欧州も大きな曲がり角にさしかかった(2002ジュネーブショー速報)
2002.03.07 自動車ニュース
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欧州も大きな曲がり角にさしかかった(2002ジュネーブショー速報)
2002年3月7日、スイスのジュネーブで行われる自動車ショー、いわゆる「ジュネーブショー」が開幕した。webCGエグゼクティブディレクター大川悠が、ショー会場から速報をお届けする。
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■変化の中のクルマたち
世界の自動車状況を一度に見たかったら、最も適しているのが、スイスで開催される春の「ジュネーブショー」だ。いつも言われるようにスイスはニュートラルな国だから、世界中すべての国のメーカーが、名目上は平等に集められる。
“名目上”と書いたのはその通りで、やはりヨーロッパ勢が強い。しかし、昔からスイスにヨーロッパ本部を置いていた関係で、いわゆる“ビッグスリー”(GM、フォード、クライスラー)も結構頑張る。無論、北欧に続いてスイスからヨーロッパに進出した日本メーカーも、かなり懸命になる。というわけで、その年の流れを知りたかったらジュネーブに行くに限る。
今年のショーはどうだったかというと、1月にアメリカで開催された「デトロイトショー」ほどの派手さはなかった、というのが個人的な感想である。
生産車の新型は、デカイものではフォルクスワーゲングループ(VW)の旗艦「フェートン」だったが、ダイムラークライスラーのトップに立つニューブランド、「マイバッハ」はブランドの誕生を高らかに謳ったものの、すでに写真を公開している実車の方は姿を見せなかった。
ニューモデルはいくつかあったが、やはり最近のショーの傾向に漏れず、主人公は一種の“クロス”、つまりミニバンやSUV、もしくはその中間など、古典的な意味でも乗用車は相変わらず少なかった。
ということは、そう簡単に自動車のコンセプトは後戻りできなくなったということなのだろう。
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■二つの実直な乗用車
それでも古典的な乗用車を語るなら、その代表がオペル「ベクトラ」と「マツダ6」だろう。新型ベクトラは、ゼネラルモーターズ(GM)の新しいCDプラットフォーム第一弾。セダンと、2002年夏に発売が予定される5ドアハッチバックのGTSから成る。ボディはライバルのフォード「モンデオ」と同じくらい大きくなった。エンジンは4種類(うち2種類はディーゼル)の4気筒、GTSは3.2リッターV6を搭載し、ATは5段になった。シャシーとボディは相当真面目に作られているから、今後が楽しみだ。というのも、ここから新しいサーブや、GMの新型モデルが生み出されるからである。
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これに真っ向から対抗するのがマツダ6。つまり、2001年10月に開催された「第35回東京モーターショー」で公開された「アテンザ」のヨーロッパ版である。モンデオを開発したフォードからの情報バックアップも受けて、ベクトラをメインターゲットに生まれた。
セダン、ハッチ、ワゴンと3種あるボディは、4.7m前後の全長に1.78mの全幅と、これまたモンデオ、ベクトラに近い。なんと言っても走りが魅力、とはマツダの弁。エンジンは新しい4気筒ツインカムで、1.8リッター、2.0リッターに加えて2.3リッターもある。これはフォードグループの他モデルでも使われるはずだ。さらに2リッターのコモンレールディーゼルエンジンもある。4段ATなのがちょっと残念。すでに見慣れてしまったせいか、ベクトラに比べて少し保守的に見えるが、ヨーロッパではもともとイメージがいいから、結構売れるだろう。
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ダイムラークライスラーのフラッグシップといえる、“超”高級車マイバッハは出展されなかったから、大型セダンの主役はVWフェートン。実はショー開催前夜、ジュネーブのホテルに着いたとき、すでにホテル前に1台停まっているのを目撃していた。しかし、すぐには気がつかないほど普通の形をしている。ややコンサバティブでエバリがきかないが、室内は丁寧に作られている。全長は5055mm、幅1903mm、全高1450mmで、VWとしては過去最大のボディサイズ。エンジンは3.2リッターV6と6リッターW12。6リッターモデルは「4MOTION」と呼ばれる4WDで、3.2リッターモデルはFF(前輪駆動)。「メルセデスよりもアウディA8あたりから客を狙いたい」と語っていたVW関係者の気持ちはよく分かる。なんと言ってもA8はクワトロ(4WD)が武器だから。
モデル追加やマイナーチェンジは多いが、この面で注目すべきはジャガーだ。「Sタイプ」は不評のフォード製ATを新型6段ATに換えたし、インテリアも「Xタイプ」や「XJ」と同じテーマになった。2.5リッターV6エンジンが追加されたのも新しい。ブラッセルで発表されたXのFWD(前輪駆動)は、テールに排気量を示すエンブレムが無い以外は4WDと区別できない。
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■ついにヨーロッパもクロスの時代
今やミニバンはヨーロッパでも大ブーム。このショーでも花形的存在だった。中でも注目されたのは,PSA(プジョーシトロエングループ)にランチアが加わって共同開発された、一連のモノスペース。プジョーは「807」、シトロエンは「C8」、そしてランチアは「フェドラ」と称される。基本的にシェルやドア、ルーフ、テールゲートを共用し、フロントエンドだけ換えて個性を出しているが、ランチア「テシス」に似るノーズを持ったフェドラに、リポーターはもっとも惹かれた。エンジンは2リッター、2.2リッター、3リッターなど各車で微妙に異なる。いずれも非常に快適そうな独立した6座を持つ。
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またプジョーは「RC」なる、魅力的な2+2クーペのコンセプトカーも出品した。エンジンは変速機ごとミドシップに横置きだが、「RCスペード」はガソリンの2リッターエンジンなのに対して、「RCダイアモンド」は2.2リッターディーゼルを持つというのが面白い。2.8mのホイールベースに全長×全幅×全高=4.3m×1.8m×1.15mというサイズだから、運動性能はかなりいいだろう。
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フェラーリ「550」から発展した「575Mマラネロ」は目立つ存在だ。全面的に換えられたフロントエンドやインテリアでイメージチェンジをはかったが、やはり見物は、250cc排気量が拡大された5750ccのV12。515psと60kgmを発生する。
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それよりサイズはだいぶ小さくなるが、BMWはコンセプトカー「CS1」を見せた。これはコンパクトな4座カブリオレの習作というべきもので、7シリーズにも似た次世代BMWの顔を持つ。
この他、フォードは「フィエスタ」ベースのミニバン「フュージョン」を、マツダはそれのライバルともいうべき「MXスポートラナバウト」を、さらにはオペルは「ヴィータ」をベースに、オペルのチーフデザイナー児玉英雄氏が手がけたコンセプトカー「オペルM」を展示、クロスオーバーへの流れが、アメリカに続いてヨーロッパでも、もはや止められないものであることを立証していた。
(文と写真=webCG大川悠)
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