続々登場する“中国専用モデル”【北京モーターショー2012】

2012.04.27 自動車ニュース
「フォルクスワーゲン・ラヴィーダ」
外資系メーカーの中国専用車の紹介【北京モーターショー2012】

【北京モーターショー2012】続々登場する外資系メーカーの“中国専用車”

消費者の好みは国や文化によって千差万別。中国が世界最大の自動車市場となった今、中国人の好みに合うクルマを造ろうとメーカーが考えるのは当然だろう。北京モーターショーでは、外資系メーカーからさまざまな“中国専用車”が初公開された。そのなかから、注目の6台を紹介する。

「ラヴィーダ」のリアビューはアウディ風だ。
外資系メーカーの中国専用車の紹介【北京モーターショー2012】

■「フォルクスワーゲン・ラヴィーダ」

中国市場でシェアトップを走るフォルクスワーゲン・グループは、北京ショーで中国専用車「ラヴィーダ」の2代目モデルを初公開した。ラヴィーダはフォルクスワーゲンと上海汽車の合弁会社、上海フォルクスワーゲンが生産販売する小型セダン。「ゴルフ」の車台をもとに、上海フォルクスワーゲンの開発チームが内外装のデザインを担当した。
2008年に投入された初代は、大きなメッキグリルや旧「BMW 5シリーズ」風のリアコンビネーションランプなど、押し出しの強いテイストを好む中国の消費者の心理をとらえたデザインで大ヒット。昨年の販売台数は24万7500台と、フォルクスワーゲン・ブランドで最も売れたクルマとなった。

今回の北京ショーに初登場した2代目は、顔つきが最近のフォルクスワーゲン車に共通するデザインに統一されたが、フロントグリルはゴルフよりもずっと立派で、一瞬「パサート」かと見まがうほど。ワルター・デ・シルヴァ氏がチーフデザイナーに就いて以来、フォルクスワーゲン車のフロントグリルは水平のラインが共通の基調になっているが、ラヴィーダのグリルにはよく見ると縦のラインが加えられている。リアビューは初代のBMW風から、2代目はアウディ風に変わった。
これを「売らんかな」の節操のないデザインと見るか、中国向けの巧みなマーケティングと見るか、意見が分かれると思う。とはいえ、全体のデザインは破綻なくまとまっており、上海フォルクスワーゲンのデザインチームの高い実力がうかがえる一台だ。

「フィアット・ビアッジオ」
外資系メーカーの中国専用車の紹介【北京モーターショー2012】

■「フィアット・ビアッジオ」

フィアットはかつて南京汽車との合弁で「パリオ」というコンパクトカーを現地生産していた。ところが、2007年末に南京汽車が上海汽車に吸収合併されてしまったため、いったん中国市場から撤退。その後、あらめて広州汽車と合弁契約を結び、再参入の準備を進めてきた。4年余りのブランクを巻き返すべく、北京ショーで満を持して初公開したのが中国専用の中型セダン「ビアッジオ」である。

ビアッジオは、「アルファ・ロメオ ジュリエッタ」の車台をもとにクライスラーが開発した「ダッジ・ダート」がベース。とはいえフロントとリアのデザインは大幅に変更されている。フロントのメッキグリルが大きくて立派なのは、フォルクスワーゲン・ラヴィーダと同じく、見栄えにこだわる中国の消費者の好みを取り入れたからだろう。発売は今秋の予定で、湖南省長沙市の新工場で生産される。

「ルノー・タリスマン」
外資系メーカーの中国専用車の紹介【北京モーターショー2012】

■「ルノー・タリスマン」

ルノーは世界の主要メーカーで中国に合弁会社を持たない数少ない一社だ。その理由は複雑なので割愛するが、ホームグラウンドの欧州市場が低迷するなか、世界最大の中国市場に何とかして食い込みたい。北京ショーで初公開した高級セダン「タリスマン」からは、そんなルノーの期待と焦りが感じられる。

その成り立ちはかなり個性的だ。関係者によれば「『日産ティアナ』と『ルノー・ラグナ』を合体させ、独自の外装を与えたクルマ」で、生産は韓国のルノー・サムスンが担当する。巨大なフロントグリルは中国の顧客の好みに合わせたもので、本国のルノー車のデザインとはかけ離れている。だが、市場ニーズに合わせたクルマを造るのがビジネスというものだ。
タリスマンは当面は中国専用(韓国ではサムスン・ブランドで販売)で、将来は東南アジアにも輸出するが、欧州や日本で販売する予定はないそうだ。

「レクサスES250」
外資系メーカーの中国専用車の紹介【北京モーターショー2012】

■「レクサスES250」

トヨタが誇る高級車ブランド、レクサスからも中国専用車が登場した。「ES250」は、レクサスの新しいアイデンティティーであるスピンドルグリルを採用。先代よりもホイールベースを45mm延ばすとともに、北米向けの「ES350」より排気量が小さい2.5リッター直4エンジンを搭載したモデルだ。
中国では、高級セダンのロングホイールベース版が富裕層のステータスシンボルになっている。その先鞭(せんべん)をつけたのはドイツ勢で、「アウディA4」や「BMW 3シリーズ」のようなミドルクラスまでロングホイールベース版をそろえている。

その一方、中国の富裕層は排気量の大きさにはこだわらない。運転手の人件費が安いので、自分ではあまり運転しないからだろう。例えば、「アウディA6L」の最大の売れ筋は2リッター直4ターボエンジン搭載車という、先進国市場では想像しにくい状況になっている。レクサスは商売上手なドイツ勢を見習ってES250を投入したのだろう。

「ヴェヌーシアD50」
外資系メーカーの中国専用車の紹介【北京モーターショー2012】

■「ヴェヌーシアD50」

日本メーカーのブース紹介の記事でも取り上げた「ヴェヌーシアD50」は、日産の中国向け第2ブランドの第1弾である。旧型「ティーダ」をもとに、部品調達を徹底的にローカル化することで、1.6リッターエンジンにMTを組み合わせたベースモデルで6万7800元(約88万円)という驚きの低価格を実現した。
ちょっと野暮(やぼ)ったいデザインだけれど、その価格と日系メーカーの信頼性を売り物にすればヒットは間違いなしだろう。筆者的には、ルノーが「5000ユーロカー」として欧州で大ヒットさせた「ダチア・ロガン」の日産版だと考えている。

東風「俊風CV03」
外資系メーカーの中国専用車の紹介【北京モーターショー2012】

■東風「俊風CV03」

最後に日産関連でもう1台、webCG以外の日本メディアはおそらくどこも取り上げないであろう、隠れた中国専用車を紹介しよう。東風「俊風 CV03」は、日産と東風汽車の合弁会社の子会社が北京ショーで販売開始をアナウンスした軽ワンボックス。子会社の既存車種をもとに、日産流のエンジニアリングを取り入れて品質と信頼性を高めたクルマだ。ブランドは東風だが、このクルマの売り上げと利益の半分は合弁会社を通じて日産の決算に計上されるのである。

軽ワンボックスなどのマイクロカーは、中国では「微型客車」と呼ばれ、地方都市や農村部を中心に年間200万台以上が売れる一大セグメントだ。価格帯は3万〜5万元(約39万〜65万円)と激安で、市場のローエンドを形成している。かつては中国メーカーの独壇場だったが、2002年にGMが上海汽車と組んで江西省の微型客車メーカー、五菱汽車を買収して参入。既存車種の品質と信頼性を改善し、5割を超える市場シェアを獲得した。日産は東風汽車と組み、その2匹目のドジョウを狙っているのだ。

(文と写真=岩村宏水)

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