第10戦ハンガリーGP「シーズン前半戦の勢力図」【F1 2013 続報】

2013.07.29 自動車ニュース
ハンガリーGPを制したメルセデスのルイス・ハミルトン(写真左から3番目)、2位に終わったロータスのキミ・ライコネン(写真左端)、3位に入ったレッドブルのセバスチャン・ベッテル(写真右端)。(Photo=Red Bull Racing)
ハンガリーGPを制したメルセデスのルイス・ハミルトン(写真左から3番目)、2位に終わったロータスのキミ・ライコネン(写真左端)、3位に入ったレッドブルのセバスチャン・ベッテル(写真右端)。(Photo=Red Bull Racing)

【F1 2013 続報】第10戦ハンガリーGP「シーズン前半戦の勢力図」

2013年7月28日にハンガロリンク・サーキットで行われたF1世界選手権第10戦ハンガリーGP。ルイス・ハミルトンがポールポジションから今季初優勝を飾ったが、そこには“一発の速さはあるがロングランでタイヤに足を引っ張られる”というメルセデスの悪癖はみられなかった。シーズン折り返し地点のハンガリーGPで見えてきた、後半戦に向けての勢力図とは……。

ポールシッターのハミルトンが先頭で1コーナーへ。予選2位のベッテルもそのまま2位、3番グリッドのロメ・グロジャンは3位で続いた。(Photo=Mercedes)
ポールシッターのハミルトンが先頭で1コーナーへ。予選2位のベッテルもそのまま2位、3番グリッドのロメ・グロジャンは3位で続いた。(Photo=Mercedes)
ハミルトンは、得意とするハンガリーでメルセデス移籍後初優勝。ハンガロリンクでは自身通算4勝目、そして2年連続となるポール・トゥ・ウィンを飾った。メルセデスの悪癖である「レース中のタイヤのデグラデーション」をみじんも感じさせない勝利の影には、ピレリのニュータイヤの影響があるのかもしれない。(Photo=Mercedes)
ハミルトンは、得意とするハンガリーでメルセデス移籍後初優勝。ハンガロリンクでは自身通算4勝目、そして2年連続となるポール・トゥ・ウィンを飾った。メルセデスの悪癖である「レース中のタイヤのデグラデーション」をみじんも感じさせない勝利の影には、ピレリのニュータイヤの影響があるのかもしれない。(Photo=Mercedes)

■前半戦を締めくくる重要な一戦

前戦ドイツGPから3週間のインターバルを挟み、F1は真夏のハンガリーへとやってきた。全19戦で争われる2013年シーズンのちょうど折り返し地点、この後に約1カ月のサマーブレイクを控えた第10戦目は、後半戦のチャンピオンシップの行方を占う上で重要な一戦と位置づけられる。

これまでの9戦で4勝し、157点でポイントテーブルの最上位を堅持しているレッドブルのセバスチャン・ベッテル。前戦で母国初優勝を飾ったこのチャンピオンを追うのは、今季2勝しているフェラーリのフェルナンド・アロンソである。両者のギャップはハンガリー前までで34点あり、ベッテルはこの優位性をこのまま後半戦に持ち越したく、対するアロンソは少しでも切り崩したいところ。
ちなみに前年の戦況を振り返ると、ハンガリーGP終了時点でベッテルとアロンソの差は42点、この時はアロンソが大量リードで夏休みを迎えたが、シーズンの最後に笑ったのはベッテルの方。フェラーリのエースには複雑な気持ちを抱かせるであろう記録が残っている。

アロンソも前ばかり気にしてはいられない。ドライバーズランキング3位には開幕戦ウィナー、キミ・ライコネンが7点差で迫っているのだ。前戦、優勝目前までいったライコネン&ロータスは、持ち前のタイヤをいたわる走りを武器に、アロンソ&フェラーリを追い抜かんとしている。

ランキング4位のルイス・ハミルトンは首位ベッテルの58点ビハインド。メルセデスには、レースでのタイヤのデグラデーションという悪癖に加え、先のタイヤ・テスト騒動のペナルティーで、7月17日から3日間行われた、イギリスはシルバーストーンでのヤング・ドライバー・テストに参加できなかったというハンディキャップがのしかかる。

そのタイヤだが、ピレリはここハンガリーから新型を投入した。第8戦イギリスGPでのタイヤ・バースト問題を受け、ヤング・ドライバー・テストで各チームによって試されたニュータイヤは、2012年のコンストラクションと2013年のコンパウンドを合わせたもの。テストでは大きなトラブルもなくまずまずの評価を得られたようだ。今季前半で使われたタイヤよりも安定性に優れると言われており、これが今後の戦況にどう影響するのか注目されている。

さらにドイツGPで起きたマーク・ウェバー車の脱輪事故を受けて、ピットレーンのスピード制限が100km/hから80km/hに変更された。ピットレーンが341mのハンガロリンクでいえば、1回のピットストップで約4秒余計にかかるようになることから、ピット戦略上の修正も必要になると考えられる。

ツイスティーでスロー、追い抜きが難しいコースであるハンガロリンク。今年は例年以上に暑く、決勝日には気温35度、路面温度は50度を超える厳しい天候となった。

予選2位のベッテル(写真前)は、前を行くハミルトンではなく、後続のロメ・グロジャンやフェルナンド・アロンソを相手にした防戦に追われた。しかし3位表彰台でポイントリードを4点増やすことに成功。シーズン前半に、しっかりした足固めができた。(Photo=Red Bull Racing)
予選2位のベッテル(写真前)は、前を行くハミルトンではなく、後続のロメ・グロジャンやフェルナンド・アロンソを相手にした防戦に追われた。しかし3位表彰台でポイントリードを4点増やすことに成功。シーズン前半に、しっかりした足固めができた。(Photo=Red Bull Racing)

■ハミルトン、3戦連続のポールポジション

気温33度、路面温度45度という厳しい暑さのもと行われた土曜日の予選。トップ10グリッドを決めるQ3では、ポールポジションをかけた熱い戦いが繰り広げられた。

最初のアタックで、ベッテルはライバルを0.818秒も引き離す最速タイムをたたき出した。これをターゲットに各車最後のラップに挑んだのだが、ライコネン、ニコ・ロズベルグ、ロメ・グロジャンは、いずれもこの記録を上回ることができない。このままレッドブルがポールポジションを獲得するかと思われたが、最後の最後にハミルトンがわずか0.038秒差でポール奪取に成功。これで3戦連続、今季4回目の予選P1が決まった。

ベッテルは悔しい2番手グリッド、続いてロータスのグロジャン、ハミルトンのチームメイトであるロズベルグと並び、ポール争いに絡むことがなかったアロンソが5番手につけた。
ロータスのライコネンは予選6位、フェラーリのフェリッペ・マッサを間に挟み、ライコネンと来季のレッドブルのシートを争うトロロッソのダニエル・リチャルドが、好調をキープし8番グリッドを得た。
唯一Q3に進出したマクラーレン、セルジオ・ペレスは9位、そしてKERSとギアのトラブルに襲われたマーク・ウェバーのレッドブルは周回せず10番グリッドからレースにのぞむこととなった。

予選5位、決勝も5位。フェラーリのアロンソはメルセデス、レッドブル、ロータスらの優勝争いに絡めず、ドライバーズランキングでも3位に転落。10戦で2勝してはいるものの、シーズンが深まるにつれライバルに水をあけられつつある。なおレース後、前方のマシンから1秒以上離れているにも関わらずDRSが作動していたことが発覚、アロンソはおとがめなしに終わったが、フェラーリには罰金が科された。(Photo=Ferrari)
予選5位、決勝も5位。フェラーリのアロンソはメルセデス、レッドブル、ロータスらの優勝争いに絡めず、ドライバーズランキングでも3位に転落。10戦で2勝してはいるものの、シーズンが深まるにつれライバルに水をあけられつつある。なおレース後、前方のマシンから1秒以上離れているにも関わらずDRSが作動していたことが発覚、アロンソはおとがめなしに終わったが、フェラーリには罰金が科された。(Photo=Ferrari)

■過酷な状況下でハミルトン&メルセデスがポール・トゥ・ウィン

予選後にポールシッターのハミルトン自身が「レースは別」と悲観的なコメントを残していたが、フタを開けてみれば、メルセデスはソフト、ミディアム両タイヤで安定して速く、ひどいデグラデーションでズルズルと順位を下げるという“いつもの展開”はなかった。しかも気温35度、路面温度50度という、誰にとっても過酷な状況下でハミルトンはポール・トゥ・ウィンをやってのけたのだ。

ハンガリーを含めると今季メルセデスがポールポジションを取ったのは7回を数えるが、優勝は2勝どまり。2013年の最速マシンの名をほしいままにしているものの、レースではなかなか勝てないでいるスリー・ポインテッド・スターにとって、ひょっとすると新しいピレリタイヤは救世主となるかもしれない。そんな予感を抱かせるレースだった。

70周もの長丁場は、スタートから1位ハミルトン、2位ベッテル、3位グロジャンの接近戦となった。当初ハミルトンのリードはDRS作動域内の1秒以下で推移したが、6周目からは頭ひとつ出て、ベッテル対グロジャンの僅差の戦いにシフトしていった。

ハミルトンの勝利を決定付けたのは、最初のピットストップだった。
上位陣はライフの短いソフトタイヤでスタートしており、10周を過ぎるとピットが騒がしくなり始めた。トップのハミルトンは1.6秒のリードを築き10周目にピットイン。ソフトからミディアムに交換すると、予選で13位と振るわなかったマクラーレンのジェンソン・バトンの後ろ、8位でコースに復帰した。バトンはミディアム・スターターでタイヤ交換はまだ先。しかもマシンのペースが遅い上に、ここは抜きにくいハンガロリンクだ。このまま付き合わされたらライバルに先を越されてしまう危険性があったが、ハミルトンは大幅なタイムロスなくバトンを早々に料理。このことで勝利をぐっと近くにたぐり寄せることができた。

一方ハミルトンを追うベッテルは、やはり最初のタイヤ交換後にバトンを追う格好となったが、こちらがマクラーレンをオーバーテイクしたのは24周目のこと。この間、背後のグロジャン、アロンソに差を詰められてしまった。ベッテルの戦いは苦しくなり、そしてハミルトンには10秒というアドバンテージが転がり込み、勝敗は決定的になった。

今回の優勝争いに影響を与えたドライバーといっていいのが、マクラーレンのジェンソン・バトンだ。予選Q2落ちの13番グリッドからミディアムタイヤを履いて長めのスティントを走行。この間、バトンを早々にオーバーテイクできたソフト・スターターのハミルトンに対し、同じくソフトでスタートしたベッテルはやや足踏み。メルセデスは大量リードを築くことができた。バトン自身は1回少ない2ストップで7位入賞。(Photo=McLaren)
今回の優勝争いに影響を与えたドライバーといっていいのが、マクラーレンのジェンソン・バトンだ。予選Q2落ちの13番グリッドからミディアムタイヤを履いて長めのスティントを走行。この間、バトンを早々にオーバーテイクできたソフト・スターターのハミルトンに対し、同じくソフトでスタートしたベッテルはやや足踏み。メルセデスは大量リードを築くことができた。バトン自身は1回少ない2ストップで7位入賞。(Photo=McLaren)

■ライコネン、得意の1回少ないタイヤ交換で2位

予選で一発の速さに欠くという課題は克服されていないが、レース中タイヤを長持ちさせることに長(た)けているという強みも変わらないのがライコネン&ロータスだ。予選6位からレースの大半を6~5位という順位で過ごした開幕戦ウィナーは、3ストッパーが大勢を占めた今回、得意の1回少ない2ストップ作戦でレース終盤2位に躍り出た。

55周目、ベッテルは3回目のタイヤ交換を済ませるとライコネンに先行を許した。レッドブルのエースは、以降をライコネン攻略に費やし、ファステストラップを更新し追いかけたのだが、ライコネンの手練手管のドライブで万事休すとなった。

惜しくも3位に終わったベッテルだったが、僚友ウェバーの4位入賞がタイトルを争うアロンソを5位に追いやったこと、またポイントリードが4点増えて38点となったことなど、レース内容はともかく、シーズン前半でタイトルへの足固めができたことは大きな収穫といえるだろう。

一方、今季3勝目で勢いづくメルセデス、したたかにポイントを稼ぐロータスに対し、フェラーリの劣勢が否めなくなってきた。ドライバーズランキングで3位に落ちたアロンソは、5月以来勝利がなく今回も精彩を欠いた。フェラーリはコンストラクターズランキングでもメルセデスの14点後方、3位に甘んじており、4位ロータスからは11点差で追われている。

2013年シーズン前半の10戦で見えてきたこの勢力図は、果たしてそのまま後半の9戦に引き継がれるのか、あるいは塗り替えられるのか。夏休み明け最初のレースは8月25日、ベルギーGPとなる。

(文=bg)

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