フェラーリ「チームオーダー」の波紋

2002.05.14 自動車ニュース

フェラーリ「チームオーダー」の波紋

2002年5月12日に開催されたF1世界選手権第6戦オーストリアGP決勝。最終ラップで、フェラーリのルーベンス・バリケロが、トップの座をチームメイトのミハエル・シューマッハーに譲った出来事について、世界各国のメディア、ファンたちが不満をあらわにしている。

■FIAの事情聴取

F1をはじめとするモータースポーツを統括する国際自動車連盟(FIA)は、6月26日にパリで開かれる世界モータースポーツカウンシルに、フェラーリとそのドライバー、ミハエル・シューマッハーとルーベンス・バリケロを呼び、今回の件について事情聴取することを、5月13日に明らかにした。
聴取のポイントは、最終ラップで起きた首位逆転についてと、表彰台で、1位の座に2位バリケロ、2位の座に優勝したシューマッハーが起立したことについての2点となる。

FIA「Press Release - Austrian Grand Prix - Ferrari - 13.05」(PDF):
http://www.fia.com/homepage/13.05.02.pdf

■ティフォシもがっかり

英国のモータースポーツ雑誌「Autosport」のウェブ版によると、イタリアのスポーツ紙「Gazzetta dello Sport」のウェブサイトで行われたアンケートの結果、今回フェラーリの取ったチームオーダーに賛成する読者は、わずか6%しかいなかったという。

フェラーリの熱狂的なファン「ティフォシ」たちにも受け入れられなかった今回の作戦に対して、各チーム首脳も反感をもったようだ。ウィリアムズBMWのテクニカルディレクター、パトリック・ヘッドは、「我々は、モータースポーツと一般のひとたちに、ある責任をおっている。今回、それは(フェラーリによって)無視された」とコメント。F1という“スポーツ”にネガティブなイメージをもたらしたフェラーリの行動を非難した。
また3位に入賞したファン・パブロ・モントーヤは、「ミハエルは(チャンピオンシップで)20点以上もリードしていたし、マシンは他より1秒も速かったんだ。彼は何を恐れていたというんだい?」と、チームオーダーに疑問を投げかけた。

「Autosport」の編集部には、レース後、抗議の電話が殺到したという。モータースポーツが“文化”として定着している本場イギリスのファンにも、許しがたい出来事だったようだ。

■最古のチームが犯した罪

日本のメディアには、外電扱いとして、シューマッハー個人に非難が集まっているかのように伝える向きもあった。しかし、今回の首位逆転がチームオーダーによるということがハッキリしている以上、すべての責任をシューマッハー1人に押し付けるのには難がある。

F1が世界選手権として始まったのは、1950年5月13日。シルバーストーンを舞台に行われたイギリスGPが記念すべき第1戦だった。
その翌戦から、今にいたるまで参戦しているチームが、スクーデリア・フェラーリである。現存する最古のF1チームは、ミハエル・シューマッハーというチャンピオンドライバーを中心に、稀に見る近代的なチームへと生まれ変わった。
潤沢な資金を背景に、社長のルカ・ディ・モンテゼーモロ以下、シューマッハー、ジャン・トッド、ロス・ブラウンなど、一級の首脳陣を揃え、速く信頼性のあるマシンを造り上げた。フェラーリが現在最強のチームであることは疑いようもないが、同時に“チーム・シューマッハー”という、これまた稀に見る集権的な組織だともいえる。

最古のチームが犯した“罪”は、チームの最重要目標−シューマッハーをチャンピオンにする−を忠実に遂行するあまり、F1のスポーツ性、そしてスポーツとしてのF1を愛し、支える多くの人たちの存在を無視してしまったことである。

(webCG 有吉)

 

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