多いに越したことはないが
昨年発売されたF30型「3シリーズ」はこの1年半ほどの間に続々とラインナップを拡大しているが、あらためて数えてみたら全部で56車種もあった。「クーペ」やひと回り大きなボディーの「グランツーリスモ」は勘定にいれず、BMWジャパンが日本仕様として現在ラインナップしている3シリーズのセダンとツーリングだけでも、パワートレインや駆動方式、トリムの違いで今やこれほどの数に上る。なんともびっくり、「マークII」三兄弟華やかなりし頃のトヨタも顔負けのバリエーション展開である。かつてはMTモデルひとつ輸入するのにも苦労し、その理由というか言い訳(?)を並べていたBMWジャパンゆえ、なおさらその変身ぶりにただ驚くばかり。これだけモデル数が増えると、在庫管理やディーラーサポートその他は大丈夫なのかと、かえって心配になってしまうほどだ。
もちろんユーザーにとっては、MT仕様やディーゼルターボ、ハイブリッド、それに4WDモデルなど、選べるバリエーションが多いのは基本的に大歓迎である。例えば、降雪地に住むためにできれば4WDが望ましいが、大きなSUVまでは必要ないと考えているユーザーにとっては、この4月に追加発売された3シリーズの「xDriveツーリング」、すなわちステーションワゴンの4WD版などは打ってつけのモデルと言えるのではないか。
という僕自身もセダン系4WDには憧れを抱いていた。BMWの四駆といえば、思い出すのは1980年代半ばから90年代初めにかけてのE30型3シリーズに存在した「325iX」だ。名高いスモールシックスを搭載し、プラネタリー式のセンターデフを装備したBMW初の市販フルタイム乗用車であり、雪国の若者の憧れの車だった。今思い出しても、サイズといいパワーといい、バランスに優れた素晴らしい4WDセダンだったが、ただでさえ手が届かない「325i」よりさらに高価だったのは言うまでもない。「アウディ・クワトロ」もそうだったが、本物の4WD車は昔から高いのである。
その後、雪山で「トヨタ・セリカ」があり得ない走破性を見せる映画のおかげか、WRC(世界ラリー選手権)が知られるようになったせいかは知らないが、4WDスポーツセダンの人気が高まった時代もあったが、今では三菱もスバルもWRCから撤退して久しく、ヨンク方面についてはごく一部の人のマニアックな話題に縮小してしまったようだ。高性能SUVのドライバーの多くは駆動方式などに興味はなさそうだし、メーカーのスタッフさえ「いやあどんな4WDですかって聞かれても。ヨンクはヨンクです」なんてことも珍しくない昨今だ。でも今回はかつてWRCを追いかけたラリー好きとして、webCG担当の懐の深さをいいことに余談から始めたい。