東京モーターショー:メルセデスベンツ

2001.11.02 自動車ニュース
 

東京モーターショー:メルセデスベンツ

■メルセデスベンツ
「一晩酒が飲める」……F400/ATTS(コンセプトカー)



 

S2000の予告編みたいなクルマそのものは、映像見ると実走可のようだし、またワールドプレミアじゃないかという気もするがどうでもいい。「オオ!」なのは、前輪に組み込まれたATTSことアクティブ・タイヤ・ティルト・システム。ホイール内側にある油圧機構でもってタイヤの対地キャンバー角を変える仕掛けだ。コーナリング時にネガキャン、いわゆるハの字の傾きを強くすることで、横Gの限界は最大30%も向上するらしい。それ用に左右非対称の断面形状(およびトレッドパターン)をもったタイヤをピレリに作らせたりもしていた。
最近のタイヤはますます偏平になっており、したがって当然ながら対地キャンバー角の変化にともなうグリップの変化特性もますますピーキーになっている。その一方で、サスペンションのアーム長を豊かに確保するのはますますツラい状況になってきている。なんとかせねばイカン状況で、こういうモノを出してきた。CLに採用のアクティブサスペンションABC(アクティブボディコントロール)に続いて、やはり優れてベンツらしいアイデア物件である。あるいは、イロイロと夢が拡がるテクノロジーでもある。クルマそのものの感触はいささかウス味になってしまったが、こういうところでは依然として健在。

タイヤの対地キャンバー角を変える「ATTS」搭載のコンセプトカー「F400」

 

素人考えだが、ATTS前提ならたとえばF1マシンのような長いアームを使わずとも優れたスポーツカー用サスペンションが作れるとか(リクツでいったらモーガンみたいなスライディング・ピラーを復活させるのもアリだろう)。あるいは、オフロード車用サスペンションのひとつの理想であるリジッドアクスルの動きをよりバネ下の軽い左右独立のサス形式でも実現できるとか。これまで、豊かなホイールトラベルと厳密なタイヤ対地キャンバー角管理は(独立懸架の場合)基本的に二律背反の関係にあった。で、ATTSはそこを変えてしまう。

 



 

タイヤの対地キャンバー角を“サスペンション・ストロークの奴隷”の立場から解放し、さらにクルマのパッケージングそのものに関する自由度をも大幅に広げるポテンシャルをもったATTS。このネタひとつをツマミにして、私はたっぷり一晩酒が飲めました。あとほかに、F400で忘れていけないのは“Xバイ・ワイヤ”すなわち各種インターフェイスにおける純機械的連結をのきなみなくしてしまうテクノロジー。スロットルではすでに完全なカタチで実現しているモノだし、またブレーキでも半分は達成されている(ESPがそう)。で、さらにたとえばステアリング系にも拡がるわけだ。資料読んでないけど。そうなると、左右前輪(にかぎらないか)の舵角に関して電子制御がガンガン介入できるようになる。右と左で操舵量を変えたり、あるいは左コーナーで左へ操舵する前に一瞬ちょっとだけ右へきってスルドいターンインを実現させたり(これだけだったら日産のスーパーHICASがすでにやっている)、さらには正〜逆のアッカーマン特性なんかも自由自在。いささか長くなりました。とにかく、クルマが“ブツ切れの電車”になってしまう前にまだまだデカい未開地があるということで。

(森 慶太)

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