ホンダ、2003年よりIRL参戦、もてぎでレース開催

2002.05.24 自動車ニュース
 

ホンダ、2003年よりIRL参戦、もてぎでレース開催

アメリカンホンダモーター(AHM)は、2002年5月23日、2003年よりインディレーシングリーグ(IRL)へエンジンサプライヤーとして参戦することを発表。同日、本田技研工業は、栃木県「ツインリンクもてぎ」で同シリーズの1戦「Indy Japan」(仮称)を、2003年から3年間、開催することを明らかにした。
ホンダエンジンは過去8年にわたり、IRLのライバルシリーズ、CARTに参戦してきたが、2002年シーズンをもって撤退することを既に決めていた。

 

■イルモアと手を組んで

AHMのレース運営子会社、ホンダパフォーマンスディべロップメント(HPD)は、2003年シーズンに向けて、イルモアエンジニアリングと契約を締結。両社はテクニカルパートナーとして、IRL用3.5リッターV8エンジンを、設計、開発、製造する。
イルモアといえば、メルセデスベンツの名前でCARTやF1に携わった経験をもつ、レーシングエンジンのプロフェッショナル。HPDは、当面、新規開発エンジンを使用するチームに対してサポートを行う立場をとるが、将来的にはすべて自前でのぞみたいとしている。

■海外初レース

1996年から始まったIRLは、オーヴァル(楕円)コースでのみ争われるフォーミュラシリーズ。今年で86回を数える伝統のレース「インディアナポリス500」(通称インディ500)で有名だ。
本田技研工業が所有するツインリンクもてぎでは、1998年から5年間にわたり、CART公式戦が行われてきた。2003年からは、同じアメリカ生まれのIRLのレースに取って代わることとなる。もてぎでのレースは、同シリーズの海外初レース。
なお、レース開催日程などの詳細については発表されていない。

 

■CART対IRLの図式

CARTとIRLのライバル関係は、1995年まで遡ることができる。インディ500が開かれるインディアナポリスモータースピードウェイ(IMS)のトニー・ジョージ代表が、CARTに対して“宣戦布告”したのが事の発端だった。
ジョージ代表は、CARTの問題点を、アメリカ伝統のオーヴァルコースでのレースが年々少なくなっていること、北米を飛び越えて世界規模に拡大していること、コストが高騰していること、アメリカ人レーサーが少なくなってきていることなどと指摘。そこで、アメリカ本土のオーヴァルでのみ開かれ、そして最高峰にインディ500を据える、やや国粋主義的ともいえるIRLを発足させた。
袂を別ちあった両シリーズだが、CARTはビッグレース、インディ500を失い、IRLはドライバー、チームなどビッグネームを欠き、それぞれ痛手を負うはめとなった。

しかし、ここにきてIRLが優位に立ちつつある。
近年、CARTドライバーのインディ500(のみの)参戦が目立ってきていたが、2002年から、CARTの名門チーム、ペンスキーがIRLへ移籍。そのドライバー、2000-2001年のCARTチャンピオン、ジル・ド・フェランと、2001年インディ500優勝者、エリオ・カストロネベスがIRLで戦うことになった。そしてトヨタ自動車の米国法人、米国トヨタ自動車販売は、2003年よりペンスキーへエンジン供給を行うと発表した。
また、CARTもIRLへの歩み寄りを見せている。2003年、それまでの2.65リッターV8ターボを捨て、IRLと(形式上は)同じ3.5リッターのNAエンジンを導入するのだ。

第86回インディ500を週末に控えての今回のホンダ参戦発表は、IRLの勢いに拍車をかけるものとなった。

■ホンダの下した決断の意味とは

しかし、ホンダがどれだけIRL参戦に積極的だったかは、少し考える必要がある。
そもそもホンダがCARTからの撤退を決めた理由は、2003年から施行されるエンジン規則の改定(2.65リッターターボから3.5リッターNA化)をめぐり、CARTがエンジンマニュファクチャラーを軽視するような行動をとったから、というもの。撤退は2001年10月に表明されたが、「新しいエンジンを開発するには2年はかかる」とし、ホンダは2003年からの3.5リッターNA化を(結果的に)“蹴った”のだった。

ではなぜ、2003年から、CARTではなくIRLに、3.5リッターNAエンジンを、イルモアという第三者の手を借りてまで開発、製造、供給すると決めたのか。
その真意を探る上でキーを握るのが、「ツインリンクもてぎ」の存在ではなかろうか。本田技研工業の創業50周年記念事業として、オーヴァルとロードコースを組み合わせたツインリンクもてぎが、栃木県茂木町に完成したのは1998年。巨費を投じ建設した、日本初の本格的オーヴァルコースだったが、CARTの1戦が唯一といっていいほど出番は少なかった。

CART撤退を決めた手前、もてぎで引き続きレースを開催するには難があるし、かといっておいそれと復帰を宣言するわけにもいかない。これでは、オーヴァルコースの存続すら危うくなってしまう・・・。
うがった見方だが、ツインリンクもてぎを維持するために必要とされたこと、それがIRLのもてぎへの誘致であり、参戦だったのではないだろうか。

もちろんそれだけがIRL参戦の理由ではないはずだ。チャンピオンエンジンを生み出すHPDの技術陣、ノウハウを無視することもできないし、何よりインディ500で勝利をおさめることには大きな意味がある。F1でもライバルのトヨタと勝負したいという考えもあるだろう。しかし、それらだけでは解せない“何か”があるように思えてならないのだ。

いずれにしても、北米を中心とした2大フォーミュラをめぐる、日本の2大メーカーの動向に注目が集まっていることには、間違いない。

(webCG 有吉)

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