2002年デトロイトショー速報!(その2)

2002.01.09 自動車ニュース

2002年デトロイトショー速報!(その2)

2002年1月6日からはじまったデトロイトショーを、『webCG』エグゼクティブディレクター大川 悠が、現地から報告!! その2回目。

朝8時、ホテルから会場に向かうピープルムーバー(ユリカモメみたいな無人モノレール)の中から、やっと夜が明けるのが見えた。東の空がブルーに染まり始める。ということは今日は、ひょっとしたら晴れるかも知れない。気温は零下4度ぐらいで、これでもいつもより暖かい。こうやって2日目は始まった。

■オリジナルに似すぎているGT40

まず駆けつけたのはフォードのブース。昨年開催された第35回東京モーターショーで同社のデザイン担当副社長J・メイズが言っていたように、伝説のGT40の現代版がフォードの今年度(まだ始まったばかりだが)最重要コンセプトカーとして昨晩発表されたのだ(私は別の用事に追われてまだ見ていなかった)。

新「GT40」はイエローに黒ストライプという懐かしいカラーで置かれていた。一瞬オリジナルかと勘違いした。だが、より鋭角的なフロントフェンダーや現代的なヘッドランプは、明らかに新しいモデルであることを示していた。
このコンセプトカーはオリジナルのアルミハニカムに代わってアルミのスペースフレームを持つ。ボディはオリジナルより1フィート半(45cm)長く、4インチ(10.1cm)高いというが、それでも小さく見えるのは、あの時代のスポーツレーシングカーがいかにコンパクトだったかの証拠だろう。

ミドに積まれるのは、最近のフォード・モデュラーエンジンたる5.4リッターのV8。このクルマの場合4バルブヘッドを持ち、500psの最高出力を発生、6段MTと組み合わされる。
現役時代のGT40より確実に速く、ルマンのミュルサンヌで楽々200マイル(320km/h)を超えるというこのクルマ、過去の当デトロイトショーで発表された「Tバード」や「フォーティナイン」と同様に、生産化を射程に置いて開発されているという。
それにしてもあまりにもオリジナルに近すぎて、これでは「フォードは過去の遺産で食っている」と言われても仕方がないだろう。

フォードのスタンドで注目されたもう1台のコンセプトカーは、数日前、1月3日のロスアンジェルスショーで発表された「コンティネンタル」。フォード・フォーティナインや去年のニューヨークショーに現れた「コンティネンタル・マーク」のコンセプトカーにも似た、独特のフラッシュサイドとクーペ風ルーフをもち、ピラーレスの観音開きドアが特徴。今後のリンカーンシリーズのデザインイメージを示すというこのクルマ、いかにもメイズらしく古典的プロファイルを大切にしていて、そこが魅力的だ。

■伝統を受け継いだレンジローバーはBMWのV8つき

2日目、朝早くベールを脱いだのは、新型レンジローバー。このクルマは数ヶ月前に外観写真や概要が発表された。うまく伝統のイメージを残しつつ、時代に合わせて生まれ変わっている。ボディはやや大型化され、特にヘッドランプが新しい印象を与えるが、全体型は明らかに“SUVのキング”の伝統どおり。日本で使うにはやや大きすぎる感じだったが、ミラーを含めた全幅は、むしろ現行モデルより狭くなるという。室内は完全に新しいし、足まわりも一新された。
だが一番変化を受けたのがエンジンで、同じV8ながら4.4リッターのそれはBMWオリジン。つまりBMW時代に開発されたもので、282psを出す。トランスミッションも新しい5ATだ。

■ヨーロッパのコンセプトカー群

ともかくデトロイトはプレスが多く、コンファレンスは人の群。その中でヨーロッパ製コンセプトカーがいくつか登場した。
前日公開されたのが「サーブ93-X」。東京モーターショーで発表された「9-X」の発展型に見える3ドアクーペだが、実はこれは重要なショーカー。フロントの造形やインテリア、リアのグラスゲートなど、次世代の「サーブ93シリーズ」を先取りしているという。
新しい93は、今年中にセダンから登場する予定で、続いてエステートはもちろん、1年遅れぐらいで今回のコンセプトカーのようなクーペも加えられるかも知れない。というより「これを実際に売ってくれと、トップに頼み込んでいるんです」とデザイナーのアンソニー・ローは語っていた。

メルセデスからはEクラスの新型発表の噂が流れ、あわてて記者会見場に行ったら、これまた現代のコンセプトカーの流行である「クロス」の一つだった。
ヴィジョンGSTと呼ばれるこれは、将来の6座ツアラーのためのスタディという。Cのスポーツクーペをストレッチしたようなスポーツワゴン風ボディに「2-2-2」の6座を備える。

フォルクスワーゲンのコンセプトカーはもっとSUV風というかマッドマックス調。「マゼラン」という名前が示すとおり、明日の世界を旅するためのクルマという。メーカー自らSUVとMPV、そしてエステートカーとの“クロスオーバー”と称していた。W8エンジンで4WDと、誰もが予想できる構成。去年のマイクロバスの方が魅力的だったとは、大半のプレスの意見だ。

■AUTOnomy

もちろん皆、派手な格好のコンセプトカーだけで不況の憂さ晴らしをしているわけではない。当然FC(燃料電池)を主体とした、新世代のクルマに向けての真面目な姿勢はあちこちで見られる。

GMはこの日、「AUTOnomy(オトノミー)」と呼ばれるFCのコンセプトカーを登場させた。
オトノミーは単にFCであるだけではなく、燃料電池の利点をフルに生かして、まったく新しいクルマの概念に挑戦したことに意味がある。
基本的にスタックをうまくつなげたプラットフォームとホイール・イン・モーターからなる4輪付きボードみたいな形がベース。これにドライブ・バイ・ワイヤのシステムを加えれば、どんな位置でも操縦できるし、シングルシーターから7人乗りのワゴンまで、どんなボディも載せられる。ショーに出てきたのはシャシーとスポーツクーペだった。同じベースの上に、幾多の新しいタイプのクルマを構築できることに意味がある。
FCになるからには既存のクルマの概念から解放されるべきだと考えていた私としては、こういうクルマが出てきたのはうれしい。

■クライスラーのコンセプトカー

前日の「パシフィカ」だけでは、例年このショーのスタイルリーダーとなってきたクライスラーらしくない。去年みたいにおどろおどろしいコンセプトカーが出ないのかと思っていたら、午後のコンファレンスで3台発表された。

2台はジープのバリエーションで、東京ショーに出たモデルを発展させたような「ウィリス2」と、ラリーカーを狙った「コンパス」。いかにジープがダイムラーに対するクライスラー側の切り札か、それがよく理解できる。

もう1台は、「ダッヂ・レイザー」なるスポーツクーペ。去年出して成功し、生産モデルにまでなった「クロスファイア」の弟分といった感じで、狙うのは24歳以下の若者という。250psの2.4リッターターボを積む。やたらとステージに、いわゆるスケートボード(アメリカではスクーター)の若者が走り回ると思っていたら、レイザーはそのスクーターの会社名。こういうものに乗る層が自動車の消費者になったときに、「はい、どうぞ!」と待ちかまえているのがこのクルマ、というわけだ。
ということは、相変わらずアメリカは、クルマに夢を見ている若者が多いということだ、そう理解しながら、重いプレスキットを抱えてホテルに戻った。

それにしても、ああ疲れた!

(文と写真=大川 悠)



















オトノミーにクーペボディをのせたコンセプトカー。





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