第10戦ドイツGP「“常連組”による覇権争いへ」【F1 2012 続報】

2012.07.23 自動車ニュース
ドイツGPを制したフェラーリのフェルナンド・アロンソ。第2戦マレーシア、第8戦ヨーロッパに次ぐ勝利により、今季初めて3勝目を飾ったドライバーとなった。チャンピオンシップでは34点のクッションを築き首位をキープする。フェラーリにとってはドイツGP通算21勝目で、単独GP最多勝記録を更新した。(Photo=Ferrari)
【F1 2012 続報】第10戦ドイツGP「“常連組”による覇権争いへ」

【F1 2012 続報】第10戦ドイツGP「“常連組”による覇権争いへ」

2012年7月22日、ドイツのホッケンハイムリンクで行われたF1世界選手権第10戦ドイツGP。2戦連続でフェラーリのフェルナンド・アロンソがポールポジションからレースをコントロールする展開となったが、終盤に逆転を許した前戦とは違い、今回は首位をきっちりと守り切った。しかしアロンソは、セバスチャン・ベッテル、そしてジェンソン・バトンからのプレッシャーを常に感じての走行をしいられ、勝負は最後まで緊迫したものとなった。

雨の予選で2戦連続のポールポジションを獲得したアロンソ(写真先頭)。スタートでトップを守ると、前半はレッドブルのセバスチャン・ベッテル、後半ではマクラーレンのジェンソン・バトンを敵に回しながらレースをコントロールした。(Photo=Ferrari)
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■混戦とタイヤの前半戦

史上最多の20戦で争われる2012年のF1は、3月のオーストラリアGPに始まり、7月のドイツGPでようやく折り返し地点を迎えた。

これまでの9戦で、7人のドライバーと5つのチームが優勝し、ポイントランキング上位5人が46点の間に並んでいる。セバスチャン・ベッテルがシーズンを席巻した昨季は、同時点で勝者が4人(うちベッテルが6勝)と3チーム、ポイントリーダーのベッテルと2位マーク・ウェバーの間には既に80点もの大きな溝ができていたことをみると、今年前半戦の混戦ぶりがうかがえるだろう。

2年連続でダブルタイトルを獲得しているレッドブルは、今年、その最大の武器ともいえる空力上のアドバンテージ、具体的にはエキゾースト・ブロウン・ディフューザー(EBD)を事実上禁止とされたことで、開幕当初から苦戦をしいられた。
EBD禁止に悪戦苦闘したのはレッドブルだけではない。特にEBD開発に力を注いでいたトップチーム、マクラーレンやフェラーリ、メルセデスといったフロントランナーはおのおの試行錯誤を繰り返し、その間、逆に昨年までEBDを上手に扱えなかったザウバーやウィリアムズは今年になって上位に顔を出す常連となった(現にウィリアムズは第5戦スペインGPで7年半ぶりに優勝している)。

EBD禁止による各陣営の迷走は、各車のパフォーマンスレベルの差を詰めることになり、わずかの遅れでもグリッドや順位が大きく変わってしまう混戦状態を招いた。そして同時に、扱いづらいとされるピレリタイヤの、勝敗に占める割合が結果的にぐっと増すことになった。

フェラーリ、レッドブルに水をあけられていたマクラーレンは、ホッケンハイムに大幅なアップデートを施した「MP4-27」を持ち込み、これが功を奏した。過去6戦の最高位が8位というスランプに陥っていたバトンは、6番グリッドから着実にポジションを上げ3位でチェッカードフラッグ。レース後、残り2周で追い抜かれたベッテルへのペナルティーが決まり2位に昇格、4月の中国GP以来となる表彰台にのぼった。(Photo=McLaren)
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■2強プラス1の争い

だがシーズン半ばに差し掛かった直近の2戦では、二つの強豪 ─ レッドブルとフェラーリ ─ が頭角を現し始めていた。
レッドブルは6月下旬の第8戦ヨーロッパGPで持ち込んだ通称「RB8“Dスペック”」で、特にマシン後部の空気の流れを改良。これが奏功したようで、バレンシア市街地コースではベッテルがマシントラブルでリタイアするまでライバルを蹴散らし、次のイギリスGPではウェバーが今季2勝目を飾った。チームは9戦して最多の3勝を記録、コンストラクターズチャンピオンシップでは、ベッテルが優勝した第4戦バーレーンGP以来首位に居座っている。

いっぽうフェラーリも開幕からつまずいた。こちらは逃し続けているタイトルへのプレッシャーが邪魔をしたようで、フロントにプルロッドサスペンションを採用するなどした意欲作「F2012」の開発の詰めに手を焼いた。それでも、5月上旬に久々に行われた、シーズン途中の各チーム合同テストでの成果を糧にマシンの成熟を進めることに成功。5月の第5戦スペインGPからの5戦で、フェルナンド・アロンソは優勝1回を含む4回も表彰台にのぼっている。ドライバーズランキングでは2勝しているアロンソが首位、チームとしても2位に躍進している。

この2強の陰にすっかり隠れていたのがマクラーレンだ。ジェンソン・バトンの開幕戦勝利、ルイス・ハミルトンの2戦連続ポールポジション奪取など、「MP4-27」こそ2012年のリーディングマシンかと思わせたが、その後は低調著しく、特にバトンに至っては過去6戦の最高位が8位とスランプに陥っていた。ハミルトンは第7戦カナダGPで今季初勝利となったがポイントが伸びずにランキング4位、コンストラクターズ選手権ではロータスにも越され4位と沈んでいる。

起死回生を図るべく、マクラーレンはここドイツGPで大幅なマシンアップデートを敢行。サイドポッド、エキゾースト出口、前後ブレーキダクトなどを改善してきた。そのかいあってか、金曜日の最初のフリー走行でバトンがトップタイムをたたき出し、ドライバーからも強気の発言が聞こえてきた。

ドイツGPはホッケンハイムとニュルブルクリンクで隔年開催となる。今年の舞台は2年ぶりのホッケンハイム。前回のレースでは全車ブリヂストンタイヤを履いていた。初めてのピレリタイヤでの走行、勝敗のカギを握るタイヤデータが不足しているのは、全チーム共通の悩みであった。

かように先の読みづらい週末は、前戦イギリスGP同様に時々降り出す雨にたたられ、さらに混迷の度合いを深めていった。

いまだ勝利のないロータス勢だが、ベッテルへのペナルティーにより、10番グリッドからスタートしたキミ・ライコネンが今季4回目のポディウムとなる3位でゴールした。予選順位がよければトップへの追撃もできた、とはレース後のライコネンの弁。2007年チャンピオンは、ポイントリーダーのアロンソの56点後方、ランキング4位につける。(Photo=Lotus)
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■アロンソ、2戦連続で雨を味方にポールポジション

土曜日の予選は、Q2からウエット状態となり、トップ10グリッドを決めるQ3では、時間がたつにつれてコース状態が改善するという、イギリスGPとそっくりな展開となった。似ていたのは展開のみならず、セッション終了間際にアロンソが最速タイムをたたき出したのもしかり。2番手タイムのベッテルに0.4秒の差をつけ、フェラーリが2戦連続の予選1位を獲得した。

母国で勝てないというジンクスを今年も指摘されることになったベッテルは悔しい2番グリッド。ウェバーは3番手タイムを記録したが、ギアボックス交換をしなければならず、5つポジションダウンの8番グリッドからスタートすることとなった。

ウェバー降格でメルセデスのミハエル・シューマッハーがトップ3に顔を出し、フォースインディアのニコ・ヒュルケンベルグを合わせ、上位4グリッドに3人のドイツ人ドライバーが並ぶこととなった。

対するマクラーレンは、バトン6番グリッド、ハミルトン7番グリッド。ドライでのパフォーマンスには自信をのぞかせたものの、ウエットタイヤとの相性に課題を残した。

ザウバー勢は、小林可夢偉が12番グリッド、セルジオ・ペレスは17番手と後方からスタート。レースでは2台とも果敢なオーバーテイクを繰り返し、小林は5位、ペレス6位とタンデム入賞を果たした。ベッテルの5位降格により、小林は自身最高位記録を上回る4位でレースを終えることに。チームはウィリアムズ、フォースインディアら中団のライバルを大きく引き離しコンストラクターズチャンピオンシップ6位につけている。(Photo=Sauber)
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■三者による優勝争い

予報通り、決勝の日曜日はドライ。レースのスタートが切られると、絶妙の滑り出しを決めたポールシッターのアロンソを先頭に、2位ベッテル、3位シューマッハー、4位ヒュルケンベルグとトップ4はグリッド順でオープニングラップを終えた。

マクラーレンの2台は出だしから明暗が分かれた。バトンはひとつポジションを上げ5位につけるいっぽうで、ハミルトンは他車間の接触で飛んだパーツを踏んだか、67周レースの3周目に左リアタイヤがパンクするトラブルに見舞われ、早々に優勝戦線から離脱した。

1位アロンソと2位ベッテルのタイム差は、DRSが使える1秒内から徐々に広がり2秒強にまでなるが、フェラーリの逃げ切りとまではいかない。その後方では、バージョンアップしたマシンで水を得た魚のように好走するバトンが追い上げてきており、8周目にはヒュルケンベルグを、11周目にはシューマッハーを抜き3位まで浮上していた。

レースの3分の1時点、最初のピットストップが一巡すると、アロンソ、ベッテル、バトンの3台と、4位につけるライコネンとの間の溝が大きくなり、三者による優勝争いが明確となり始める。

2ストップが大勢を占めた今回、最初のタイヤ交換を済ませたトップのアロンソと2位ベッテルのギャップが徐々に詰まり出す。24周を終え1.8秒あった間隔は5周後には1秒を切っていた。そうこうしているうちに、タイヤに苦しむフェラーリにレッドブルが肉薄している背後には、バトンが忍び寄っていた。

母国ドイツで勝てない、7月に勝てない ─ 毎年つきまとうジンクスを今回も打破できなかったベッテル。予選ではアロンソにポールポジションを奪われ、決勝では残り2周でバトンから2位の座を奪還したが、コースをはみ出てのオーバーテイクが違法と判断され、レース後に20秒のタイムが加算、2位から5位に降格した。
なお決勝当日、FIA(国際自動車連盟)は、レッドブルのエンジンマッピングがレギュレーションに抵触する疑いがあるとして、スチュワードに裁定を求めた。トラクションコントロールの機能とオフスロットル・エキゾーストの効果を不当に得ようとしているという嫌疑がかけられたのだが、結果スチュワードは違法性を認めないと決めた。レッドブルがまたもルールの“抜け穴”を見つけたと言えるが、マッピングに何らかの変更は求められる模様である。(Photo=Red Bull Racing)
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■アロンソ、我慢のレース

この三つどもえの戦いに、思わぬ伏兵が現れる。バトンのチームメイト、ハミルトンだった。既に序盤の遅れからラップダウンとなり、優勝は絶望的だったハミルトンは、フレッシュタイヤを履いてハイスピードで周回を重ね、35周目には2位ベッテルを抜いてしまったのだ。アロンソを追うベッテルにとって、この目の上のコブは邪魔以外の何ものでもない。レース後、チャンピオンはハミルトンに厳しい批判を浴びせることになる。

この邪魔のせいか、42周目、アロンソ、ベッテルが同時に最後のタイヤ交換を行うと、1周前にピットストップを済ませたバトンがベッテルの前へ出ることに成功。1位アロンソ、2位バトン、3位ベッテルというオーダーとなった。

最後のスティントでも、アロンソは逃げ切るどころか、1秒以内でバトンを何とか抑える我慢のレースをしいられた。フェラーリにとってラッキーだったのは、3位ベッテルが2位バトンに猛追を仕掛けてくれたことだ。順位を争えばペースは落ちる。このチャンスをしっかりとものにしたアロンソは、最終的に3.7秒リードでチェッカードフラッグを受けることとなった。

白熱した2位争いは、残り2周を切った段階でベッテルがヘアピンでバトンをオーバーテイクし決着したかにみえたが、アウト側に膨らんだレッドブルのラインはコースを外れながらマクラーレンの先を行ってしまったことで、この追い抜きはレース後に違反と判断されることに。2位でゴールしたベッテルのタイムには、ドライブスルー分の20秒が足され、5位に降格となった。母国未勝利のベッテルに、またしても悔しい結果が突きつけられた。

第8戦ヨーロッパGPで復帰後初の表彰台に立ったドイツの巨人ミハエル・シューマッハー。マーク・ウェバーのギアボックス交換による5グリッド降格で3番グリッドを得た43歳の元王者は、序盤こそ、新時代のドイツの英雄ベッテルと丁々発止を繰り広げたが、その後はズルズルと後退。結果7位で母国レースを終えた。ちなみに今回のレースは、シューマッハー最後の勝利から50戦目。彼にとってはもっとも長く優勝から遠ざかっていることになる。(Photo=Mercedes)
【F1 2012 続報】第10戦ドイツGP「“常連組”による覇権争いへ」

■「今後数戦でも優勝争いに絡めるだろう」

毎戦のマシン改良と見事なレース運びが結実し、アロンソは今季3勝目を記録した最初のドライバーとなった。チャンピオンシップでのリードも34点に広がり、順風満帆にもみえるが、本人は楽観視していない。アロンソからはレース後、「われわれはドライで最速ではなかった」という発言が聞こえた。

対照的に繰り上がりで2位に返り咲いたバトンは、「いまはわれわれより速いやつはいないね。今後数戦でも優勝争いに絡めるだろう」と自信たっぷりだ。

フェラーリ、レッドブル、マクラーレン ─ シーズンの半分が終わり、混戦のシーズンは徐々に“常連組”による覇権争いに収束しつつある。

次戦はサマーブレーク前の最後のレース、ハンガリーGP。決勝は1週間後の7月29日に行われる。

(文=bg)

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