第31回:高級車の後部座席は、法律事務所に適しているか?
『リンカーン弁護士』

2012.07.11 エッセイ

第31回:高級車の後部座席は、法律事務所に適しているか?『リンカーン弁護士』

タウンカーで裁判所を駆けめぐる

エンブレムが大写しになり、角ばったグリルやランプ、そしてホイールなどの細部を順番に捉えていく。全体像が見えて、「リンカーン・タウンカー」であることが明らかになる。到着したのは裁判所だ。ナンバープレートには“NT GUILTY”(無罪)と記されている。リアドアを開けて降りてきたのは、刑事弁護士のミック・ハラーだ。

『評決のとき』で社会の不正に敢然と立ち向かう熱血青年を演じたマシュー・マコノヒーが、久々に弁護士役を務める。しかし、今度は真摯(しんし)に正義を追い求めるタイプではない。法律の穴を突き、嘘も方便とばかりに巧みな弁論術で依頼人の刑の軽減を図る。だましや違法スレスレの行為も辞さない。犯人が実際に罪を犯したかどうかには関心がなく、司法取引を駆使して刑期を短縮させ、それによって報酬を受け取ることが目的だ。

リンカーン・タウンカーの後部座席を事務所代わりにし、裁判所を駆けめぐって犯罪者の弁護にあたる。広いロサンゼルス管区をカバーするためには、合理的な方法なのだ。ちゃんとした事務所を持つ余裕もない。運転手だって、元依頼人が弁護報酬を払えなかったので、代わりに働かせているのだ。タウンカーといえば高級車リンカーンのフラッグシップだが、その後部座席をオフィスにしているからといって、金があるわけではない。

(C)2010 LAKESHORE ENTERTAINMENT GROUP LLC And LIONS GATE FILMS INC. ALL RIGHTS RESERVED.
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第31回:高級車の後部座席は、法律事務所に適しているか? − 『リンカーン弁護士』の画像
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鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。