「BMWクリーンエネルギー・ワールドツアー 2001」開催

2001.06.01 自動車ニュース
 
 

「BMWクリーンエネルギー・ワールドツアー 2001」開催(6/1)

■普通のクルマと変わらない

「手をかざしてみてください」というドイツ人エンジニアのすすめに従って、アスファルトに膝をついてクルマのテイルパイプに手をやると、温かい風とともに、指先がじんわり湿ってきた。「排出されるのは水蒸気だけです。吸い込んでも大丈夫ですよ」。長身のエンジニアが笑う。
2001年5月31日、茨城県つくば市は日本自動車研究所において、「BMWクリーンエネルギー・ワールドツアー 2001」が開催された。昨年ベルリンで披露された、水素自動車BMW750hLを用いての世界旅行の一環である。ガソリン、水素、どちらを燃料として使っても走行可能な“バイフューエル”7シリーズの完成度、さらに水素自動車実用化の可能性を広く知ってもらおうという意図から企画されたものだ。

当日は、研究者やジャーナリスト、政財界からの著名人など約550人が、水素自動車による5.5kmの高速周回を体験した。用意された750hLは、これまで15台生産されたうちの6台。来日した独BMW AGからのスタッフは、東京モーターショーを上まわる70名。水素自動車にかけるバイエルンの自動車メーカーの意気込みを感じさせる。
オーバルのテストコース脇に設置されたテントから、案内にしたがって12気筒エンジンを積んだ「7」に乗る。「参加希望者が予想以上に多かった」(BMW広報)ため、1台にゲスト3人の4名乗車。後部座席からスピードメーターを覗くと、走り出した750hLは間もなく160km/hに達し、バンクに突入。直線をはさんでもう一度バンクをこなすと、同乗走行は終わり。「普通のクルマと変わりませんね」と隣に座ったジャーナリストがつぶやいた。

ワールドツアーは、ドイツの新首都から始まり、今年2月にアラブ首長国連邦はドバイ、3月にベルギーはブリュッセルとイタリアのミラノ、そして今回の東京。7月には北米ロサンジェルスを訪れ、11月にベルリンに戻る予定だ。

■内燃機関が現実的と主張

BMW750hLは、BMW水素自動車としては第5世代にあたるガソリン/水素のバイフューエルカーである。最大の特徴は、水素を燃料としながら、動力源が、酸素と水素の化学反応を利用した「燃料電池」を使ったモーターではなく、水素をシリンダーに直接噴射して燃やす内燃機関、5.4リッターV12であること。204psを発生、0-100km/h加速を9.6秒でこなし、226km/hまで7シリーズボディを運ぶスペックをもつ。水素は、マイナス253度の液体状態で、最大140リッターまで密閉型タンクに貯蔵される。燃費運転に徹すれば、約350kmの航続距離が得られるという。95リッターのガソリンタンクはそのままだから、水素がなくなったら、インパネに設けられたスイッチを押して、ガソリンで走り続ければいい。ボディ右リアには、「水素」「ガソリン」用、2つの燃料注入口が用意される。

燃やしてもエミッションを出さない水素を燃料としながら、フューエルセル(燃料電池)ではなく、水素内燃エンジンを選んだ理由として、BMWは、「内燃機関はテクノロジーとしての実績があり」「電気に変換する必要がないためエネルギー効率がいい」ことを挙げる。従来のガソリンエンジンからの変更点が少ないため、開発・製造コストが安いというメリットも見逃せない。より現実的、というわけだ。

■戦略的ワールドツアー

クリーンエネルギー・ワールドツアーは、BMWの「ゼロエミッション」「循環型エネルギー」を目指した水素自動車戦略にのっとって行われている。

まず、水素はクリーンな太陽熱発電によって生成したい。そのため、サンベルト地帯に位置するドバイで、太陽熱発電所の設置を訴える。次に、水素自動車が公道を走るための認可、税制面での優遇、水素の安定供給のため、EUの中心地ブリュッセルで行政、政治面での協力を求め、続くミラノで、社会基盤である液体水素供給ステーションの建設が発表された。
東京では、地球温暖化防止のための二酸化炭素排出量削減を決めた京都議定書を実現するためには、水素利用しかないとアピール。7月にイベントが開催されるカリフォルニア州ロサンジェルスは、最も苛酷な排ガス基準を課す都市である。ここでは、ゼロエミッションカーBMW750hLが、量産可能なまでに開発されたことが強調されるはずだ。水素内燃エンジンが、最も手近なエミッション解決手段である、と。

BMW AG 開発担当取締役ブルクハルト・ゲッシェル博士は記者会見で、「燃料電池方式も内燃エンジン方式も目指しているものは同じ。共存できないはずがない」と断ったうえで、「水素のインフラストラクチャーが整備されるまで、従来のガソリン燃料供給システムも併存する」との見通しを述べた。水素内燃エンジンに関しては「技術的にはすべての問題が解決されています」と自信を見せた。次回は、ぜひジャーナリストにもステアリングホイールを握らせてほしい。

(webCGアオキ/写真=郡大二郎)

写真(a)むかって左が、B.ゲッシェル博士。「ここまで開発が進んだ水素エンジンを目のあたりにしますと、そう遠くない将来、F1レースが水素で闘われるのではないかという気さえしてまいります」。(b)BMW750hL。バッテリーにはFCを採用。エンジン停止中でもエアコンはじめ電装品を稼働させることが可能だ。(c)「ガソリンバージョンを上まわる瞬発力とパワーレスポンスを実現できる」(プレス資料)V12「Hydrogen Power」。(d)現在、ハンブルク、ベルリン、ミュンヘン、ミラノに、液体水素供給ステーションが設置される。給水素プロセスは完全に自動化され、約3分で完了するという。

 
 

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