【ルマン24時間】チームゴウ監督、郷和道にきく

2002.06.17 自動車ニュース

【ルマン24時間】チームゴウ監督、郷和道にきく

第70回ルマン24時間レースは、2002年6月16日に幕を閉じた。ワークスチームのアウディR8 3台が圧倒的な強さをみせた今回、もう1台のアウディも奮闘した。No.5、アウディスポーツ・ジャパン・チームゴウのR8だ。
プライベートチームとして、昨年型R8で7位完走をはたしたチームゴウ。そのオーナー兼監督の郷和道氏に、現地で取材を続けた自動車ジャーナリストの金子浩久が話をきいた。

■あのトラブルがなければ・・・
レース終了直後、チームゴウの直前5、6位でフィニッシュしたチームORECAの監督に「Good fight!」と健闘を称えられた郷和道監督。無精髭が生々しかったが、24時間の戦いを終えた満足感のようなものが言葉の端々にうかがえた。
「でも、あのラジエーター交換がなければねぇ」
ラジエーター交換とは、レース序盤の土曜日の晩に冷却水漏れがピットで発見されて、その漏洩箇所の特定と修理に費やされた30数分間のことだ。

あのピットインさえなければ、順位を落とすことなく、必然的に7位という結果よりも上位でゴールできたかもしれないという悔いがどうしても残る。
「ちょうどあの頃、コースの路面が汚れていて、ドライバーから“どこを走っても滑ってしまって、アクセルを踏み込めない”と訴えられていたのです。“ハンドリングもヘンだ”と聞いたので、パワーステアリングのオイルを注ぎ足している時、冷却水のジョイント部分から水が漏れているのを見つけたのです」

レースは難しい。特にルマン24時間のような長距離耐久レースの場合、トラブルが発生し、その処遇によって明暗が分かれる。
チームゴウのNo.5アウディにおきた冷却水漏れも、それによって順位を下げたことは確かだが、30数分掛けて水漏れ箇所を見つけ、処置できたからこそ完走できた、とも解釈できる。
ピットアウトを急ぐあまり、冷却水漏れに気づかないで走り出してしまっていたら、コース途中でエンジンを焼き付かせていただろう。そうしたら、すべてがパーだ。
「人間の欲って、限りないものですね。いろいろとトラブルに見舞われながらも、無事7位で完走した。でも、“あれさえなければ”って考えてしまう」
自嘲気味に話す郷監督だが、ルマンがそれほど甘くはないことは、過去の経験から彼が一番よく知っている。

しかし冷静に振り返ってみても、あの30数分間のピットストップがなく、他のマシンの大勢に変わりがなかったとすれば、チームゴウのNo.5は、ベントレーEXP Speed 8の前か後ろにはつけていたのではないか。つまり4位か5位を走っていてもおかしくなかったのだ。
上位3台のワークスアウディR8に割って入るのは至難のことだったろうが、ベントレーの前に出るのは難しくはなかったと思う。

だが、それもやはり仮定の話。チームゴウのNo.5に冷却水漏れが発生せずに順調にラップを重ねていたとしても、他車とのバトルで何か起きていたかもしれない。ペースを上げたことによって、エンジンがブローしたり、タイヤがバーストして戦列を離れるマシンは、毎年続出している。
楽観的に考えれば、No.5によって、ワークスアウディの3台とベントレーに揺さぶりを掛けることもできた。しかし、楽観、悲観いずれにせよ、レースで、特にルマンで、“たら、れば”を考えても意味がない。

■チームゴウにとっての2002年ルマン
では、総合7位、LMP900クラス6位で終わった、チームゴウのアウディR8によるルマン挑戦をどう捉えるべきだろうか。
郷監督が何ヶ月も前から事あるごとに口にしていた、「ルマンは、日曜日の午後4時にコース上を走っていられるかどうか。それが大きな課題であり、それを乗り越えることが我々の大きな目標」という言葉に従えば、彼らはその目標をクリアしたことになる。まずは、最初の壁を乗り越えたのだ。
しかし、ルマンは年に1度のレースだが、1度の結果で満足する者はいないといっていい。郷監督も、来年のことについて、すでに準備に入っていると言っていた。
「アウディスポーツと、来年のことについてここで話を始めています」

彼は来年にやる気を見せている。具体的な言葉ではなく、意欲は強く伝わってくる。
「決勝前のクラッシュや決勝でのトラブルなど、いろいろあったのに完走できたんだから、その経験を生かせれば次の道も開けるのではないでしょうか」

事前のテストがほとんどできず、予測不可能なトラブルに襲われるのがルマンの難しいところ。今年のチームゴウは、うまく乗り切った。そこから先には、さらにレベルの高い戦いが待っていて、それには限りがない。完走の次は表彰台が、表彰台の次は優勝が、優勝の次は今年のアウディのように連続優勝が、といった具合に。
チームゴウは、困難にあいながらもその第1段階をクリアし、次の戦いに向けて動き始めた。なすべきことを郷氏は認識している。2003年のルマン24時間レースは、もう始まっている。

(リポート=金子浩久)

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