ITSの最前線を見る

2000.12.07 自動車ニュース
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ITSの最前線を見る(12/7)

先月末、4日間にわたって、ITSの中のひとつスマートウェイを中心にした公開イベント「スマートクルーズ21 Demo2000」が開催された。

■着実に進んでいるITSを実感
 まず、ITSとはどういうものか。定義というものはないが、ひとことでいうと「エレクトロニクス技術を用いて人と道路と車両を一体のシステムとして構築すること」。交通事故、渋滞、環境への悪影響などを少しでも軽減しようと、国家レベルで進めている壮大なプロジェクトだ。すでに実用化されているものでは、渋滞情報を提供するVICS、高速道路での料金授受を自動化したETCが有名だ。
 今回、茨城県にある建設省土木研究所と日本自動車研究所(CGでもおなじみのJARIだ)、つくば国際会議場を舞台に行なわれた公開イベントは、ITSの中でも最も中心的なプロジェクト、スマートウェイに焦点を当てたものである。主催はこれを強力に推進している運輸省と建設省。スマートウェイというものの存在をアピールするとともに開発の現状を広く知らしめることが最大の目的だ。
 スマートウェイがITSの基幹プロジェクトといえるのは、道路と車とを通信で結ぶ統合システムであるという点だ。その中身は単独でも充分機能する走行支援システムなのだが、それらが組合わさって複合的な効果を生み出すことが大きい。具体的には以下の7つの防止支援がある。
 前方障害物衝突
 出合い頭衝突
 路面情報活用車間保持等
 カーブ進入危険
 横断歩道歩行者衝突
 右折衝突
 車線逸脱
 これらに共通するのは道路側に設置された静的なインフラと、車側の動的な端末が相互に通信しあうことで機能する点だ。つくば市にある土木研究所のテストコースではすでにこれらの設備が設置されており、ここに自動車メーカーをはじめとする各メーカーが車両等を走らせ、実走シミュレーションを行なおうというのがこのデモのメインベントだ。この日は熱心な来場者が多かった関係で右折衝突防止しか体験できなかったが、その効用を垣間見ることができた。自車が交差点で右折しようという時に対向する右折車線に右折車(特に大型車)がいた場合、対向する直進車の存在はわかりにくいもの。この時、対向車線側にあるセンサーが直進車の存在を関知すると、即座に交差点に設置されたビーコンに直進車があることを知らせ、その情報を受け取った右折車のモニターには注意を促す表示がなされる、というわけだ。この、センサーが情報を拾ってビーコンが流す、という仕組みは基本的にどの危険防止策でも同じなので、実用化へのステップという点ではいずれのシステムも同じレベルにあるといえる。これからの課題はいうまでもなくインフラ整備。このような交差点は全国にゴマンとあり、しかも1方向だけ整備すればよいというわけでもない。つまりひとつの交差点に4つのセンサーとビーコンが必要なわけで、そのセットを交差点の数で掛ければ天文学的な費用がかかるということだ。もちろん車側もその情報を受け、表示するシステムが必要で、道路側のインフラは国がつくるからいいとしても、車側は個人の出費となるため、どれだけ普及するかという問題のほうが大きいのではないか、というのが感想である。

■大型車こそ必要なITS
 次は日本自動車研究所の会場に移動する。こちらは各メーカーが開発中のASV(先進安全自動車)を一堂に持ち寄り、その成果を披露していた。出展車はバラエティに富み、乗用車や大型トラックはもちろんだが、二輪までASVがあるとは驚きであった。一部の車両やはり体験試乗も可能で、筆者は日野自動車のASV-2に乗せてもらった。大型トラックというと過酷な労働が原因による事故も少なくなく、一度起こると甚大な結果をもたらすことが多い。また、渋滞などによる経済活動への影響も直接響く。よってITSの効用は乗用車以上に大きいと常々考えていた。この日の展示も安全に関するものが多く、日野に限らずどのメーカーも積極的に取り組んでいた。以下のシステムはその代表的なものだ。
 居眠り警報システム
 前方障害物衝突防止
 車線逸脱防止
 カーブ進入危険防止
 配光可変型前照灯
 後側方・側方情報提供装置
 日野のデモカーでは車線逸脱と後側方・側方情報を体験した。車線逸脱防止はカメラが常時道路の白線を追い、一定の量をはずれると警報、もっとはずれると自動的にステア操作を行ない本来走るべきレーンに戻すというもの。後側方・側方情報とはトラックなどでは特に見にくい斜め後方をカメラで監視、追い越しをかけてきた車があればモニターにその対象を赤い枠をつけて映し出し、ドライバーに注意を促す。いずれも疲労のたまったドライバーにはありがたい機能であることに間違いないことを実地体験した。
 しかし大事なのは、これらのシステムがいずれも「防止支援」にすぎないということだ。人間とは弱いもの。あまりに過信しすぎることが一番怖い。ドライバーがこのシステムに頼ってしまうがために引き起こされる事故がないと誰がいえるだろうか。

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