F1オーストリアGP、シューマッハー優勝、佐藤大クラッシュ

2002.05.13 自動車ニュース

F1オーストリアGP、シューマッハー優勝、佐藤大クラッシュ

F1世界選手権第6戦オーストリアGP決勝が、2002年5月12日、オーストリアのA1リンク(4.321km)を71周して行われた。優勝は、ミハエル・シューマッハー。今シーズン5勝目、通算58勝目をあげた。
レースは、2回のセーフティカーランを挟みながら、フェラーリの2台が独走。リードし続けたのは、ポールポジションのルーベンス・バリケロだったが、最終ラップのゴールライン直前、ミハエル・シューマッハーがトップを明け渡されるかっこうで勝利を手にした。3位はファン・パブロ・モントーヤ(ウィリアムズBMW)だった。
28周目、ニック・ハイドフェルドのザウバー・ペトロナスにヒットされ、大クラッシュした佐藤琢磨。一時は緊迫した空気が流れたが、大きな怪我はなかったようだ。チームメイトのジャンカルロ・フィジケラ(写真)は5位に入賞、今シーズン初ポイントを、チーム、そしてホンダエンジンにもたらした。

■2ストップのフェラーリ、異次元の速さ

ポールポジションのバリケロ、3位スタートのシューマッハーは、早々に1-2体制を築くと、ファステストラップを連発しながら、後続との距離を瞬く間に広げていった。
1回のピットストップが一般的なA1リンクにあって、フェラーリは2ストップ作戦を敢行。ガソリン積載量が少ないため当然ペースは速くなるが、それでも速さの次元が違った。9周を終えた時点で、3位ラルフ・シューマッハーのウィリアムズBMWとの差は15秒。以後、12周目で20秒、20周目には30秒まで開いていった。

23周目、オリヴィエ・パニスのBARホンダが、メインストレートで炎をあげながらタイヤをロックさせスピン。ドライバーが必死にマシンをコントロールしたおかげでウォールへのヒットは免れたが、コース真中に止まってしまい、セーフティカーが導入された。
このタイミングを逃さんと、フェラーリ2台がすかさずピットイン。1位バリケロがタイヤ交換、給油を行っている後ろで、2位シューマッハーが待つかっこうで作業が進んだ。

■すさまじいクラッシュ

28周目、1位バリケロ、2位ラルフ、3位ミハエル、4位モントーヤというオーダーで再スタートが切られた。
再スタート直後の第2コーナー手前、5位走行中のハイドフェルドがバランスを崩し、コントロール不能に陥った。ザウバーのマシンは、コーナーを曲がったばかりのモントーヤをかすめ、佐藤琢磨のジョーダン・ホンダに激しくヒット。両車は砂煙を上げながらグラベルに止まった。再びセーフティカーの出番となった。

コースマーシャルに抱えられてマシンを出たハイドフェルドに対し、佐藤は自力で出られない。メディカルクルーが駆けつけ、佐藤の救出を始めた。A1リンクの牧歌的な景色をバックに、一時緊迫した空気が流れた。佐藤は担架に載せられ、救急車でメディカルセンターに運ばれた。一報によると、骨折など大きな怪我はなかったが、さらなる検査のため、ヘリコプターでグラーツ大学病院へ搬送された、という。ザウバーのリア、そして佐藤の黄色いジョーダンの右側は大破状態。とにかく命に別状がなかったことは幸いだった。

■後味悪いエンディング

38周目に再々スタート。トップは引き続きバリケロ、2位ラルフ、3位ミハエル、4位モントーヤ、5位デイヴィッド・クルタードのマクラーレン・メルセデス、6位にジャック・ヴィルヌーヴのBARホンダ。
再々スタートから10周の後、ラルフがこの日最初で最後のピットイン、モントーヤはその4周後に給油のみを行った。ミシュラン勢でただひとりハードタイヤを選んだモントーヤは、1セットでレースを走り切れると踏んだ。そして、ラルフの前、3位でコースに復帰した。
後半もフェラーリ優勢は明らか。61、62周目にそれぞれ2度目のピットインを行った後も、トップ バリケロ、2位シューマッハーの1-2体制を保ち続けた。最後の数十メートルまでは・・・。
バリケロの通算2勝目を阻んだのは、メカニカルトラブルでもなければ、クラッシュでもなかった。自身が所属するチームからの「命令」―シューマッハーを勝たせろという―だった。

1位ミハエル・シューマッハー、2位ルーベンス・バリケロを、観客はブーイングで迎えた。気持ちを隠そうとし、わざとおどけてみせるバリケロ。顔を強張らせ、表彰台の中央の座とトロフィーをバリケロに譲ったシューマッハー。後味の悪いエンディングだ。

モントーヤ、ラルフと、ウィリアムズが3-4フィニッシュ。5位はジョーダンのフィジケラ。念願の(否、遅すぎた?)初ポイント2点を獲得した。6位クルタードが、最後の1点を得た。ルノーのジェンソン・バトンを挟み、ミカ・サロとアラン・マクニッシュのトヨタ勢が8、9位でゴールした。

■悲劇から茶番

上位3名による記者会見にも、気まずい雰囲気が流れていた。表彰台同様、優勝者が座る中央の席には、2位バリケロが座った。
レース前、2004年までフェラーリのシートが約束されたバリケロは、チームから勝利をミハエルに譲るよう頼まれたと語った。「(2年契約を延長したことだし)これからもっと勝てるだろうと思うから」、彼はチームの言うことに従ったのだという。

「これはチームの決断だった」とは、怖い顔をしたシューマッハーの弁。チームオーダーの発令は、最後の最後まで知らずじまいだったという。「正直、それほど嬉しくはないんだ」。

この結果をみて、クルタードが優勝した、昨年の同GPを思い出す方も多いだろう。フェラーリは、2位バリケロに、3位シューマッハーを抜かせろというチームオーダーを発令。最終ラップの最終コーナーで順位逆転、レース後のバリケロの泣きそうな顔は、記憶に新しい。

この時も、チームオーダーを巡り論争が起こった。しかし、昨年と今年は状況がやや違う。昨年は、勝ったクルタードとシューマッハーは、タイトなチャンピオンシップ争いを繰り広げていた。オーストリアGP終了時で、ランキングトップのシューマッハーと、レースウィナーのクルタードのポイント差はわずか4点になっていた。チームオーダーの必要性は、高かったといえる。

しかし、今年のシューマッハーは他のドライバーに対し、圧倒的に優位なポジションにいる。オーストリアGP前までの5戦で既に4勝もしているのだから。

フェラーリの策士、ロス・ブラウンは説明する。「今日ルーベンスは勝った。しかし、フェラーリとして、そしてドライバーズチャンピオンシップの観点から、(チームオーダーを出す)決断をした」。

言うまでもなく、ドライバーズチャンピオンシップは、ドライバーに与えられるもの。チームには、コンストラクターズチャンピオンシップが用意されている。チームがドライバーのための栄冠に、どれほど影響力を及ぼせるのだろうか。議論は分かれるだろうが、ひとつだけハッキリしていることは、あまりに出過ぎたチームオーダーは、悲劇を通り越して、F1というスポーツを茶番にしてしまう、ということではないだろうか。観客のブーイングは、その不快感のあらわれに他ならない。

■6戦5勝、次はモナコへ

そのドライバーズチャンピオンシップは、1位シューマッハーが得点を54点にまで伸ばした。2位モントーヤ27点、3位ラルフ・シューマッハー23点、4位バリケロは、(たった)12点。
コンストラクターズでは、1位フェラーリ66点、ウィリアムズBMWが50点、マクラーレン・メルセデスが14点でこれを追う。

次戦はモナコGP。5月26日に決勝が行われる。

(文=webCG 有吉/写真=本田技研工業)

この記事の大きな画像を見るためには、画像ギャラリーをご覧ください。