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【スペック】全長×全幅×全高=3655×1625×1505mm/ホイールベース=2300mm/車重=1160kg/駆動方式=FF/1.4リッター直4DOHC16バルブターボ(160ps/5500rpm、21.0kgm/2000rpm)/燃費=14.0km/リッター(JC08モード)/価格=349万円(テスト車=364万円/ボディーカラー<ビコローレ ブラック/ホワイト>=15万円)

アバルト595Cツーリズモ(FF/5AT)【試乗記】

猛毒なんて言わないで 2013.04.30 試乗記 アバルト595Cツーリズモ(FF/5AT)
……364万円

得意の小排気量チューニングにより、日本でもカルト的な人気を誇ったイタリアの名門「アバルト」。その最新モデルである「595Cツーリズモ」のインプレッションから、今日のアバルトの姿を探った。

今も高いブランドイメージ

新世代の「フィアット500」が発売された2007年、アバルトもまた復活を遂げた。1950年代から60年代にかけて小排気量車のチューニングを得意としていたファクトリーがアバルトだったが、近年ではフィアット車の高性能バージョンに名を冠するにとどまっていた。新たにブランドとして再生し、レースを行うとともに市販車を販売するようになったのである。

熱いハートを秘めるコンパクトカーという成り立ちは日本人受けしたようで、70年代の「アウトビアンキA112アバルト」などは長い間カルト的人気だった。2012年のパリサロンで発表された「アバルト695 エディツィオーネ マセラティ」は、世界で499台の限定生産の中で日本への割り当てが100台に及ぶ。今もブランドイメージは高いままなのだ。

「アバルト595」は、695と同じくフィアット500をベースにしている。スーパーの安売りのようなキリの悪い数字は、1957年デビューの2代目500をチューンしたかつてのモデルに由来している。479ccだったノーマルから拡大された排気量から、誇らしげに命名されていていたのだ。発売されたのは1963年だから、ちょうど50年前だ。あの頃の500ベースのアバルトは、放熱のためにリアのエンジンフードを開けたままにしておくのが常道だったが、もちろん今それをまねする意味はない。

ボディーのカラーバリエーションは、グレーやレッド、ホワイトなど全6種類。テスト車のようなツートンカラーも選ぶことができる。
ボディーのカラーバリエーションは、グレーやレッド、ホワイトなど全6種類。テスト車のようなツートンカラーも選ぶことができる。 拡大
タイヤサイズは205/40R17。ホイールは4種類の中から選択が可能で、テスト車は標準装備の10スポーク17インチアロイホイールを履いていた。
タイヤサイズは205/40R17。ホイールは4種類の中から選択が可能で、テスト車は標準装備の10スポーク17インチアロイホイールを履いていた。 拡大
 
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パワーはノーマルのほぼ2倍

現代の595の排気量が数字そのままであるはずもなく、エンジンはターボ付きの1.4リッター直4だ。最高出力は160psで、ノーマルの「500ツインエア」が85psだからほぼ2倍である。595には「コンペティツィオーネ」と「ツーリズモ」があり、パフォーマンスを重視しているのがコンペティツィオーネだ。試乗したのは「595Cツーリズモ」で、より快適性を高めた仕様のオープンモデルということになる。

アバルトといえばサソリということで、前後左右どちらから見てもエンブレムが目に入る。「500C」や「595」のロゴもいちいちシャレていて、往時の雰囲気を伝える。運転席に座っても、ステアリングホイールの真ん中にサソリが鎮座しているから常に意識せざるを得ない。試乗車のレザーシートはブラックとブラウンのツートンで、アダルトでエロティックなムードが漂う。シートバックは高く、かなりの体格でも窮屈には感じないはずだ。座面の高さ調整機構はあるが、たいして低くはならない。

エンジンを始動させ、ダッシュボードの中心に位置するシフトボタンの中から「1」を押してスタートする。アルミニウム製のスポーツペダルは、ちょっとセンター寄りだ。アクセルひと踏みで、ツインエアとはまったく違う素性であることがわかる。一瞬のためらいのような間がなく、スムーズな発進だ。時間としてはごくわずかな差だと思うが、感覚的には大きな違いがある。

ダッシュボードの上には、小さな円形のメーターがぴょこんと飛び出している。ターボの過給圧を表示するために加えられているのだ。街乗りでゆったり走っている間は、ほとんど動きはない。高速道路の料金所ダッシュで、初めてこのメーターが存在感を示す。針が12時の位置を過ぎると、強烈な加速が始まるのだ。

 

「アバルト500」シリーズのエンジンはいずれも1.4リッターの直4ターボ。車種に応じてチューニングが異なり、今回の「595」が最高出力160psなのに対し、「500」は135ps、「695」は180psを発生する。
「アバルト500」シリーズのエンジンはいずれも1.4リッターの直4ターボ。車種に応じてチューニングが異なり、今回の「595」が最高出力160psなのに対し、「500」は135ps、「695」は180psを発生する。 拡大
運転席まわりの設計は基本的に「フィアット500」と共通だが、その雰囲気はぐっとスポーティー。
運転席まわりの設計は基本的に「フィアット500」と共通だが、その雰囲気はぐっとスポーティー。 拡大
シートはヘッドレスト一体型のスポーツタイプ。スポーティーな「コンペティツィオーネ」には、よりホールド性の高いSabelt製のシートが備えられる。
シートはヘッドレスト一体型のスポーツタイプ。スポーティーな「コンペティツィオーネ」には、よりホールド性の高いSabelt製のシートが備えられる。 拡大
ラゲッジルームの広さはハッチバックより3リッター少ない182リッター。開口部の大きさも最小限となっている。(クリックすると、シートの倒れる様子が見られます)
ラゲッジルームの広さはハッチバックより3リッター少ない182リッター。開口部の大きさも最小限となっている。(クリックすると、シートの倒れる様子が見られます) 拡大

ピーキーだったのは昔の話

山道では、この針が右へ左へ行ったり来たりする。常に右側に保つようにできればいいのだろうけれど、なかなかそうもいかない。ただ、ターボエンジンとはいっても低回転から十分なトルクがあり、多少のミスなら失速して苦労するようなことはなかった。アバルトというと、ついピーキーなエンジンじゃないかと想像してしまうが、それは昔の話。小排気量のエンジンをカリカリにチューンしていた時代は高回転を保つことが必須だったが、現代のアバルトはドライバーに寛容だ。

このメーターの真ん中に、「SPORT」という文字が見える。ダッシュボードのスイッチを押すとこれが赤く点灯し、モードが変わったことを知らせる。最大トルクが21.0kgmから23.5kgmに増大し、パワステの設定も変わる。そして、シフトもクイックになるのだ。

595に与えられるトランスミッションは、5段のシングルクラッチセミATのみである。シフトにはどうしてもタイムラグがあり、この感覚が好きになれないという人も多い。しかし、この595に関しては、あまり気にならなかった。正直なところ、ツインエアを速く走らせるには慣れが必要だ。特に急な登り坂をスムーズに走るには、ちょっとしたコツがいる。595は、ATモードにしていてもギクシャクする場面はなかったのだ。ステアリングホイールに備わるパドルを使えば、さらにスポーティーに走れる。身もふたもない話だが、少々の問題はパワーとトルクが解決してくれる。

595Cにはキャンバストップが備えられているが、そもそも2代目500ではこれが標準装備だった。エンジン音が車内にこもるため、それを外に放散するための窮余の策だったのだ。遮音技術の向上した現在では理由が異なってくる。むしろマフラーから発せられるスゴみのある音を聞くためにオープンにしたくなる。もちろん開閉は電動だ。全開にすると結構な風が吹きこむが、開放感の気持ちよさには代えられない。

以前はアバルトというと“小さなボディーにサソリの猛毒”などという定型句で語られることが多かった。しかし、サソリだって時代につれて変わっていく。燃費だって、満タン法で9.5km/リッターとまずまずだった。現代のサソリは、エレガントでなければ生きていけない。

(文=鈴木真人/写真=荒川正幸)

 

 
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「アバルト595/595C」のエンジンやシャシーは、基本的に「アバルト500」の「エッセエッセキット」装着車と同じ。サスペンションには、KONI製のFSDショックアブソーバーが装備される。
「アバルト595/595C」のエンジンやシャシーは、基本的に「アバルト500」の「エッセエッセキット」装着車と同じ。サスペンションには、KONI製のFSDショックアブソーバーが装備される。 拡大
トランスミッションはシングルクラッチの5段セミAT。前進や後退などの操作はスイッチで、変速はステアリングホイールのシフトパドルで行う。
トランスミッションはシングルクラッチの5段セミAT。前進や後退などの操作はスイッチで、変速はステアリングホイールのシフトパドルで行う。 拡大
 
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