燃料電池自動車、初の公道走行(予定)

2001.02.14 自動車ニュース
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燃料電池自動車、初の公道走行(予定)(2/14)

■共同プロジェクトについて

2001年2月13日、ダイムラー・クライスラー日本ホールディング(株)およびマツダ(株)は、2月15日から、水素と酸素によって発電し走行する「燃料電池自動車」(注)の公道実走試験を開始する、と発表した。テストに使われるのは、メルセデスベンツAクラスをベースにした「Necar5」と、ファミリアから派生したピープルムーバー「プレマシー」のFC-EV版。いずれも、国土交通省の大臣認定を受け、ナンバープレートを取得しての走行となる。

今回の「燃料電池自動車共同プロジェクト・実車走行試験」は、経済産業省の支援を受けた石油産業活性化センターが(PEC)が主催し、ダイムラー・クライスラー日本ホールディング、マツダ、日石三菱(株)が参加する共同プロジェクト。ダイムラー・クライスラーとマツダがテスト車、日石三菱が燃料となるメタノールを提供する。
実験の目的は、燃料電池車の「走行性能」「燃費」「排ガス」についてのデータを採取、燃料電池に最適な燃料を選択する一助とすること。実走試験には、神奈川県横浜市周辺の公道、施設が使われる。

(注)燃料電池とは、水素と酸素を結合させ、つまり「水の電気分解」と逆の行程を経て電気を取り出す、一種の発電機。酸素は大気中から取得できるものの、水素をいかに供給するかが課題。携帯方法として、「圧縮水素」「水素吸蔵合金」「メタノール改質」「ガソリン改質」など、いまだ方式が定まらない。Necar5、プレマシーFC-EVとも、メタノールから水素を取り出す「メタノール改質型」燃料電池車である。

■ダイムラー・クライスラーの発表

ダイムラー・クライスラー社は、1998年に米国フォード社、カナダはバラード・パワーシステム社と提携し、燃料電池車の開発を進めてきた。99年10月には、日石三菱との共同開発に合意した。

ダイムラー・クライスラー社のマネージャー(Assistant to Senior Project Manager Fuel Cell Project)オリバー・フォルラート氏が説明する。
「石油の需要と供給のバランスが保たれるのは、2010年ごろまで。2012から2014年にはバランスが崩れ、代替燃料の必要性が増すでしょう」。プロジェクターで投影された年表には、「End of cheap oil」と記される。
続いて、内燃機関に替わる動力源として有望視される燃料電池を使用したクルマの利点を、3つの観点から挙げた。
(1)排ガスが出ない。効率がいい。
(2)可動パーツが少ないので、メンテナンスが楽。構造をモジュラー化しやすい。これらは、主に自動車メーカーにとってのメリットである。
(3)「静か」で運転が楽しい。「エンジンの咆哮」「シビれる排気音」は、過去のものになるわけだ。

1994年の「Necar1」で、水素を燃料とするクルマの開発を本格化したダイムラー・クライスラー。フォルラート氏は、「現在も多様な方法を模索している」と前置きした後、3種類の水素携帯方法に関して述べた。
まず、圧縮水素をタンクに積める方式。これは、排ガスがゼロなうえ、改質装置をもたないので、システムがシンプルで軽いというメリットがある。定期バスなどのフリートアプリケーション、つまり走行コースが決まっているクルマに向く。ダイムラーは、2002年にヨーロッパで水素バスを販売する予定だ。
メタノール改質は、燃料を液体で持ち運べるので、汎用性が高いという。いまのところ、ダイムラーのイチオシ方式である。
ライバル「GM+トヨタ」連合がトライするガソリン改質に関しては、技術的な壁が厚く、「あと数年で乗用車として実用化するのは無理」と否定的な見方を示した。

■マツダの発表

マツダは、プラットフォーム・プログラム開発推進本部第5プラットフォーム・プログラム開発推進室の益永茂治主査が、説明に立った。
化学プラントにあたる燃料電池を車載可能な大きさにする困難さに注意を喚起したのち、プレマシーの特長を述べた。もともとスペースユーティリティに優れたモデルであるうえ、燃料電池、改質装置などを床下に収めることにより、「ペース車の基本パッケージを変えることなく、5人がゆったりと乗れる実用性の高い室内空間の実現に成功」したという。

マツダは、1991年にバラード社から燃料電池の貸与を受けたことを契機に基礎研究を開始。97年に燃料電池システムと水素吸蔵合金を用いた「デミオFC-EV」、99年にシステム全体を20%コンパクト化した「デミオFC-EV」2号車を開発した。その間、98年4月には、フォードグループの一員として、フォード、ダイムラー、バラードのアライアンスに、参加している。

今回、「プレマシーFC-EV」を発表したマツダだが、特に製造コストの高さに触れ、「市販化にはブレイクスルーが必要」(益永氏)と、慎重な姿勢だ。
なお、93年に発表された「水素REロードスター」、95年の「水素REカペラカーゴ」と、「水素との相性がいい」と話題になったロータリーモデルに関しては、「水素吸蔵金属の開発が滞っているので、休止状態」だそうだ。

■石油産業活性化センターから

同日、実車走行試験の主催団体である石油産業活性化センターからもリリースが出された。今回のテスト開始で、燃料電池の燃料が、あたかも「メタノールで決定!」されたかの印象を受けないよう、牽制した内容である。

経済産業省資源エネルギー庁燃料電池実用化戦略研究会という長い名前の研究会の報告から、次世代の燃料について解説する。
(1)初期は、圧縮水素やメタノールを使った、特定地点間をフリート走行する自動車に限定される。つまり、定期バスですな。
(2)近未来においては、硫黄などの不純物を除去した「クリーンガソリン」や天然ガスから生成される「液体合成燃料(GTL)」が有望だとする。
(3)長期的将来には、水素そのものを燃料とする。その前提は、「車載貯蔵技術の確立」「水素供給インフラの構築」である。

さらに、「現段階で実車走行試験が可能であるメタノールを燃料とした燃料電池自動車を使用しますが(中略)近未来的に有望とされているガソリン燃料電池車に関して、実用化を目指して進めていく」とダメ押しをする。あくまで、石油産業を活性化してくれないと、困るわけである。

なお、燃料電池車の公道走行は、3月上旬に、横浜・みなとみらい21地区で、公開される予定だ。

(webCGアオキ)

(写真A)ダイムラー・クライスラーの発表チーム。右から2人目が、フォルラート氏。
(写真B)マツダの益永氏。「マツダ独自の開発内容は?」との質問に、「燃料電池システムを床下に収納するパッケージング技術」と答えてくださった。
(写真C)量産を前提にした燃料電池素材「バラード・マーク901」を搭載。75kWの最高出力を発生し、Necar5を150km/hまで加速させる。気になる航続距離は、「まだ実験段階で、使うタンクの容量によって左右されるため」ヒミツだという。車重も明かされなかった。
(写真D)ドアなどをカーボンファイバーに、ガラス類をポリカーボネイトとすることで軽量化を図った「プレマシーFC-EV」。それでも、ベース車より550kg重い、1850kg。タイヤは、低ころがり抵抗の専用品だ。

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