第2戦マレーシアGP「白熱し過ぎたチーム内バトルの行方」【F1 2013 続報】

2013.03.25 自動車ニュース
2戦連続となるポールポジションから今季初優勝を飾ったチャンピオン、セバスチャン・ベッテル(右)と、2位マーク・ウェバー(左)。レッドブル1−2フィニッシュは、ベッテルがチームからの指示を無視してウェバーを抜き優勝してしまうことで、後味の悪い結末に。(Photo=Red Bull Racing)
第2戦マレーシアGP「白熱し過ぎたチーム内バトルの行方」【F1 2013 続報】

【F1 2013 続報】第2戦マレーシアGP「白熱し過ぎたチーム内バトルの行方」

2013年3月24日、マレーシアのセパン・インターナショナル・サーキットで行われたF1世界選手権第2戦マレーシアGP。ロータス&キミ・ライコネンがレースを席巻した開幕戦オーストラリアGPから一転し、今度は王者レッドブルとメルセデスがフロントランナーとして躍り出た。しかしいずれの陣営でも2人のドライバーの間で順位争いが白熱し、それぞれにわだかまりが残る結末となった。

ウエット路面でスタートしたマレーシアGP。ポールシッターのベッテル(一番左)の背後に、予選3位のフェルナンド・アロンソが詰め寄った。(Photo=Red Bull Racing)
第2戦マレーシアGP「白熱し過ぎたチーム内バトルの行方」【F1 2013 続報】

■2013年の新たな主役たち

開幕戦オーストラリアGPでは、フリー走行から予選まではレッドブルが速く、レースではフェラーリが早々にチャンピオンのペースを凌駕(りょうが)し、その後ロータスがライバルより1回少ないタイヤ交換で優勝と、局面ごとに役者が変わる展開となった。

メルボルンでみせたロータスとキミ・ライコネンの抜群のタイヤマネジメント能力を前に、この“黒い軍団”が2013年のタイトル争いに絡んできそうではあるが、アルバートパーク・サーキットは、公園内のテンポラリーコースというかなり特殊な環境。ここでのパフォーマンスが通年で発揮されるとは言い切れない。

今年も勝敗を分ける大きなファクターとなるのが、マシン&ドライバーと、ピレリタイヤとのマッチングである。シーズン序盤は各陣営が新タイヤの扱いに四苦八苦し結果がばらつく、という過去の傾向からすれば、2戦目となるマレーシアGPなどは各人悪戦苦闘の真っただ中。まだ勢力図ははっきりとしていない。

2レース目の舞台はセパン。長いストレートに低中高速コーナーをちりばめたテクニカルコースだ。さらに高温多湿かつ突如やってくるスコールという気象条件も勝負を難しいものにする。そして格段に粗い路面は、オーストラリア以上にタイヤをいじめることになる。

案の定、今回は開幕戦とは別の主役たちがスポットライトをあびた。3年連続でダブルタイトルを決めているレッドブルと、2008年チャンピオン、ルイス・ハミルトンを擁して常勝軍団へと変貌を遂げたいメルセデスだった。

スタートで2位の座を奪ったアロンソ(写真)。だがオープニングラップで首位ベッテルと接触しフロントウイングを壊してしまった。そのまま走行を続けようとしたが2周目にウイングが脱落、コースアウトしそのままグラベルにはまってリタイア。自身通算200戦目を無得点で終えた。チームメイトのフェリッペ・マッサはフロントローから5位入賞。(Photo=Ferrari)
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■ベッテルが2戦連続ポールポジション

土曜日に行われた予選は、Q2途中からコースの一部で雨が降り出しコンディションは悪化。しかしトップ10グリッドを決めるQ3に入ると逆に周回を重ねるにつれて路面状況が好転し、セッション終了間際にタイムをたたき出したドライバーが上位に名を連ねた。

ポールポジションはレッドブルのセバスチャン・ベッテル。後続に0.9秒と大きく水を開け、2戦連続の最速タイムをたたき出した。Q2では9番手タイムに甘んじたチャンピオンは、Q3後半にフレッシュな浅溝インターミディエイトタイヤを履き、ポール奪取に成功した。

2、3番グリッドにはフェラーリの2台が食い込んだが、前にいるのはフェリッペ・マッサの方。予選結果だけをみるとフェルナンド・アロンソは昨シーズンから4戦連続でチームメイトに負けていることになる。前戦予選3位だったハミルトンがここでも4番グリッドと健闘。マーク・ウェバー、ニコ・ロズベルグを挟み、開幕戦ウィナーのライコネンが2戦連続で7番手タイムを記録したが、予選中他車を邪魔したとしてペナルティーを受け10番グリッドに降格した。

マクラーレン勢は、ジェンソン・バトンが1つ繰り上がり7番グリッド、セルジオ・ペレスも同様に9番グリッドにアップ。好調フォースインディアのエイドリアン・スーティルが8番グリッドから上位入賞を目指した。

インターミディエイトからドライタイヤへの交換タイミングが当たったウェバー(前)がレース大半をリード。トップを奪われ2位に落ちたベッテル(後ろ)は徐々にいら立ちをヒートアップさせ、ついにはチーム側のクルージング指示を無視し、ウェバーを抜いてしまう。(Photo=Red Bull Racing)
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■アロンソ、まさかのノーポイント

レーススタート前にあがったものの、スコールの来襲にあったことで、22台すべてがインターミディエイトを装着してダミーグリッドを後にした。

シグナルが変わるとトップのまま1コーナーへ飛び込んだポールシッターのベッテル。だがその背後には、スタートの名手アロンソが僅差で詰め寄っていた。フェラーリのフロントウイングがレッドブルのリアに接触、アロンソはウイングを壊しながらも2位走行を続け、ドライタイヤに交換するタイミングまで耐えようとした。しかし1周を終えたところで壊れたウイングが脱落、それに乗り上げてコースを外れ、アロンソはまさかのリタイア、ノーポイントに終わってしまった。

これでベッテルを先頭に、5番グリッドから2位に上がったウェバーとともにレッドブル1−2フォーメーションが早々に出来上がった。3位にハミルトンがつけ、スタートに成功したバトンを間に挟み、ロズベルグは5位からトップ集団を追った。

一方、開幕戦を制したライコネンはといえば、スタートで10位から12位に落ち、以後遅いマシンに引っかかるなどしてオーストラリアのような巻き返しはならず。結果7位でゴールするのだが、6位に終わった僚友ロメ・グロジャンとともに、ロータスは前戦同様1回ストップが少ない3ストップで走り切った。

戦いが白熱したレッドブルの2台の後ろでは、メルセデスのルイス・ハミルトン(前)とニコ・ロズベルグ(後ろ)のポジション争いも激化。ともに1985年生まれの二人にも、レース終盤、チームからのポジションキープ指示が出されたが、レッドブルとは違いその指示は守られ、ハミルトン3位、ロズベルグ4位というオーダーのままゴール。ロズベルグはチームの意向を理解できるとし、4位を受け入れた。(Photo=Mercedes)
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■「マークが遅すぎる、前からどかしてくれ」

今回のレースの勝敗の分かれ目は2つあった。その1つ目が、一部を残しコースがドライタイヤ向けに変わりはじめるスタート後数周に訪れた。
まず動いたのが首位ベッテルで、56周レースの5周を終えてピットに飛び込みドライにスイッチ。対するウェバーは8周までインターミディエイトで引っ張った。結果、交換時期がより適切だったウェバーがベッテルの前に出ることに成功した。

ドライへの交換が一巡すると、1位ウェバー、2位ベッテル、3位ハミルトン、4位ロズベルグという、レッドブルとメルセデスによるトップグループが形成され、以後この4台が覇を競うことになった。

この日のウェバーはタイムに波こそあったもののトップを守る走りを披露。その後方では、3年連続王者の僚友ベッテルがいら立ちを募らせていた。

2度目のタイヤ交換後、ペースが伸び悩んでいたウェバーを前に、ベッテルは無線でチームに訴える。「マーク(ウェバー)が遅すぎる、前からどかしてくれ」

たしかに後方からはメルセデスの2台が迫っていたが、とはいえDRSを利かせても抜けなかったのはベッテルの方だった。チームも「レースはまだ半分あるのだから」とチャンピオンに耳を貸さなかった。

ウェバーはトップのまま32周目に3度目のピットストップを敢行。ミディアムコンパウンドからハードに替えるとペースが戻り、首位を堅持した。

開幕戦ウィナー、キミ・ライコネンのロータス(写真)は、ウエットにマシンセッティングを合わせ切れず苦戦。雨がらみの予選では7番手タイム、セッション中に他車の進路を妨害したとして3グリッド降格のペナルティーを受けてしまう。ぬれた路面で始まったレースでもスタートで12位に後退、結果7位入賞。一方チームメイトのロメ・グロジャンは予選11位から徐々にポジションを上げ6位となった。両者ともライバルより1回少ない3ストップで完走。(Photo=Lotus)
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■チームの“おきて”を破ったベッテル、守ったロズベルグ

優勝を諦め切れないベッテルは、ウェバーに先駆け43周目に4度目にして最後のタイヤ交換を行う。翌周トップのウェバーもピットに入るのだが、コースに戻ってみると、ウェバーとベッテルの進路が交錯するほど接近しており、同じマシンによる優勝争いが一気に緊迫した。2つ目の勝敗の分かれ目である。

実はレッドブルは、この時点でタイヤとエンジンをいたわるクルージング態勢をとっており、レース後半のチームメイト間の順位争いは想定外の出来事だった。チームはウェバーを抜きにかかろうとするベッテルに対し、「気をつけろ」と警告するが、若きチャンピオンは名実ともに“猛牛”と化していた。46周目、同士打ちギリギリの接近戦からベッテルが首位の座を奪還し、そのままの順位でチェッカードフラッグを迎えることになった。

一方、メルセデスの二人もレース終盤にポジションを入れ替えてのつばぜり合いをみせていたが、3位にハミルトンがおさまると、チームはポジションキープを指示した。燃費が厳しいハミルトンは目にみえてペースを抑え、4位ロズベルグは「自分の方が速く走れる」と先行させてほしい気持ちを無線で直訴するが、メルセデス代表のロス・ブラウン直々にお願いをされ、ロズベルグはそれを受け入れた。

開幕戦から不調に悩まされているマクラーレンだが、セルジオ・ペレス(写真中央)は移籍後2戦目にしてQ3進出を果たし、9番グリッドから同じ順位でフィニッシュ、チームに初の得点をもたらした。もう一人、エースのジェンソン・バトンはスタートで5位に上がるも、タイヤ交換で作業が終わらぬままピットレーンに出てしまい大きく後退。最終的にはバイブレーションがひどくなりレースを諦めた。17位完走扱い。(Photo=McLaren)
第2戦マレーシアGP「白熱し過ぎたチーム内バトルの行方」【F1 2013 続報】

■重苦しい空気の表彰台

往年のドライバー、サー・ジャッキー・スチュワートに並ぶ歴代6位タイとなる通算27勝目をあげたベッテル、勝利を“奪われた”かっこうの2位ウェバー、本来ならチームメイトが“ここ”にのぼるはずだったと思っている3位ハミルトンとも、みな表彰台での表情は固く、重苦しい空気のなかでセレモニーが行われた。

ウェバーは、チームの決定を無視したベッテルに対して、はっきりと怒りをあらわにした。「今日セブ(ベッテル)は自分で(チームの決定を無視するという)判断を下したんだ。そしていつものように(チームに)かばってもらうんだよ」。最後のフレーズは、少なくともレッドブル内の一部にいるベッテル・シンパへの皮肉も込められているだろう。

そんなウェバーとチームに、勝者のベッテルは謝罪。判断ミスを認めたのだが、指示を無視したのは「意図的ではない」と弁明した。

だが、レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は、「彼(ベッテル)は、彼にとっての利益を、チームのポジションより優先させたんだ」と、ベッテルが“わざと”指示を無視したとみているという。

トップドライバーに優勝を狙えるマシンを与えると、当然だが、チームメイト同士の競り合いも激しさを増す。それはお互いを高め、チームのパフォーマンスを上げるという相乗効果も期待できるが、一度こじれれば同じガレージに敵対する二人が共存するという難しい状況をつくりだすこともある。
またレッドブルにしろメルセデスにしろ、チームにとってはレース中二人のドライバーにつぶし合いをされてはたまらない。タイヤのデータが不足しているこの時期ならなおさらである。

ドライバーズチャンピオンシップの主役はドライバーであることに間違いはない。そして同時に、F1は極めて高度なチームプレイが要求されるスポーツでもある。人間が戦っている以上エゴが顔を出すのはある意味当たり前だが、それが信頼関係を著しく傷つけてしまった時、そこで問われるのはスポーツマンとしての技能ではなく、品位なのかもしれない。

次戦は4月14日に行われる第3戦中国GP。それまでにレッドブルは、白熱し過ぎたチーム内バトルを沈静化させられるだろうか。

(文=bg)

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