フォーミュラニッポン第9戦--トラ、トラ、トラ

2000.09.20 自動車ニュース
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フォーミュラニッポン第9戦--トラ、トラ、トラ(9/20)

フォーミュラニッポン第9戦が9月17日、山口県のセントラルパークMINEで行なわれた。高木虎之介(PIAA NAKAJIMA)がポール・トゥ・フィニッシュで前人未到の6連勝で8勝目を挙げ、唯一勝っていなかったMINEを制した。2位には、富士から調子を取り戻した感のある本山哲(IMPUL)が、3位には、第3戦のMINEで初優勝を果たした松田次生(PIAA NAKAJIMA)が入った。

数々のアクシデントを飲み込んで来たセントラルパークMINE。いつしか「波乱のMINE」、「荒れるMINE」などと呼ばれるようになった。今季も第3戦のスタート直後に2コーナーで多重事故が起こっている。

土曜日は、朝から台風の影響で風が強く、サインボードが飛ばされるアクシデントはあったが、決勝では何事も起こらなかった。スタートから淡々とラップが刻まれていくだけだが、その中でも、追うもの、追われるものの熱い戦いは終始繰り広げられていた。

スタートで定評があるのは本山。数々の名スタートシーンを過去に見せつけている。対して、スタートが「苦手」と言われてきたのは高木だ。その2人がフロントローに並んだ注目の決勝スタート。高木はミスなく好スタートを切った。本山はホイールスピンを招いて出遅れた。
「フォーメーションラップのペースが、思いのほかゆっくりで、タイヤがあたたまらなかった。そのせいでホイールスピンさせてしまった」と本山。高木の策だったのか。フォーメーションラップで本山が、高木の後ろに張り付くように走るシーンが見られた。本山が高木にプレッシャーをかけているのか、とも取れたが、逆に高木に抑えつけられていたのかも知れない。

■満タンで速いPIAA、軽くなってから速いIMPUL
 「うちの車は満タンで速くて、軽くなるとどうもバランスが良くない」と高木。逆に「軽くなると良くなる」と言うのは本山。レース前半引き離しにかかる高木に対して、満タンで動きの悪い本山は苦労していた。燃料が減って、バランスが良くなり、高木とのタイム差が縮まりだした。本山は、無線でタイヤ交換を指示、ピットに向かう。マシーンバランスが良い状態で新しいタイヤを履き、さらに追い上げようというもくろみだ。
 本山がコースに戻ったのはタイヤ交換をしていない2台のマシーンの後ろ。そして、本山のタイヤ交換を見て、高木は1周後にピットへ。タイヤ交換後その2台の前に戻った。2人の間に2台挟まったことでタイム差は、また開いてしまった。本山は「大失敗でした」とピットインのタイミングを振り返った。

■さらなる狩人たち
 高木の活躍で、影が薄くなってしまった感のある他のドライバーたち。しかし、着実に高木の背中が大きく見える位置へと迫ってきたドライバーたちがいる。その筆頭は、今季高木以外で唯一の優勝ドライバー松田次生(PIAA NAKAJIMA)だろう。レースでもチームでも高木の背中を追い続けている。若く新しい力の芽生えを感じさせるドライバーだ。
 今回のレースでは5番手からのスタート。「予選で思うような結果が出せずに終わったので、決勝のスタートに賭けていました」と、誰よりも素早いスタートをみせて1コーナーで3番手までジャンプアップした。予選3位からスタートした立川祐路(COSMO OIL CERUMO)は「自分も悪いスタートではなかった。気が付いたらインに松田選手がスパッと入ってきていた。かぶせて終わってしまう(リタイアする)わけにはいかないので、アウト側で頑張ったんですが、抜かれてしまった」と、悔しがった。

 その立川は予選で苦労した。土曜日朝の公式練習でのタイムは散々だった。「いつものように、朝は満タンで走ったの?」と、聞くと「違うんですよ、本当にだめなんです。フロントのグリップがなくて」と、笑顔がない。先週のGT選手権優勝という頂点からいいムードで乗り込んだはずだが、イメージ通りの走りができなかったようだ。なんとしても、上位のタイムを出したい。サスペンションを調整し直し、さらにギアボックスをばらしてギアのセットを交換して予選1回目に挑んだ。「ぎりぎりまで踏んで、縁石にもばんばん当ててって、危ないかなとおもったけど、攻めました」1回目は4番手のタイム。
 2回目、高木、本山は1分14秒台に飛び込んだ。ベストラップを記録し、続いて挑んだ最後のアタックラップは、コースアウトしたマシンが巻き上げた砂利などでコース・コンディションが悪くなりアタック中止。立川は15秒台を切れずに終わった。「14秒台には入っていたでしょうけど、前2台には届かなかった」と、マシンの調子が悪い中、意地でつかんだ3番グリッドだ。「決勝は?」の問いに「明日は、完走を目指します。完走すればそこそこの順位にいるはずだから」と、守りに入ったことが、松田に表彰台を奪われた要因なのか。

 全10戦のすでに9戦が終わった。そのうち8勝という前人未到の勝利を挙げた高木虎之介。最終戦の鈴鹿を最後に、再び世界の舞台に羽ばたくかも知れない。モータースポーツ好きなら、日本で今の虎之介を見なければきっと後悔する。
 鈴鹿のS字を駆け抜けるアクセルワーク。スプーン、ヘアピン、シケインの進入のプレーキングとシフトダウン、すべて見なければ損するモノばかりだ。
 そして、「虎」を狩るために、ハンターたちは最終戦に賭けているに違いない。最終戦・鈴鹿は見逃せない。
(リポート&写真=小林晴彦)

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