【スペック】ランサーセディアワゴンT-Touring:全長×全幅×全高=4425×1695×1465mm/ホイールベース=2600mm/車重=1280kg/駆動方式=FF/1.8リッター直4DOHC16バルブターボ・インタークーラー付き(165ps/5500rpm、22.4kgm/3500rpm)/車両本体価格=189.8万円

三菱ランサーセディアワゴン T-Touring & Rallyart Edition(4AT)【試乗記】

『説得力がある』 2001.06.07 試乗記 三菱ランサーセディアワゴンT-Touring /Rallyart Edition(4AT)……189.8/209.8万円2000年11月の発表以来、月平均3100台(2001年4月まで)を売る好調ランサーセディアワゴン。2001年5月29日に、1.8リッターGDIターボモデル「T-Touring」が加わった。自動車ジャーナリスト、森 慶太が報告する。

 

 
上中は「T-Touring」。下は「Rallyart Edition」。
 

もっと年輩層重視型だった

街中や高速道路で後ろ姿を目にして「オッ」と思うことが意外と多いランサーセディアのワゴン。つまり、けっこうカッコいい。で、実際よく売れているらしい。2001年3月の決算期に、ランサーはナンと登録台数1万台オーバーという快挙をなしとげており、そのうちの約半数がワゴンだったという。ちなみに、残りの約半数は「やっぱり!」のエボ(笑)。気の弱い旧型Cクラスみたいな後姿をしたセダンのセディアは1000台程度しか出なかったそうだ。お客さんは正直である。

エボリューションモデルじゃない現行ランサーセディアには、今回このGDI ターボ(搭載のワゴン)で初めて乗った。現行以外でいうと、最後に乗ったランサーは、突如“大幅改善”のエボ4に5年前。ほかに、同系プラットフォームのクルマとしてディンゴの初期型とディオンの初期型とディンゴの最新型とレンタカーのミラージュ1300(走行7万5000km)。

ランサーセディアワゴン「T-Touring」にパッと乗って気づいたのは、運転席バックレストの角度調整範囲が変わったこと。すなわち、以前より1段ぶん起こす方向で増えている。いっぱいまで起こしてもまだ寝すぎていた三菱車(社内基準の設定値そのものが狂っていた)もついに!と思ったら、しかし実際は起きすぎていてちょっと使えず。ある開発担当者によると、「人形を座らせた状態で計るとちゃんと角度出てたんですが」。もちろん今後さらに改善されるはず。期待。

あと、ダッシュボードやピラーや天井との関係でいうと、着座位置が座面をめいっぱい下げてもまだちょっと高い。メーターの一部がケラレて見えず、ということはなかったけれどビミョーに座りが悪い。で、これに関しては「ヒップポイントを高めに、という最近の傾向に合わせようということになりまして」とエンジニア氏。
当初の企画ではランサーセディア、現状よりもっと年配層重視型だった。それで乗り降りのしやすさを配慮して、着座位置をやや低めに設定したらしい。にもかかわらず、今回、“最近の傾向に合わせて”座面を高めた結果、やや不自然になった、と。なるほど。できれば車体側のカタチもそれに合わせてくれるともっとヨカッタ。次はやってください。


 
レカロ社製セミバケットシートが奢られる「ラリーアートエディション」。ほかに、モモ社製ステアリングホイール、本革シフトノブ&パーキングブレーキレバー、カーボン調センターパネルなどを備える。
 

オススメはレカロ改

試乗した「T-Touring」と「Rallyart Edition」のうち、シートに関しては、レカロ改が標準でつくラリーアート仕様のほうがはるかにイイ。調整できるのは前後スライドと背もたれの倒れ角(レバーでなくダイヤルだから微妙にヤレる)だけだが、「これがベスト」と思えるポジションを10秒で得られた。
ちなみに、非レカロ改の場合は「座面(のみ)めいっぱい下げ」のとりあえずのベスト(基準位置もそこ)を見つけるまでに30秒ぐらいかかった。
レカロ改はサポートの張り出しはいささか大げさだが、基本がしっかりしている。非ラリーアート用のシートにあったビミョーに高い違和感もこれではほぼ問題なし。むしろこのテの後付けシートのほうが高さの違和感が強いことが多いのに、セディアワゴンの場合は違った。

なお、表面の布の感じはどっちもヨカッタ。というかどっちも同じだったわけだが、伸縮性に富んでいて、滑らず、適度に厚み感もあって。コシのあるクッション特性も効いて、ナンというか「ミジメな安モノ」に乗っている感じがしなくてヨカッタ。でもってそれは後席についてもほぼ同じ。座面の形状を改善したそうで、座っていてついついお尻が前方にズレてしまうイヤ味がまあなかった。

全体として、座った感じはこのクラスの日本車としては悪くなかった(特によくもなかった)。一連の欧州車を見習ってカローラが採用した高さ重視のパッケージングにセディアはまだなっていないわけだけれど、その範囲でできることもある、ということだ。すくなくとも、レカロ改の仕様に関するかぎり、前席の居心地はカローラよりずっとマシだった。


 
空力パーツを身に纏い、ノーマルターボより15mm車高を落とした「ラリーアートエディション」。硬めた足まわりには、16インチの専用ホイールを履く。
 

ガッチリしているけどガチガチじゃない

エボじゃないミラージュ/ランサー系プラットフォームということで期待していなかった乗り心地は、実際は意外なほど良好だった。硬いといえばたしかにそうだが、ヘニョヘニョクニャクニャしたイヤな動きがない。だからむしろ快適。これまた、いかにも安モノ然とした感じがなくてヨカッタ。

同じ理由で、いわゆるハンドリング方面も安心して乗れた。聞けばリアロアアームのジョイントを従来のゴムブッシュからピロボールに変えるなどしたそうで、その効果は大、というべきだろう。そういえば、ディンゴも最新型はクニャクニャヘニョヘニョが減っていた(クニャ〜ンではあった)。確実に改善されているわけだ。

あと、特筆すべき点として、明らかにタイヤとアシのマッチングをキッチリと煮詰めた感触があった。プジョー106S16とピレリP700-Zとのケースほど感動的ではなかったにせよ、このクラスの国産車ではかなり珍しい。専用設計のタイヤを用意させるのは日本車では常識だが、多くの場合はクルマ側のダメさ加減を全面的にタイヤにおっかぶせているだけだ。

なお、試乗車についていたのはノーマル用15インチとラリーアート用16インチのいずれもが、ヨコハマ・アドバンA460。当初はイマイチだったヨコハマが、頑張っていいヤツつくってきてくれたらしい。お得意の剛性感溢れる(笑)サイドウォールに、ロードノイズ対策でちょっと柔らかめのコンパウンド。ガッチリしているけどガチガチじゃない感じがよく出せていた。


 
(上)2.4リッター並の出力と、2リッターを凌ぐ燃費を謳う1.8リッターGDIターボ。スポーツモード付き4段ATと組み合わされる。「吸気冷却」や「2段混合制御」といったGDIの特徴を活かし、10.0:1というターボユニットとしては高い圧縮比を実現した。
(下)スライド式トノカバーを備えるラゲッジルーム。もちろん、床下に収納スペースが設けられる。
 

実用的に速い

アシのセッティングは、16インチのラリーアート仕様のほうがバネもダンパーもスタビもより締め上げ系。乗ってみてもその通りの印象だった。ただし、エボと違ってセディアの場合は、ラリーアートのアシも実際は三菱がやっている。「ラリーアートのアシで、あとタイヤだけもうちょっとマイルドにした仕様」が実はホンネだったそうで、できれば2つに分けずそれ一本で勝負したかったという。

GDIとの組み合わせは疑問だが、ターボも悪くなかった。NAより静かだったし、それに過給のイヤ味が希薄で。1.8リッターで165psのスペックは、さすがにVWのヤツ(1.8で150ps)ほどではないけれど、ムリしていない。そのぶん、実用的に速い。クルマの性格に合っている。

なお、エコ燃費状態を示すランプは街中を走っているとすぐ消える。スロットル操作の穏やかなことでは人後に落ちないと自負しているこの私の運転でも。考えてみれば、ターボを早くから効かせれば余計にすぐ消えるようになるリクツだ。また高速道路では、メーター上110km/h までなら点灯させ続けることは難しくない。110km/h を超えると、およそナニをやっても点灯せず(スロットル全閉でもダメだった気がする) 。

三菱ランサーセディアワゴン「T-Touring」
 

同クラスいちばん?

ここでひとつ余談。最新型ミラージュディンゴが、街なかでならほぼ常時エコランプ点灯状態で走れることを指摘したところ、「それはCVTのおかげで低負荷で走れる領域が大きく広がったためだ」との回答だった。とはいえ「車重1.2トンのクルマに1.5リッターの直噴≒リーンバーンというツラさは動かしがたい」とも。三菱、すくなくとも現場にはちゃんとわかっている人もいる。さらに余談だが、ディンゴは非GDI の1.3リッターがすごくお買い得でデキもイイそうだ。

さて結論。カローラフィールダーの1.8リッターのヨンクや同ランクスの190psやシビックの1.7リッターのヨンクやウィングロード等と較べた場合、セディアワゴンのGDI ターボは明らかにベターだった。それらとは較べモノにならないくらい、ヨカッタ。カローラやシビックに対していわゆるパッケージング手法における古さは否めないが、ナニより乗っていてアホらしくなってこないところが貴重。着実に改良されている手応えもあったし。

ということで、車両本体価格200万円未満ギリの日本車ワゴンとして説得力が高い。ひょっとして、同クラスいちばんじゃなかろうか。

(文=森慶太/撮影=難波ケンジ/2001年6月)

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