GT選手権第4戦リポート─混迷深める今後のゆくえ

2000.08.09 自動車ニュース
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GT選手権第4戦リポート─混迷深める今後のゆくえ(8/9)

8月5、6日、全日本GT選手権第4戦、ジャパン・スペシャルGTカップが、富士スピードウェイで開催された。

優勝を飾ったのは、鈴木亜久里/土屋圭市組のARTA・NSX。中盤のドライバー交代後に首位にたつと、一度もその座を譲らずに、炎天下の厳しいレースを制した。2位には終始僅差で追い続けたラルフ・ファーマン/影山正彦組のデンソー・サード・スープラ、3位は怒涛の追い上げを見せた星野一義/本山哲組のカルソニック・スカイラインが入った。GT300クラスの優勝は、チームタイサンJr.のイクリプスRDタイサンGT3Rだった。

8月に入って最初の週末にサーキットに集まった観客は約6万人。猛暑の中、人気のピットウォークはまるで満員電車状態、レース中、観客席は熱気で賑わっていた。もちろん、この暑さの影響を一番受けるのは、エントラント。マシーンの冷却対策はもちろん、ドライバーの体を冷やすクールスーツや、ドリンク類は欠かせない。なにしろレースのスタート前で気温は34度、路面は52度にも達していたから、車内の暑さは想像を絶する。

■ドリームチームのがんばり
優勝したARTA・NSXは今回から2000年モデルの新車が投入されていた。チームを率いる立場の鈴木亜久里は、「2000年モデルだから言い分けはできないと思っていた」とプレッシャーが大きかったことを語り、土屋圭市も「鈴木亜久里という大きなドライバーと組んだので勝てた。いいドライバーといいクルマと揃って勝てなかったらプロとして失格だと思っていた」という。 このチームは“元F1パイロット”と“ドリキン”というスターがコンビを組む、GT選手権きってのドリームチーム。なのに今まで昨年型NSXで苦戦、“人気”が先行していただけに、最新型を得てのこの1戦は、どうしても勝たなければならなかったのだ。後半をドライブした土屋は、すぐ後ろにデンソー・サード・スープラがせまっており、残り数周、亜久里は無線でずっと声援を送り続けたという。「ハッキネンがロンデニスから無線を受けるのはこんな感じかと思った。笑い話ではなくすごく勇気づけられましたよ」ゴール後の土屋はこう語った。

■やはり速いNSX
今回、NSXは、5台すべてが2000年型になった。ドライバーをして「勝てなかったら失格」と言わしめるほど2000年モデルは速く、第2戦のTAKATA童夢、第3戦でのMobil1NSXに続いの3連勝である。開幕戦から圧倒的な速さを見せているTAKATA童夢は、さすがに90kgのウェイトが足かせとなったが、それでも予選15位から一時は6位まで浮上。ウェイトを積んでいなければ、今回のARTAのようにシェイクダウン間もない車でも勝ってしまうのだから、他チームには脅威にちがいない。開幕当初アキレス腱だったギアボックスも克服されたようだ。

■今回速かったスープラ
今回、優勝は逃したものの、最も速かったのは実はスープラ勢だった。今まで勝ち星がないばかりか、すっかりNSX、GT-Rに差をつけられた感のあるスープラだが、第3戦以降のインターバルの間にかなりの改良が施されてきたようだ。TRDの新居氏によると「ドイツのDTMのように封印されてシーズン途中のエンジン開発ができないレースもありますが、JGTCはシーズン中にもどんどん進歩させられます。今回も大きく変わりました」という。ドライバーも体感できるくらいパワーが上がったという。富士はスープラが得意としていることもあり、予選は上位4台をスープラが占めるという事態に。予選2回ともトップタイムだったF/Kマッシモ・セルモ・スープラはスープラ勢で唯一足まわりを変えるなどしており、エンジントラブルでリタイヤするまで一段抜けた速さを見せていた。また決勝2位のデンソー・サード・スープラは、リストリクター拡大の救済処置を受けていたということもあり、好条件が重なった。今回のスープラ勢のパフォーマンスは、今後に期待を持たせた。

■GT-Rの底力
選手権がNSXの独走になるかというなかで、スープラのほかにGT-Rも負けていない。今回、予選は全く低迷したものの、決勝ではじわじわと上位に上がってきたからだ。GT-Rはピット作業の早さにが定評があり、今回もピットストップで、ロックタイト・ゼクセル・スカイラインが6位から3位に上がる芸当を見せた。またカルソニック・スカイラインも次々先行車をパスして、最終的には3位でフィニッシュした。後半を走った本山哲は「クルマは今までと基本的には変わっていない。細かい積み重ねが結果になった。クルマの調子がよかったし、勝ちたいという気持ちが強かった。どのチームも長所短所があるんだから、短所を補って後半戦をがんばっていきたい」という。後半戦のコースはGT-Rに向いたコースも多い。決勝に強いGT-Rは、シリーズ全体で見れば侮れない存在に間違いない。

GT300クラスは、2.2リッターエンジンを搭載し、2台体制となったMR-Sが速さを見せ始めたのが、今後の注目といえそう。今回予選1位のダイシン・シルビアは決勝2位となり、優勝はタイサン・チームのGT3Rの2号車というべきイクリプスRDタイサンGT3R。重量ハンディがなく、救済処置をもらったチャンスを生かしての優勝だった。選手権ポイントでは、チーム・タイサンJr.が選手権ポイントでは62点で2位以下を大きく離して独走状態となってきている。

■情熱による参戦
今回、新たにプライベーターのカローラAE101がデビューした。参戦する鈴木氏はチャンピオンレースで昨年NA1600クラスのシリーズチャンピオンを獲得。かつて富士で盛りあがったGCの前座、マイナーツーリングなどに、B110サニーで参戦していたというベテランドライバーで、昔のGCとマイナーツーリングの関係のように、プライベーターでもGTに出られるということを、他のチャンピオンレースの参加者に知ってもらいたくGTに参戦したという。今回マシーンはシェイクダウンしたばかりで、なんとか走ったものの、予選でシーケンシャルをHパターンのようにシフトしてしまって壊し、決勝出走は断念。またGTには出たいが、資金的な問題でスポンサーを探している状態という。ワークスのマシーンといっしょにこういうクルマも走れるのがGT選手権の魅力のひとつ。GTは走る側にとっても“夢”のレースなのだ。

JGTCのポイントはメーカーポイントは集計されず、ドライバーとチームのみとなるので、チームによってポイントが分散したりして、優勝チームのマシーンが最強とは一概にはいえない。しかしどのクルマが勝つかは、ファンの注目するところだ。GT500では現在、Mobil1NSXの伊藤大輔/ドミニク・シュワガ−が2点を追加して38点でトップを守る。開幕戦優勝以来順位を下げていたロックタイト・ゼクセルGT-RのE.コマス/影山正美が2ポイント差で2位につけてきた。ロックタイトの属するチーム、ニスモは45点でチームポイントで2位となり、トップの無限×童夢プロジェクトに迫ってきている。

リポート=武田 隆
写真=須藤章一

【ドライバー部門】
1. 伊藤大輔/D.シュワガー 38点
2. E.コマス/影山正美 36点
3. 中子 修 /道上 龍 34点
4. 脇阪寿一/ 金石勝智 30点
5. 星野一義 /本山 哲 28点

【チーム部門】
1. 無限×童夢 プロジェクト 51点
2. NISMO 45点
3. Mobil 1 NAKAJIMA RACING 38点
4. TEAM IMPUL 28点
5. オートバックスレーシングチームアグリ 24点

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