フォーミュラ・ニッポン第8戦──運、そしてそれ以上のもの

2000.09.12 自動車ニュース
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フォーミュラ・ニッポン第8戦──運、そしてそれ以上のもの(9/12)

全日本選手権フォーミュラ・ニッポン第8戦が9月3日、富士スピードウェイで行なわれた。勝ったのはまたしても高木虎之介(PIAA NAKAJIMA)。5連勝と同時にシリーズ最多の7勝は新記録でもある。2位は予選1位の本山哲(IMPUL)、3位は柴原眞介(LEYJUN)が初表彰台をゲットした。
チームに与えられるシリーズチャンピオンもPIAA NAKAJIMAが2年連続で獲得した。

■いきなりの2パート
9月3日決勝日の天気は朝から快晴。秋が近いと感じさせる青空の中、富士山がくっきりと美しい。
13チーム、20台がグリッドに並び、シグナルがグリーンに。スタート直後の1コーナーを本山、4番手から飛び出した野田英樹(Le Mans)、ポールの高木の順で通過、大きな混乱はなかった。
スタートから12周目の最終コーナーでスピンした脇阪薫一(MOONCRAFT)のマシーンを避けようとした金石勝智(ARTA)がガードレールに激突し、マシーンは大破。エンジンがはずれてコースに飛び出した。タイヤやウィングなどがちぎれ飛び、残ったのはコクピット部分だけ。自力でマシーンから降りた金石は芝生の上に倒れ込んだが、幸い大事に至らず、足を打撲した程度で済んだ。
この事故でコース上に破片やオイルが散乱したため、レースは中断。10周目までを第1パートとし、第2パートを終了時の順位で再開することになった。
37周で争われる第2パートは、11チーム、16台がグリッドにならんだ。
野田がミスのないスタートを決めて第1コーナーへ。1周目を野田がトップでコントロールラインを通過した時、高木と本山はタイヤ交換のためにピットに滑り込んだ。7周目に野田が、10周目に立川がタイヤ交換のためにピットに入った。この時点で、第2パート最後尾スタートの柴原がトップに浮上。実は柴原だけが、第1パートですでにタイヤ交換を終えていた。第1パートでミハエル・クルム(5ZIGEN)と競り合いAコーナーでスピン、その直後の9周目にタイヤ交換を済ませていたのだ。2番手の高木に対して20秒以上のリード。逃げる柴原に対して、高木、本山、野田がペースを上げて追い上げる。15周目には本山が高木を1コーナーでかわした直後に高木が抜き返すというデッドヒート。18周目には野田が本山をかわし3位に浮上する。高木のペースより野田、本山のほうが速い。だが、24周目に野田がBコーナーでスピン。
高木と本山の猛追は続いた。逃げる柴原に対して毎周1秒以上縮める。35周目に高木が柴原に追いつき、1コーナーで手前でスリップストリームを使いあっさりと抜き去った。柴原は36周目に本山にも100Rで抜かれてしまい3位でチェッカーを受けた。

■運という要素
ドライバーのテクニックや精神力、マシーンの仕上がり、セッティングの読み、すべてが上々でも結果が伴わない時はある。勝負には「運」という要素が大きい。そして、どんなスポーツでも必ず言われるのが「運も実力のうち」。
今回のレースにも「運」「不運」は見え隠れした。
スタート直後に突然失速した1台のマシーンがあった。立川祐路だ。「タイミングは良かったんです、前を行く野田選手をパスできると思った瞬間にエンジンがおかしくなった」。原因は、ピットロードの制限速度違反を防止するために、今シーズンから設置されたリミッターのスイッチがONになっていた。運、不運ではなく不注意が原因のトラブルだったかもしれない。しかし、追い上げ続けて最後には4位でレースを終えている。レースに「たら、れば」はない。それでも、このトラブルがなかったら、どのようなバトルを演じていたかと思うと惜しまれる。
トップを独走した柴原は「運が良かった、自分の力でつかんだ表彰台ではないのは分かっている」と謙虚にコメントしていたが、運を引き寄せることが出来たからこそトップを走り、結果的には3位に入賞した。しかし、追ってきたのが高木、本山だったことは「運」が悪かったのかもしれない。
本山も運が悪かった方に入るだろう。目の前でスピンした野田のマシーンを回避するために、余計な減速が強いられた結果、高木から遅れてしまった。結果的に高木にとどかなった。

■運以上のもの
高木は「ぎりぎりまで考えて、1週目にタイヤ交換をすることを決めました。本山君が同時に入ってきたのは誤算でしたが」と語り、インタビュー中に、「今日は負けてました」と何度か繰り返した。「運が良かった」とも話した。「野田さんのミス(スピン)がなければ、2台に抜かれていたかもしれない」とも。
マシーン状態が決まらず、ライバルの速さに脅かされた。予選ではポールポジションを本山哲に奪われた。前回の富士でも予選ではミハエル・クルムにポールを奪われている。しかし、前回は自信たっぷりに「レースのセッティングが決まっているので心配していない」と語り、スタートでミスをしながらも優勝した決勝レース後にはマシーンの出来のよさを誇らしげに語った。
しかし、今回は「マシーンの状態が悪かった」「運も良かったが、勝ちたいという自分の意地もありました」「自分の力で勝てたと思う、普通に走ったら負けていた」と、状況の悪さと自分の力を強調しているように聞こえた。これをどう受け取るかは難しいが。良いマシーンがあるから勝てたわけではない、実力で勝った、とも受け取れる。さらに深読みしてみると、チームスタッフに対して「もっとがんばって」と言いたかったのかも……。
運、不運さえも、意地で勝ちに繋げる力。実力以上の何かも高木は手にしたのか。残り2戦果たしてどんなレースを見せてくれるのだろうか。

(リポート&写真=小林晴彦)

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