「真夏の祭典」鈴鹿1000kmに「魔物」を見た

2000.09.04 自動車ニュース
000904_005.gif

「真夏の祭典」鈴鹿1000kmに「魔物」を見た(9/4)

夏休み最後の日曜日、天気は快晴、気温はぐんぐん上がりスタート時には30度を超え、路面温度は50度を超えるなか、ポールポジションからスタートしたTAKATA無限×童夢NSX(脇阪寿/金石/伊藤)がスタートからトップを独走、トップを一度も明け渡すことなく優勝をかざった。

ライバルが1000kmという長丁場、はたまた真夏の酷暑に絶え切れず続々とトラブルに見まわれる中、TAKATA無限×童夢NSXはまったくトラブルフリーで快走を続け、昨年のタイムを上回る6時間14分47秒171での完璧な勝利である。2位にはNICOSマクラーレン(岡田/長谷見/田中)、3位には、国内でしか走っていないというイタリアの猛牛ノマド・ディアブロGT1(古谷/高橋/和田)が入った。

TAKATA無限×童夢NSXは、予選の時点から速さが際立っていた。GT選手権とは違いハンディウェイトがない状態のNSXに脇阪がムチを入れた。1回目の予選では、下位クラスの遅いマシンに接触しながらも、2分1秒722のコースレコードで暫定ポール。2回目には、2分1秒348とさらにタイムを縮めてポールポジションを獲得した。
脇阪寿一選手は「2分00秒台を狙っていたけど、トラフィックに引っかかってしまったんだ」と自信に満ちたコメント。

■序盤のスターは海外勢
決勝は隊列を整えるためのローリングラップのあと13時5分にスタート。ポールから飛び出したTAKATA無限×童夢NSXが1コーナーを制し、予選2番手のiDC大塚家具サードスープラが続く。7番手からスタートしたダッジ・バイパーは4番手にポジションアップした。
スタート直後の数周、インターナショナルクラスのマシーンがオーバーテイクを連発するパフォーマンスを繰り広げた。直線の速さを生かして、バックストレートやメインストレートで前を行く国内GT500勢をいとも簡単に抜き去ったのだ。ド迫力のオーバーテイクシーンで観客は大喜び。ダウンフォースを削って直線スピードに賭けているためか、コーナーでは遅い。2コーナーからヘアピンにかけては差を詰められるが、爆発的な加速力でその後のリードを保つ。しかし、日本の暑さは計算外だったのか、トラブルが早い段階で出始めて徐々に順位を下げてしまった。

最初の給油とドライバーチェンジのピット作業を各チームが終え、各車のペースが整い出した頃には、TAKATA無限×童夢NSX、iDC大塚家具サードスープラ、NICOSマクラーレン、カストロール無限×童夢NSX、NISMOスカイラインGT-R、FK/マッシモセルモ・スープラの順で走行。国内GT500クラスが上位を独占していた。

パドックでFK/マッシモセルモの近藤真彦選手が「暑いでしょぉ」と声をかけてくれた。続けて「でもね、運転する方はもっと暑いよぉ」とにこやかだ。
「調子はどうですか」
「まあまあかな」
「ひとつ、どーんといいところ見せてください」
「はははっ、出来ればいいですよね、でも最後には笑って終わりたいなあ」
「じゃ、表彰台に上がって笑ってください」
「分かりました」
その後、ドライバーチェンジした近藤選手は、約束通りハッスルしてくれたのか、NISMOスカイラインGT-Rを追い詰めてオーバーテイクした。

■鈴鹿の魔物
しかし、トップを行くTAKATA無限×童夢NSXは平穏そのもの。淡々と周回数をこなし、他を引き離していく。ライバルたちはなす術もない。
順調にラップを重ねるトップグループに対して真夏の鈴鹿に潜む魔物が牙をむき始めたのはそんな頃だ。NISMOスカイラインGT-Rのラジエターにクラックが入り、冷却水が漏れだした。応急処置は施したが、回復せずリタイア。iDC大塚家具サードスープラは、ラルフ・ファーマンにドライバーチェンジを終えた直後からトラブルが発生、ピットに戻っては修復作業を繰り返すものの、ついに力尽きてリタイアとなった。
日が傾き、昼間の暑さが和らぎつつある時間帯がやってきたころ、2番手のNICOSマクラーレンをドライブする田中哲也選手の猛追が始まった。トップをいくTAKATA無限×童夢NSXより2秒近く早いタイムでラップを重ねる。どこまで詰め寄るかと思われた矢先に2コーナーでスピンしてコースアウト。「頑張りすぎて、飛び出してしまいました」と田中選手。幸いダメージはなくコースに復帰したが、4番手まで順位を落としてしまった。

NICOSマクラーレンのスピンでトップ6の順位は、TAKATA無限×童夢NSX、カストロール無限×童夢NSX、FK/マッシモセルモ・スープラ、NICOSマクラーレン、フライジンガー・ポルシェGT2、ノマド・ディアブロとなった。

午後6時を過ぎ、ライト・オンの時間を迎えた頃からまた、鈴鹿の魔物は獲物を探してコースを徘徊。ゴールを目前にしたマシーンたちに続々と襲いかかった。
3位に浮上、表彰台に手が届こうかというFK/マッシモセルモ・スープラに突然のエンジン不調。東コースのショートカットを使いピットに戻ってきた。ショートカットでピットに戻った場合は5周の減算となる、それを覚悟で戻らなければならないほどトラブルは深刻だった。そのままリタイアだ。
1−2態勢となり、NSXの完全勝利が見え始めたころ、2番手を走るカストロール無限×童夢NSXも突然のエンジン不調に陥った。こちらもピットに戻りそのままリタイアとなる。
インターナショナルクラスでトップのフライジンガー・ポルシェGT2と国内GT500のノマド・ディアブロGT1は終盤激しくバトルを繰り広げていた。相次ぐ上位のリタイアでフライジンガー・ポルシェGT2は3番手、ノマド・ディアブロGT1は4番手にまで上がってきている。何度となく後方からアタックをかけるノマド・ディアブロを抑えていたフライジンガー・ポルシェGT2だが、S字で右リアタイヤが外れコースアウト。ノマド・ディアブロは3位に浮上。ピットは大騒ぎになった。

■2000年の夏終わる
午後7時が過ぎ、1000kmの旅を終えたマシーンたちが、まばゆい光とそれぞれのエグゾーストノートで闇を引き裂きゴールに戻ってきた。暑く長い1日だった。
レースが終了したあと、ピット裏ではチーム関係者が大騒ぎを始めていた。完走したチーム、リタイヤしたチームも関係なく、お祭り騒ぎを楽しんでいる。水を掛け合ったり、水を張った子供用のプールやゴムボートにスタッフやキャンギャルたちが次から次へと投げ込まれて、皆ずぶぬれ。レースの勝ち負けとは別の特別な雰囲気がパドックに漂う。そして、そんな夏の終わりを彩るイベントを締めくくる花火が打ち上げられ、余韻を残しながら今世紀最後の鈴鹿1000kmは幕を閉じた。

リポート/写真=小林晴彦

この記事の大きな画像を見るためには、画像ギャラリーをご覧ください。

の他の画像を見るためには、写真一覧をご覧ください。