ホンダの燃料電池車「FCX-V4」に試乗

2002.04.06 自動車ニュース
 

ホンダの燃料電池車「FCX-V4」に試乗

2002年4月5日、本田技研工業は、現在開発中の燃料電池車「FCX-V4」のプレス向け試乗会を、東京は青山にある本田技研工業本社周辺で行った。



 

■量産化に向けた激しい競争

「燃料電池車両の開発が世界の自動車メーカーの命運を握っている」。そんな話題も、最近では“口プロレス”ネタとしては新鮮味が薄れているかもしれない。
それはともかく、日本では、トヨタとホンダが2001年から先を争って最新型の燃料電池車の公道試験を実施していることは周知のとおり。
2002年2月25日、ホンダは、走行性能/衝突安全性能を高めたという燃料電池車の最新試作モデル「FCX-V4」で、国土交通省の大臣認定を取得、3月1日から公道走行試験を開始すると発表した。そして4月5日、早くもメディア向けに試乗会を開催したのである。
1台当たり億を超える(!)ともいわれるコストが掛かった最新スペックの燃料電池車でも、走行可能なら即試乗会を開くという対応の素早さ。研究開発で他の自動車メーカーに後れをとっていない事実をアピールしようとするホンダの意図が読み取れるし、また燃料電池車の量産化に向けた競争が激しさを増していることの証左ともいえる。



 

■現実に対応するためのアップグレード

従来の「FCX-V3」からのバージョンアップ版である「FCX-V4」は、燃料電池の性能テストの色合いが濃かった旧型に対して、走行性能を含めて細部におよぶ煮詰めが実施されている。

「V3」では、100リッターの圧縮水素貯蔵用タンク1本で水素を供給する方式だったが、「V4」では貯蔵圧を250気圧から350気圧にアップした上で小型化を図り、2本のタンクで合計137リッターとした。これにより、航続距離をこれまでの180kmから315kmに伸ばすことに成功した。
また、燃料タンクの床下への移動と乗り心地改善のために、足まわりを(もとを辿れば「ロゴ」まで遡ることができる)従来の3リンクリジッドから、現行アコード用マルチリンクに格上げしたことにも注目したい。
燃料電池システムの核となる燃料電池(バラード社製)に関しても、62kWから78kWへと出力アップが図られ、最高速度は130km/hから140km/hに引き上げられた。


燃料電池とは、水素と酸素を結合させて電気を取り出すシステムのこと。「FCX-V4」は、水素を気体のままクルマに積む形式を採用した。4人乗りボディを引っ張るのは、交流同期モーターで、最高出力60kW(82ps)、最大トルク24.3kgmを発生する。
 

■違和感のなさ、航続距離のギャップ

「V4」の見た目の変化は、フロント部分のラジエターの容量増加と、前後35mph(約55km/h)のフルラップ衝突試験をクリアするために、前後バンパーを大型化したことぐらい。けれども乗った印象は、また一歩“普通の乗用車”に近づいていたといった感じだった。

ブレーキペダルの踏み具合に対して、リニアに効きが増すように設定された回生ブレーキのフィーリングもそうだが、なにより乗り心地の“電気自動車らしさ”が払拭されていたのだ。すなわち従来型では、床下に埋め込まれた燃料電池による重量増加(正式な数値は公表されず)をカバーするために、足まわりがかなり固められていた。このため、微妙な路面状況の変化に対して真っ正直に反応してしまう落ち着きのなさが顕著だった。この燃料電池車特有ともいえる特徴が、新型では、足まわりの見直しが功を奏し、目地段差などを軽くいなすような懐の深い振る舞いを見せるようになっていた。言い換えれば、“内燃機関車”と較べて、あら探しする意地の悪い楽しみが減ったともいえるのだが(?)。

それほどまでに洗練の度合いが増したのなら、日光いろは坂でテストを実施したという、ワインディングロードでの走りっぷりも試してみたいというような“積極的な”気分にもなる。だが開発エンジニアによれば、水素タンクを空にする腹づもりでいても、東名高速で東京−箱根を往復するとなると、現状では無理があるとのこと。「公称の半分」という電気自動車で半ば常識化している航続距離の短さは、克服されていないようだ。

燃料電池車を2003年には実用化したいというホンダ。しかし量産化されるのは、2010年あたりともいわれる。心おきなく走らせられることは先になるが、まずはトヨタよりも後か先か?などという下世話な話は抜きにして、見た目も中身も我々の想像をはるかに超える「未来のクルマ」を、一刻も早く見たいものだ。

(文=CG編集部 岩尾信哉/写真=NAVI編集部 佐藤健)

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