「BMW M5」特急インプレッション

1999.06.21 自動車ニュース
990621_042.gif

「BMW M5」特急インプレッション(6/21)

400馬力V8エンジンを搭載したBMWのスポーツサルーン、「M5」に試乗した。本年度はわずか50台が輸入されるだけの希少車だ。

新型「BMW M5」は同社のアッパーミドルクラス4ドアサルーン、5シリーズをベースに開発されたスポーティモデルだ。400馬力の5リッターV8DOHCエンジンに6段MT、さらにトラクションコントロールおよびリミテッドスリップデフが組み合わせられている。専用セッティングのスポーツサスペンションや前後フローティングマウントの大径ディスクブレーキなどBMW M社の徹底的なチューンが施されているのも特徴だ。

外観上の特徴は、丸型フォグランプがビルトインされたフロントエアダムと、前245/40ZR18、後275/35ZR18というサイズのタイヤと組み合わされたサテンクローム仕上げの軽合金ホイール、4本のテールパイプ、クロームメッキされたキドニーグリル、専用デザインのドアミラー、そしてエンブレムとなる。

今年は50台のみの販売で、しかも1350万円という高価格。もっともお宝度の高いBMWのサルーンです。見た目はいたってフツウなんですけどね。とにかく速いですねえ。

特筆すべき点その1は乗りやすいことです。ハイチューンのエンジンは、実用回転域が犠牲になって、乗りにくいことが多いのですが、「M5」はフツウの5シリーズとまったく変わらない乗りやすさを備えています。しかしいったん走りだすと、速度計の針が回転計かと思えるような速さで回っていくんです。

流れる時間がぜんぜん違うというぐらいの加速感ですよね。そのいっぽうでじつにスムーズ、というのが「M5」の「怖さ」です。そのぶんブレーキ性能も優秀で、ものすごい制動力です。フィールもほかのセダンでは味わえないよさがあります。

ブレーキは特筆すべき点その2ですね。その3は「ダイナミックコントロールサスペンション」です。スポーツモードを選択すると、サスペンションがハードになったような感じが出ることに加え、車高(=重心)が下がり、さらにステアリングフィールにダイレクト感が増します。エンジン特性が変わったことを知らせるため、回転計のレッドゾーンが切り替わるのも、ギミックだけど、いいんですねえ。加速中にフロントが浮き上がらず、高速からのブレーキング時に不安定になることもありません。これは電子制御によるものですが、サスペンション取り付け部の剛性など、ハードウェアの品質が高くないと実現できないことです。

スポーツモードにしないと、ちょっとフワフワしているかんじが気になりますね。

ありあまるパワーがオーバーステアを誘発するのを防ぐためリアタイヤの幅を広くしてアンダーステアぎみのセッティングとなっています。しかし車重も重いので、コーナーへの進入速度は充分に気をつけないと、オーバーぎみになってコワイことになりそうです。げんにテスト車はフロントタイヤのショルダーがけっこう削れていました。かつてこのクルマでコワい思いをしたひとがいるということでしょう。

最良のスポーティセダンの1台であるということは認めます。AMG製品よりよく出来ているかもしれません。しかし、1350万円ですよ。すこし足せばS320が2台買える値段です。そう考えると、はたしてそれだけの価値があるのかな、と。

これこそホンモノのスポーティセダンです。いちど乗ってみると、たいていの「スポーティセダン」はホンモノじゃないと思えます。しかしそう思える瞬間がどれだけあるか、というと、日本ではあいにくほとんどないでしょうねえ。

松本英雄

小川フミオ

この記事の大きな画像を見るためには、画像ギャラリーをご覧ください。