「世紀の車」の栄誉はT型フォードに

1999.12.28 自動車ニュース
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「世紀の車」の栄誉はT型フォードに(12/28)

20世紀に生産された乗用車のなかから、歴史的にもっとも重要なただ1台の車を選び出し、そのメーカーを讃えようというのが「Car of the Century」の趣旨である。投票したのは全世界の自動車ジャーナリスト132人で、その中には日本人専門家12人も含まれる。なお、CG編集顧問の小林彰太郎は、名誉委員会の副会長を務めた。

この催しがスタートしたのは1996年で、主催者は1964年に、European Car of the Yearを創始したオランダ人ジャーナリストのVan der Flugt。最初は主催者側が選出した候補車400台を選考委員132人に提示、まずそれを200台に、翌年には100台に絞られた。この段階で日本車は7台残っていたが、1999年初めにさらに25台まで絞り込まれたときにすべて消滅した。

1999年12月18日、ラスベガスのホテルにおける最終投票2日前に、最後の5台が公表された。それは「T型フォード」「ミニ」「VWビートル」「シトロエンDS」「ポルシェ911」だった。そして最終投票が行われた。結局「T型フォード」(1908−1927年)が、大差をもって2位以下を引き離し、栄誉ある世妃のタイトルを獲得した。

最後まで残った5台の得点と順位は次のとおり。採点方法は、各審査員が持つ25点を5車に割り振るが、「Car of the Century」候補には必ず10点を与えなければならない。

T型フォード742点
ミニ617点
シトロエンDS 567点
VWビートル521点
ポルシェ911 303点

いうまでもなく、T型フォードは18年間に約1600万台も生産されたヘンリー・フォードの世界的ベストセラー。T型が自動車界に及ぼした最大の貢献は、初めてコンベアライン(流れ作業)という画期的生産技術を導入したことにある。その結果生産性は格段に向上し、それに反比例してコストは大幅に低減した。当初880ドルだったT型の価格は、モデル末期の1925年には260ドルまで引き下げられた。その結果、これまで車を所有するなど夢だったアメリカ大衆は、初めてそれを手にしたのである。T型は北米だけでなく、カナダ、英国、ドイツ、豪州、日本その他の現地工場でも生産された。

技術的に見ても、T型の設計は発表当時非常に進歩的だった。最大の特徴は遊星ギアによる2段型変速機にある。これは原始的な半自動変速機と言えるもので、いわゆるクラッチはなく、変速ペダルとレバーにより、誰でも容易に無音で変速できた。繋がりが唐突な重いクラッチを踏み、ガリガリとギアを鳴らしてギアチェンジしていたそれまでのドライバーにとって、T型の登場はきっと福音だったろう。

「Car of the Century」と並行して、今回は自動車界で今世紀最高の人物が「Man of the Century」として選出された。これは4つの分野に分かれている。「世紀のカー・デザイナー」にはジョルジェット・ジュジアーロ、「もっとも優れた自動車技術者」にはフェルディナント・ポルシェ、「最大の企業家」にはヘンリー・フォード一世、「最高の経営者」にはフェルディナント・ピエヒが、それぞれの分野における栄誉を与えられた。(文=小林彰太郎)

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