「CARTもてぎ」にみる、女性とレースの関係

2002.04.30 自動車ニュース

「CARTもてぎ」にみる、女性とレースの関係

2002年4月27日に行われたCART第3戦「ブリヂストン・ポテンザ500」。3日間あわせて10万人を超える観客が、栃木県のツインリンクもてぎに集結した。
パドックや観客席を見渡し、女性ファンが多いことに気がついたwebCG記者は、彼女たちの“実態”を調査。彼女たちを通し、CARTレース独特の魅力を探ってみた。


優勝したブルーノ・ジュンケイラ選手を囲んで。左から、轟木秋佳さん、清水玲子さん、そして今回コーディネーターをお願いした、山田由喜恵さん。

■北欧の貴公子に恋をして・・・

出版社に勤務する清水玲子さんと、同僚の轟木秋佳さんにとっては、初めてのCART体験。もともとF1が好きで、海外レースにまで足を運ぶくらい熱心なレースファンである彼女たちの目に、CARTのオーヴァルレースはどう映ったのか?

そもそもF1を見始めるきっかけは何だったのか。「お仕事を一緒にしている方が、F1の話をしてくれて、なんとなくテレビを見ているうちに、いろいろと興味がわいてきたんです」(清水さん)。
急に休みがとれた2001年5月、レースのレの字も知らない轟木さんを強引に誘い、スペインGP観戦に出かけた。F1なんか知らないし、清水さんの口ぐるまに乗せられてしまった、と思った轟木さんだったが、間近でGPを観て、F1の魅力にとりつかれた。その後ふたりは、ベルギーGP、鈴鹿の日本GPと3戦を観戦。今では毎戦テレビ中継を欠かさないばかりか、レース雑誌を定期購読するほどになった。
F1の何に魅力を感じるのか。「ワタシ、キミ(ライコネン)が大好きなんです」という轟木さんの目は輝きに満ちていた。清水さんは、ミカ・ハッキネンのファン。携帯電話の着メロは、以前F1中継のエンディングソングだったものだ。
なるほど、彼女たちのお目当ては、(カッコイイ)ドライバーということだったか。


中野信治選手のまわりには、いつも人だかり(ほとんど女性)ができた。写真は、レース後に行われた、ファンクラブメンバーへのサービス。

■ゼッタイにサーキットで観るべき

ところで、CART初体験はどうでした?「オーヴァルレースは、ゼッタイにサーキットで観るべきですね」と興奮気味に語る轟木さん。ロードコースでは、自分のいる一角しか観ることはできないが、オーヴァルはコース全体が見渡せる。しかも周回数が多いから、「お目当てのドライバーを沢山観られる」というわけだ。
お目当てのドライバーは見つかりました? 「2位に入ったアレックス・タグリアーニはカッコいいですよね。それから優勝したブルーノ・ジュンケイラはカワイイ」。
マシンについてはどう思いました? 「カタチもカラーリングも、F1よりもカワイイ」。なお“カワイイ”とは、かたちや配色、モチーフとなるものがポップなこと、などを指すというが、総じて大変好意的に受け止めたもののことを言うらしい。
彼女たちは、初めてのCARTレースに良い印象をもったようだ。また観に来たいですか、との問いに、「もちろん! F1以外にも楽しみが増えて、すごくよかったです」と満足げに語ってくれた。


美女に挟まれているのは、ホンダ・パフォーマンス・ディベロップメントの朝香充弘副社長。一番右が、日出智子さん、その隣が永谷文子さん。

■ひとが織り成すドラマが好き

決勝日の夕方。レースはとっくに終わり、観客の大半はもてぎを後にしたというのに、ふたりの女性がピット裏に残っていた。彼女たちは、チーム関係者となにやら親しげに話をしている。そして、たまたま通りかかった、ホンダ・パフォーマンス・ディベロップメントの朝香充弘副社長とも、あいさつを交わしている。見かけは一般の観客と同じだが、どうも様子が違う。
このふたり、日出智子さんと、永谷文子さんは、いわば“筋金入り”のCARTファン。都内の旅行代理店に勤める「同僚同士」というのは、清水さん、轟木さんと同じ。本場アメリカのレースにちょくちょく出かけているのも似ている。
F1のジャック・ヴィルヌーヴに興味を持ったのが、CARTを知るきっかけ。ヴィルヌーヴがF1に来る前、アメリカのCARTシリーズというのに出ていたらしい・・・ということでいろいろ調べていくうちに、「すっかりハマってしまいました」(日出さん)。
彼女たちは、もてぎに加え、ナザレスなど本場アメリカのCARTレースを体験している。度々サーキットに顔を出している間に、チームや関係者と親しくなった。
「メカニックとか、ドライバーとか、そういう人たちの“ドラマ”がたまらく面白いんですね」。




■ファンを大切にする文化

アメリカで生まれたCARTの魅力は、ファンを大切にすることだ。パドックパスさえ手に入れば、ドライバーやメカニック、マシンを限りなく近くで見ることができる。そしてドライバーやスタッフとも、比較的気軽にコミュニケーションがとれる。現にもてぎのパドックでも、ドライバーを待つファンが大勢いて、ドライバーはサインや写真撮影にちゃんと応じてくれていた。閉鎖的でスノッブなF1とは、大きく違う。
日出さんや永谷さんが、これだけCARTにのめりこむことができたのも、こういうCARTならではの「文化」があったからだ。
ちなみに、日出さんはクリスチアーノ・ダ・マッタ、永谷さんはパトリック・カーペンティアとオリオール・セルビアのファン。取材中、カーペンティアの所属するプレイヤーズ/フォーサイスレーシングのスタッフに、「次はどこで会えるのかしら?」と聞かれ、「たぶんモントリオールね」と答えていた彼女たちを見て、どこか羨ましく思ってしまった。


もちろん、男性ファンだって健在。写真のふたりは、新潟から駆けつけたポール・トレーシー応援団。「やんちゃなところが好き」。

■女がレースを愛するとき

モータースポーツ好きの女性とは、いったいどんなひとなのか? 今回の取材を思いついたのは、27歳男性(独身)である筆者の素朴な疑問からだった。
レース=男のもの、という先入観がなかったわけではない。千分の一秒を争う壮絶な戦い、最新技術の結晶であるマシンなど、クサイ言い方をすれば、“男のロマン”と直結するモータースポーツを、女性はどう理解しているのか、正直それは謎だった。
取材を経て、彼女たちは筆者に重要なことを教えてくれた。それは「ひとへの興味」。彼女たちがレースを観るのは、“ひと”が見たいから。ドライバーやチームスタッフ、エンジニア、メカニックらがいなければ、レースは成り立たない。そういう、(極度に)ひとにフォーカスしたレースの楽しみ方もあるということを、再認識した。
CART対IRL、レギュレーション問題、エンジンサプライヤーの撤退、高騰する費用・・・。レース界を取り巻く政治的な問題にばかり目を向けていないで、もっと楽しめば? そういうメッセージをもらったような気がした。

(webCG 有吉)

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