【ルマン24時間】金子浩久のルマン・リポート

2002.06.16 自動車ニュース

【ルマン24時間】金子浩久のルマン・リポート

第70回ルマン24時間レースも、スタートから20時間を過ぎた。サルトサーキットにつめている自動車ジャーナリスト、金子浩久が現地の様子をリポートする。

■チームゴウを襲ったトラブル
レースが4分の1に差し掛かった時点で5位を走っていたチームゴウのアウディR8にトラブル発生。冷却水漏れだった。ホースのジョイント部分から水が漏れているのを発見し、ピットで修復するのに30分以上掛かった。冷却水は予圧を掛けられているため、ホース、ラジエーターなどをすべてチェックし、漏れのないのを確かめた上でないと水を満たすことはできないのだ。
また加藤寛規がコーナーでハンドリング不調を訴えていたので、同時にステアリング系統のチェックを行い、さらに時間が費やされた。その後は着実に順位を上げている。今後の課題は、前を行くORECAのダッラーラ、ベントレーなどにどれだけ早く追いつき追い越せるかだろう。

■ベントレーのハンディキャップ
ベントレーだが、現在アウディ3台の後ろ、4位を走っている。トップのアウディ3台に迫らんという勢いだが、なかなか追いつけない状況がずっと続いている。クローズドボディをもつLMPGTPクラスのベントレーEXP Speed 8は、アウディR8などのLMP900クラスより2インチ幅の狭いタイヤを履かなければいけないというレギュレーションがキツい足かせになっていているようだ。タイヤが細い分、ブレーキングポイントは手前になるし、コーナリングスピードは落ちるし、コーナー脱出も鋭くなくなるし、ストレートスピードも伸びない。R8より400cc大きなエンジンとクローズドボディのアドバンテージは相殺された上にハンディキャップとなっているようだ。

■MGが見せた、LMP675クラスの強み
ストレートやコーナーで見ていて注目すべき速さを見せていたのが、MGだった。LMP900クラスよりも小型で軽いLMP675クラスに属する2台のMGは、ストレートでは大きなLMP900のスリップストリームに入り込んで最高速を稼ぎ出し、コーナーでは軽量をいかしてブレーキングポイントを奥に取って、前車を抜き去る。
もちろん、コーナリングスピードも軽い。とにかく走りが鋭い。“このまま行くと、3台のR8編隊に紛れ込んで、レースを掻き回すか”と思われたが、夜が明ける前にトランスミッショントラブルで1台リタイア。そして明るくなってから、もう1台がエンジンブローで戦列を去った。
LMP675クラスは小型軽量な分、エンジン排気量の大きさもそれに見合ったものに規制されている。しかしそれ以上のアドバンテージがどうやらありそうなことが、MGの速さによって証明された。机上のシミュレーションだけではなかなか計りかねないところに、ルマンの難しさがあり、面白さがある。LMP675クラスに力を入れ、着目するチームは今後増えるかもしれない。

■余裕のワークスアウディ
ワークスのアウディR8には、まったく“穴”がない。一定の(しかも予選並みに速い)ペースで周回を重ね、誰もその優位性を脅かすことができない。
速さだけではないR8の強さを示しているのは、ルーティン以外でのピットストップだ。No.2はたびたびタイヤバーストを引き起こしているが、その周こそペースを落としてピットに戻ってくるが、まるでルーティンでのタイヤ交換のように手際よく作業をこなし、ピットアウトしていく。
他のマシンならば、タイヤがバーストするとフェンダーやカウルの一部が引きちぎれたり、ホイールやシャシーを地面に擦りながら火花を散らして走る。見るからにタイヘンなことになるのだが、R8とアウディのチームクルーに慌てた様子は微塵もない。タイヤはホイールから外れず、マシンは傾かないで火花も見せずにピットに帰ってくる。
265周目頃にハーバートのタイヤがバーストした時には、上記のようにタイヤを交換、さらに足まわりを簡単にチェックすると同時に、別のメカニックはウインドスクリーンを交換する余裕まで見せていた。

■上り調子のチームゴウ
昨晩の冷却水系統トラブルで落とした順位を、チームゴウは着実に挽回している。一時は15位まで順位を落としてたが、279周で7位。6位280周のチームORECAダッラーラ・ジャッド、5位281周のORECAダッラーラと、僅差で追い詰めている。このペースアップは加藤、荒のドライビングによるところが大きく、ふたりはまったく疲れを見せていない。チームゴウのピットは上り調子の雰囲気に包まれており、一番疲れと眠気に襲われる時間帯なのだが、郷代表以下メンバーの表情は生き生きしている。

(リポート&写真=金子浩久)

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