【スペック】全長×全幅×全高=4303×1822×1305mm/ホイールベース=2440mm/車重=1730kg/駆動方式=FR/4.2リッターV8DOHC32バルブ(390ps/7000rpm、46.0kgm/4500rpm)/車両本体価格=1295.0万円(テスト車=同じ)

マゼラーティ・スパイダー カンビオコルサ(2ペダル6MT)【ブリーフテスト】

マゼラーティ・スパイダー カンビオコルサ(2ペダル6MT) 2002.02.05 試乗記 ……1295.0万円総合評価……★★★★
写真中央の小さなT字型の小さなレバーでリバースを選択する。

写真中央の小さなT字型の小さなレバーでリバースを選択する。
ステアリングホイール裏のシフトパドル。右側はギアアップ。

ステアリングホイール裏のシフトパドル。右側はギアアップ。

背徳の悦び

「マゼラーティ3200GT」のホイールベースを220mm切りつめたシャシーに「フェラーリ」が開発した新しい4.2リッターV8を載せ、「ジウジアーロ」の手になるボディのリアに「ピニンファリーナ」がモディファイを加え、随所に三ツ又エンブレムが配された、贅沢三昧のオープン2シーター。ソフトトップはもちろん、ワンタッチで開閉可能な電動式。
文字通り革に覆われた室内。8WAYの電動シートと「チルト+テレスコピック」可能なステアリングホイールがいかなる体型のお金持ちにも対応するが、一方、たっぷり長い座面がドライバーの足の短さを非難する(こともある)。
キーを捻ると、「火を入れる」という表現にあいふさわしく、4.2リッターV8がゴンゴンとガソリンを焚きながら目を覚ます。野太い排気音が勇ましい。無造作にガスペダルを踏み込むと簡単にリアホイールは空転、メーターにトラクションコントロールの警告灯が点滅する。過給感いっぱいだった3.2リッターツインターボと比較すると、自然吸気V8はズッシリ腹にたまる加速を披露する。
マゼラーティ・スパイダーのジマンのひとつが、フェラーリF1ゆずりの2ペダル式6段電子制御マニュアルトランスミッション「カンビオコルサ」。フロアシフターはもたず、ステアリングコラムから左右に生えたパドルで操作する。「ノーマル」から「スポーツ」モードに切り替えると、足まわりがシャキッとし、スロットル、シフトレスポンスとも噛みつかんばかり。電光石火、ドライバーのハートにも火をつける。街なかや渋滞時には、シフト操作不要の「オートマチック」モードが備わるのが、極東のクルマ好き富裕層にはウレシイ。じゅうぶん実用的。とはいえ、ギアを上げるより下げるのが得意なのは、この手の“電制クラッチ”の例に漏れない。
見かけよりよほど繊細なハンドリングをもつマゼラーティ・スパイダー。“曲がり”疲れたら、幌を開けてのオープンエアもいい。さらにやめられないのがハイスピードクルージング。後続車がリアビューミラーからあふれそうに迫るのを待って、ペダル一踏み、豆粒に。背徳の悦び。

【概要】どんなクルマ?

(シリーズ概要)
「マゼラーティ・スパイダー」は、2001年9月に行われた第59回フランクフルトモーターショーでデビュー。2+2クーペモデル「3200GT」のシャシーを220mm切り詰め、2440mmのホイールベースに、25秒で開閉する電動ホロ付きのボディを載せる、2シーターオ―プン。マゼラーティはスパイダーをもって、2002年1月から実に13年ぶりに北米市場へ復帰する。
エンジンは、新開発の4.2リッターV8DOHC。390ps/7000rpmの最高出力と、46.0kgm/4500rpmの最大トルクを発生する。トランスミッションは2種類。6段MTと、ステアリングホイール裏に配された左右のパドルでギアチェンジできる、6段のシーケンシャルトランスミッション「カンビオコルサ」が用意される。
(グレード概要)
「スパイダー カンビオコルサ」は、トランスミッション以外にMTモデルとの違いはない。イタリア語で「レーシングギアボックス」を意味するシーケンシャルトランスミッション「カンビオコルサ」は、「フェラーリ360モデナF1」に搭載されるものと、基本構造は同じ。走行状態に合わせ、「ノーマル」「スポーツ」「オート」「ローグリップ」の4モードを選択できる。「スポーツ」は「ノーマル」よりパドル操作時のギアチェンジがすばやく、「オート」はシフト操作が不要なモード。「ローグリップ」は、雪や氷結路など低ミュー路用のオートマチックモードだ。

【車内&荷室空間】乗ってみると?

(インパネ+装備)……★★★★
アイボリーと黒の革内装。インストゥルメントパネルも柔らかい革に覆われる。メーターナセルのステッチがいかにも贅沢。なるほど、大衆車で着けられる樹脂製インパネの“シボ”とは、これを模したモノであったか。インパネ中央には、上下が尖ったお馴染みの時計がはめ込まれる。センタートンネルには、リバースの際にのみ使う小さなT字レバーがATシフターの痕跡として残る。3本スポークのステアリングホイールは直径37cmの小径なもの。コラム左右から生えるパドルは、右が「UP」、左が「DOWN」用である。オープンモデルらしく、グローブボックスのなかにガスとトランクオープナーのボタンが備わる。流行の店には幌をおろして乗り付け、グローブボックスの鍵だけしめて、サッと車外に出るのが粋なのだろう。心配そうな顔など見せないで。
(前席)……★★★★
2種類のメモリー機能を備える電動8ウェイシート。幅は狭いが長い座面。「スラリと足が長いモデル体型以外はご遠慮願います」といったところか。ポルシェのシートによく似た形状の背もたれも幅が狭く、これ見よがしなところはないが、しかし見た目よりよほどしっかり上体をサポートする。ドアのパネルが木目でなく「ブラック」なのがスポーティ。モノ入れは少ないが、シート背面にそびえるソフトトップ収納部との隔壁に、ストッキングのような薄い伸縮する布でできたマップポケットがある。
(荷室)……★★
ソフトトップの収納部にスペースを取られ、ラゲッジルームは必要最小限。床面最大幅121cm、奥行き70cm、高さ45cm。とはいえ、側壁が複雑に張り出し、トランク奥は高さ22cmしかないので、実質的な大きさは幅92cm、奥行き45cmほどか。「able to accommodate two golf bags」とカタログには記載されるが、本気でゴルフ用に購入される方は、お試しのうえ。深さ約30cmのオワン型床下収納部には、最近のクルマでは珍しくレンチが揃った工具類が備わる。スペアタイヤを持たないため、パンク修理材も。

【ドライブフィール】運転すると?

(エンジン+トランスミッション)……★★★★
90度のバンク角をもつ正統派V8。インレットカムに可変バルブタイミング機構を備え、4.2リッターのキャパシティから、390ps/7000rpmの最高出力と、46.0kgm/4500rpmの最大トルクを発生する。潤滑方法にドライサンプを採るレーシィなユニットだ。大排気量の鈍さを感じさせない、精緻なフィールをもつ。
「カンビオコルサ(レーシングギア)」と名付けられた2ペダルの6段MTは、リアデフと抱き合うトランスアクスルレイアウトが採用され、ボディの前後重量配分に配慮、前:後=53:47を実現した。ステアリングコラムから左右に生えたパドルでシフトする「ノーマル」、スロットル&ギアレスポンスのスムーズさより俊敏性を優先した「スポーツ」、シフト操作が不要な「オート」、低ミュー路用「ロウグリップ」が用意される。スポーツへの切り替えは、センターコンソールのボタンを押すだけ。ノーマルモードからでも、オートモードからでも移行可能で、目に見えてエンジン、ギアの反応が変わる。オートモードにしておけば、パドル操作をしても「マニュアル」に代わらないところが、フェラーリF1との違い。よりラグジュアリーな設定といえようか。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
1.7トンの車重がありながら、それを感じさせず、軽いステアリングの操作通り、狙ったラインを正確にトレースする。ただし、路面が荒れている場所では、剛性確保に不利なオープンボディの特性が正直に出て、スカットルはシェイクし、フロアはわななく。
日本に輸入されるスパイダーには、電子制御「スカイフック」サスペンションが標準装備される。これは、路面状況からダンパーの減衰力を瞬時に調整して、あたかも空から吊されているかのようにボディをフラットに保とうとするもの。不自然さなく、よい乗り心地を提供する。もっとも、マゼラーティ・スパイダーほどの車重があり、よくチューンされた4輪ダブルウィッシュボーンの足まわりをもてば、電子制御システムに頼らないでも良好な乗り心地は確保されているはずだ。

(写真=峰 昌宏)

【テストデータ】

報告者:webCG青木禎之
テスト日:2002年1月29日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:3686km
タイヤ:(前)235/40ZR18(後)265/55ZR18(いずれもMichelin Pilot Sport)
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(5):山岳路(2)
テスト距離:476.1km
使用燃料:99.5リッター
参考燃費:4.8km/リッター

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