「売れ行き低下」のプリウス、じつは楽しい

1998.12.03 自動車ニュース
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「売れ行き低下」のプリウス、じつは楽しい(12/3)

新聞紙上で「販売台数が伸び悩んできた」と報道されたトヨタプリウス。乗ってみれば、未来感あふれるその世界はなかなか楽しい。

11月20日付の朝日新聞によると、トヨタプリウスの販売台数が、「発売後約1年を経てやや伸び悩んできた」という。1997年末に世界初のハイブリッドカーとして登場した同車は、京都の温暖防止会議で高まった「環境ブーム」の影響もあり、納車までに3カ月待ちの状態が続いた。このためトヨタでは1998年6月から、生産台数をそれまでの月1000台からイッキに2000台に増産。ところが販売実績は8月が1300台弱、9月が1800台弱、10月が1600台弱と、いずれも生産能力を下回っているという。

そんなプリウスに、あらためて試乗してみた。乗ってみての印象をいえば、その未来感あふれる独特な走りの世界は、「地球にやさしい」ということを抜きにしても、自動車好きを楽しませるのに十分なものだった。イグニッションキーをひねると、まず充電、暖気のためにエンジンがしばらくかかっている。ところが、しばらくして発進するとエンジンが止まり、モーターの力だけでスルスルッと、ほぼ無音で走り出す。その感覚の「新鮮さ」はとても楽しい。

やや加速して、時速40kmあたりから通常の走行状態に入ると、再びエンジンがかかる。その動力は一方でタイヤを直接駆動するとともに、発電機を介してモーターを回し、こちらもタイヤを駆動して加速力を生み出している。エンジン音とともに、モーターが回転する「ヒーン」というノイズも聞こえ、「いかにも近未来のクルマに乗っている」という斬新な感じがしてコーフンしてしまう。さらに、モニター上に表示される、駆動力の状態をあらわす画面や、単位時間ごとの燃費計をみていると、おのずと「エコラン」をする気になってくる。そこがクルマとしてのプリウスの、最大の新しさかもしれない。

高速道路に入っても、大人しく走っていればこのモードで走行するのだが、フル加速をすると、上記の状態に加えてバッテリーからの電力もモーターに加わり、モーターの駆動力をさらに高めるようになっている。アクセルをゆるめて減速したり、ブレーキを踏んだりすると、モーターが発電機に変容してバッテリーを充電する「回生ブレーキ」が効く。この時に「ヒューン」という、電車の減速時のような音がするのも、未来っぽい感じがして楽しい。その回生ブレーキを利用した、いわゆるエンジンブレーキがあまり効かないので、そのぶん油圧式のブレーキそのものはよく効くように設定されている。ただ、短いペダルストロークで急激に制動力が立ち上がる、いわゆるカックンブレーキなので、やや馴れを要するだろう。そのタッチはハイドロ・シトロエンのそれに似ていて、けっこう味わい深いものだ。

キャビンは大人4人が乗るには十分に広い。低速でフワフワ、中高速ではシットリと落ち着いてくる乗り心地はフランス車的でたいへん好ましい(ただ、シートの出来はフランス車ほどよくないが)。ハイブリッドシステムのため、メカニカルノイズは静かなのだが、そのぶんロードノイズの侵入が気になるのが残念だ。ステアリングはスローな設定で、中低速域では中立付近がややブラブラしている。またキャスター角が少ないので、ステアリングの反力も不足している。これはキャスター角を減らして走行抵抗を減らすことで燃費向上を目指したためともいわれるが、もう少しキビキビとしたステアリングフィールだったらいいのにな、とも思った。

そのほか、フロントに重いハイブリッドユニットを乗せているがゆえのノーズの重さとか、車重に対してボディの剛性感が相対的に足りない感じがするなど、いわゆる従来のジドウシャ的な価値観から見れば、プリウスには未熟な点もいくつかある。けれど、その未熟さまでもが、「未来指向」のひとつの現れという気もして、ある種のいとおしさすら感じてしまうのだ。考えてみれば、日本車、とくに天下の大トヨタの作るクルマで、「あばたもエクボ的なかわいらしさ」のあるクルマは、ほかにないだろう。そういう意味では、プリウスは日本が世界に誇ることの出来るクルマであると同時に、クルマ好きにとってはある意味で「ガイシャ」なのだ、といえると思う。(Web CG スヤマ)

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