT-i(可変バルブタイミング・リフト機構)と冷却効果を高めたクールドEGR(排出ガス再循環)システムに加え、筒内噴射には次世代D-4Sシステムを採用。最高出力178ps/6000rpm、最大トルク22.5kgm/4200-4800rpmを発生するこのエンジンと高トルクモーター(143ps、30.6kgm)を組み合わせたハイブリッドシステムの最高出力は220psで、従来の3リッターV6エンジン搭載車を上回る加速性能を確保したという。

それでいながら、JC08モードでの燃費はリッターあたり23.2kmという優れた環境性能も実現した。同じハイブリッドとはいえ、3.5リッターV6を搭載してシステム最高出力345psを誇るいっぽう、JC08モード燃費はリッターあたり14.0kmだった先代モデルとは、コンセプトから異なると言えるだろう。また、新型ハイブリッドはD-4Sシステム搭載車としては初めてレギュラーガソリン仕様となったことも、経済性向上という点では見逃せない。

気になるのは直4エンジンの採用による騒音や振動だが、ハイブリッドならではの静粛性に加え騒音・振動対策の追求によって、従来のV6エンジンを上回る静粛性を確保したとのこと。ちなみに営業車向けを除くクラウンの上級グレードに直4エンジンがラインナップされるのは、2代目以来45年ぶりである。先日伝えられた、ジャガーの最上級サルーンである「XJ」に2リッター直4ターボエンジン搭載というニュースにも驚いたが、パワーユニットのダウンサイジング化によって高級車=多気筒エンジンという図式も崩れつつあるようだ。

なおハイブリッド以外のパワートレインは、3.5リッターV6(315ps/6400rpm、38.4kgm/4800rpm)+新採用の8段AT、および2.5リッターV6(203ps/6400rpm、24.8kgm/4800rpm)+6段ATの2種類だが、前者は「アスリート」専用となる。また2.5リッターV6搭載車には4WDも用意される。

「クラウン」に搭載される安全装備のひとつ、「パノラミックビューモニター」。周囲の様子を画面で確認することができる。
「クラウン」に搭載される安全装備のひとつ、「パノラミックビューモニター」。周囲の様子を画面で確認することができる。
発表会では、テレビCMに使われるピンク色の「クラウンアスリート」も披露された。トヨタの豊田章男社長(写真中央)によれば、この“ピンククラウン”は実際に市販されるとのこと。
発表会では、テレビCMに使われるピンク色の「クラウンアスリート」も披露された。トヨタの豊田章男社長(写真中央)によれば、この“ピンククラウン”は実際に市販されるとのこと。
新型「トヨタ・クラウン」、大胆な顔で登場の画像

■安全技術もてんこ盛り

筆者の知る限り、日本車で初めて安全対策を大々的に打ち出したのは、1967年に当時のアメリカの安全基準をほぼ満たしてデビューした3代目クラウンだった。その伝統を新型クラウンも受け継いでおり、先進の安全技術が備わっている。

去る11月に「間もなく登場する新型セダンに導入予定」と発表された、最大60km/hの減速をアシストする、ミリ波レーダー方式の「プリクラッシュセーフティシステム」、アクセルとブレーキの踏み間違い事故などを防ぐ「インテリジェントクリアランスソナー」、そしてアクセルを踏み込んだまま通常とは異なるシフト操作をした場合に働く「ドライブスタートコントロール」の3つをはじめ、パノラミックビューモニター、アダプティブハイビームシステム、ポップアップフード(ハイブリッドのみ)などが用意されている。

誰もが認める日本を代表する高級車でありながら、自らの存在そのものの革新を目指したという新型クラウン。価格は、「ロイヤル」シリーズが「ロイヤル」(ガソリン車)の353万円から「ロイヤルサルーンG」(ハイブリッド車)の536万円までで、「アスリート」シリーズが「アスリート」(ガソリン車)の357万円から「アスリートG」(ハイブリッド車)の543万円までとなっている。

(文=沼田 亨)


新型「トヨタ・クラウン」の詳しい画像はこちら
→新型「トヨタ・クラウン」を写真で紹介(前編)
→新型「トヨタ・クラウン」を写真で紹介(後編)

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