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ホンダ・アコード ハイブリッド EX(FF)

遠くまで出かけたくなる 2013.08.14 試乗記 セダン市場での再起をかけ、ホンダが送り込んだ新型車「アコード ハイブリッド」。「燃費がいい」の一言では言い尽くせない、ハイブリッドセダンの本当の魅力とは?

「カムリ」とガチンコ勝負

日本の先代「ホンダ・アコード」は実質的には欧州アコードと共通で、北米アコードは別物だった。ただし、先代の北米版は日本でも「ホンダ・インスパイア」として売られた。新型アコード ハイブリッド(以下アコード)はもはや「トヨタ・クラウン」さえ超えるビッグサイズで、先代の日本アコードと比較するとホイールベースで70mm、全長で185mmもデカイのだが、新型アコードと厳密に比べるべきは、だから旧型インスパイアである。旧型インスパイアと比較すると、新型アコードは逆に少し小さくなった。ダウンサイジングの波はアメリカ市場にも静かにやってきている。

そんな新型アコードは発売1カ月となる7月下旬時点で、7000台超を受注したとか。ひとまず上々の滑り出し。アメリカでも日本でも最大の宿敵である「トヨタ・カムリ」と同様に、あえて“ハイブリッド専用車”とした国内戦略が功を奏したということだろう。
日本市場での地位を失いかけていたカムリは、ハイブリッド戦略で息を吹き返したといっていい。現行型カムリのデビュー当初の販売目標は月間500台だったが、実際にはエコカー補助金が残っていた昨年(2012年)前半までは月間2000台を超えることもあり、補助金終了後も月間平均で1000台レベルを手堅くキープしている。新型アコードの国内販売目標が“月間1000台”と定められているのも、こうしたカムリの実績を参考にしているのは明らかだ。

新型アコードは販売目標だけでなく、価格も性能もカムリとガチンコ。パワートレインのシステム出力もともに200ps級(アコードが2リッターベースで199ps、カムリが2.5リッターベースで205ps)である。見かけの本体価格には多少のズレがあるが、例えばカムリの「Gパッケージ」にHDDナビをオプション追加すると355万円強で、「アコードLX」(365万円)とごく近い。厳密にはアコードLXのほうが10万円ほど高いが、アコードにはカムリにはない助手席電動調整機能なども付いて、実質価格にほとんど差はない。
今回の試乗車はそれよりさらに25万円高い「EX」だが、追突防止オートブレーキにレーンキープアシスト(操舵<そうだ>アシスト付き)、レーダー式のアダプティブクルーズコントロール……といったカムリにはない最先端のアドバンスト・セーフティ系装備がほぼすべてそろう。これは新型アコードの明確な売りである。

従来モデルから全長を185mm、全高を25mm拡大。1850mmの全幅は変わらないが、パッケージングの工夫により、室内幅は40mm広げられている。
従来モデルから全長を185mm、全高を25mm拡大。1850mmの全幅は変わらないが、パッケージングの工夫により、室内幅は40mm広げられている。
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フロントまわりでは、ヘッドランプやグリルなどにブルーのアクセントを採用。上級グレードの「EX」では、グリル中央の「H」のエンブレムにCMBS(衝突軽減ブレーキ)やアダプティブクルーズコントロールのセンサーが内蔵される。
フロントまわりでは、ヘッドランプやグリルなどにブルーのアクセントを採用。上級グレードの「EX」では、グリル中央の「H」のエンブレムにCMBS(衝突軽減ブレーキ)やアダプティブクルーズコントロールのセンサーが内蔵される。
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メーカー純正HDDナビや前席パワーシート、左右独立調整機能付きオートエアコンなど、装備は充実。内装色はブラックのみの設定となる。(プラグインハイブリッド車の内装色はベージュ)
メーカー純正HDDナビや前席パワーシート、左右独立調整機能付きオートエアコンなど、装備は充実。内装色はブラックのみの設定となる。(プラグインハイブリッド車の内装色はベージュ) 拡大
メーター内のマルチファンクションディスプレイには、燃費情報や推定走行可能距離、ハイブリッドシステムの稼働状況などの表示に加え、クルマのアイコンと横線の位置で加減速Gを表示し、穏やかで燃費にやさしい運転を促す「エコガイド」機能も備わっている。
メーター内のマルチファンクションディスプレイには、燃費情報や推定走行可能距離、ハイブリッドシステムの稼働状況などの表示に加え、クルマのアイコンと横線の位置で加減速Gを表示し、穏やかで燃費にやさしい運転を促す「エコガイド」機能も備わっている。 拡大
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駆動力の主役はモーター

新型アコードの既出のインプレッションにおける森 慶太さんの「ほぼ電気自動車」という表現は正しい。新しいアコードは「エンジン停止のままバッテリー残存電力によるモーター走行(≒ピュア電気自動車モード)」と「エンジン発電+バッテリー電力によるモーター走行(≒シリーズハイブリッドモード)」、そして「モーター+エンジンのパラレル動力走行(≒パラレルハイブリッドモード)」の3モードを、状況に応じて自動的に使い分けながら走る。

こうして文字にすると、その原理はトヨタの「THS」、あるいは日産やドイツ車などに見られる1モーター2クラッチ方式のどちらかに近いように思えるかもしれない。しかし、実際のアコードのハイブリッド動力システム「i-MMD」はそのどちらとも異なり、最も似ているのはあえて言えば「三菱アウトランダーPHEV」であり、その特徴を端的に表現するなら「ほぼ電気自動車」となるだろう。モーターもエンジンも、タイヤまでの減速比はそれぞれ1速ずつであり、厳密な意味での変速機構ももたない。

アコードのスロットルペダルを床まで踏みこんでハイブリッドシステムがフル出力を発生するときには、エンジンはタイヤから切り離された状態でフル発電に徹する。この点がトヨタ方式や他社の1モーター2クラッチ式ハイブリッドとホンダi-MMDとの大きな違いである。

クラッチがつながってエンジンが駆動に直接参画するのは車速70km/h以上で、かつあまり負荷のかからない巡航状態のときだけ。実際に、高速巡航しているつもりでも、システムモニターで見ていると、スロットルの踏み加減や道路の勾配によって、クラッチは頻繁に断続している。神経質にチェックしてもクラッチ断続の瞬間を感じることはほとんど不可能。ただ、クラッチがつながっている状態では、いかにもエンジン車らしい振動がかすかにペダルやフロア、ステアリングなどに伝わるので、それとわかる。ホンダ開発担当氏によれば、エンジンの減速比は「普通のエンジン車のトップギアくらい」とのことなので、車速100km/h以下だとエンジンはかなり低回転なのだろう。そう考えれば、その振動は「ノッキング一歩手前」的なブルブル感と言えなくもない。

もっとも、「ほぼ電気自動車」のアコードは、そうではない状態が素晴らしく静かで滑らかなので、そのブルブルの絶対値は決して大きいものではない。これはアコードの名誉のために言っておく。

ボンネットの下には、2リッター直4エンジンのほか、ジェネレーターやモーターと、それらの制御や駆動電圧の昇圧などを行うPCU(パワーコントロールユニット)などがぎっしりと収まっている。
ボンネットの下には、2リッター直4エンジンのほか、ジェネレーターやモーターと、それらの制御や駆動電圧の昇圧などを行うPCU(パワーコントロールユニット)などがぎっしりと収まっている。 拡大
シートは中央部の表皮にバイオファブリック、サイド部に再生PET素材を採用したものが標準。テスト車はオプションのレザーシートを装備していた。
シートは中央部の表皮にバイオファブリック、サイド部に再生PET素材を採用したものが標準。テスト車はオプションのレザーシートを装備していた。 拡大
従来モデルより70mm延びたホイールベースの恩恵もあって、後席の足元は広々。前後席間距離は90mm広げられている。
従来モデルより70mm延びたホイールベースの恩恵もあって、後席の足元は広々。前後席間距離は90mm広げられている。 拡大
トランクルームの容量は381リッターで、床下に17リッターの収納スペースも確保。後席との間にバッテリーやDC-DCコンバーターが収まる関係で、後席の可倒機構やトランクスルーなどの機能は備わっていない。
トランクルームの容量は381リッターで、床下に17リッターの収納スペースも確保。後席との間にバッテリーやDC-DCコンバーターが収まる関係で、後席の可倒機構やトランクスルーなどの機能は備わっていない。 拡大

「燃費がいい」だけではない

新しいハイブリッドシステムばかりに注目したくなるアコードだが、実際にはホンダ初のブレーキ・バイ・ワイヤからプラットフォーム、そしてサスペンションにいたるまで、ほぼ全身がゼロから新開発された力作である。

特に良路での滑るようにスムーズな乗り心地としっとり落ち着いた操舵感覚、そしてトヨタより明確にリアル感のあるブレーキフィールは、理屈を伴わないと感銘を受けにくいパワートレイン以上に、わかりやすく実利のあるアコードの魅力である。リアタイヤのスタビリティーも高く、常に安定した弱アンダーステアを保つ安心感の高いモダンなシャシーである。
また、アコードはカムリより電気依存度が高いシステム構成で、カムリとほぼ同等のシステム出力を確保している。パワーウエイトレシオもカムリより低いのだが、実際の加減速レスポンスやパンチ感は確実にカムリのそれをしのぐ。いかにも電動動力のメリットが前面に押し出された小気味いいフィーリングである。
ただ、新型アコードに熟成・改良の余地があるとすれば、路面が荒れると乗り心地が良路での素晴らしい落ち着きから想像するよりバタつきがちなこと、そして中低速のピックアップから期待するほど高速で伸びない動力性能(これは電気系動力の宿命でもあるけど)あたりだろうか。

アコードはごく普通に走っているかぎり、シャシーもパワートレインも滑らかかつリニアで、レスポンシブなキャラで統一されており、そこはかとないスポーティー感がある。ただ、他のハイブリッド車もそうなのだが、走行条件や運転のしかたによって印象はけっこう変わるタイプでもある。ハッキリ言うと、アコードの世界観は、エンジンをブン回してメリハリきかせて振り回すほど“らしさ”を発揮した昭和~平成初期のホンダとはちょっとちがう。スポーティーな乗り味を味わうにしても、あくまで“腹8分目”くらいの運転で寸止めしておくのが、涼しげでさわやかで滑らかなアコードの味わいを堪能するコツである。

また、アコードのようなビッグFFセダンに乗るたびに「遠くに行くなら、やっぱりこういうクルマがいいなあ」といつもしみじみ思う。3ボックスボディーならではの静粛性と快適性、低重心による安定感、ロングホイールベースFFならではの直進性……といったアコードの美点はやはりロングドライブで際立つ。それに新型アコードなら高速巡航で燃費20km/リッターは手堅い。燃料タンク容量は60リッターなので、特に意識せずとも無給油航続距離で1200kmくらいは軽い……となれば、おのずと遠くに行きたくなるというもの。運転好き&ドライブ好きにとって、こういうビッグセダンこそ高い燃費性能は実利のある機能である。

カムリ、そしてこのアコードと、ビッグFFセダンがハイブリッド化で再ブレイクした理由は、こんなところにもあるのかもしれない。

(文=佐野弘宗/写真=高橋信宏)

ボディー骨格の55.8%にハイテン材を採用。ボンネットやフロントのサブフレームにアルミを用いるなど、軽量化とボディー剛性の強化を図っている。
ボディー骨格の55.8%にハイテン材を採用。ボンネットやフロントのサブフレームにアルミを用いるなど、軽量化とボディー剛性の強化を図っている。
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足元は225/50R17 94Vの低燃費タイヤ(テスト車は「ダンロップ・エナセーブ050」を装着)と17インチアルミホイールの組み合わせ。ブレーキにはドライバーのペダル操作に応じて、回生ブレーキと油圧ブレーキを協調制御するブレーキ・バイ・ワイヤ技術を採用している。
足元は225/50R17 94Vの低燃費タイヤ(テスト車は「ダンロップ・エナセーブ050」を装着)と17インチアルミホイールの組み合わせ。ブレーキにはドライバーのペダル操作に応じて、回生ブレーキと油圧ブレーキを協調制御するブレーキ・バイ・ワイヤ技術を採用している。 拡大
サスペンションには前後ともに、大きなストロークに対しては強い減衰力を、細かなストロークに対しては弱い減衰力を発揮する振幅感応型ダンパーを採用。操縦安定性の高さと快適な乗り心地の両立を追及している。
サスペンションには前後ともに、大きなストロークに対しては強い減衰力を、細かなストロークに対しては弱い減衰力を発揮する振幅感応型ダンパーを採用。操縦安定性の高さと快適な乗り心地の両立を追及している。 拡大
燃費はJC08モードで30.0km/リッター。ホンダはこの「アコード ハイブリッド」の一般販売に加え、2013年内をめどに、「アコード プラグインハイブリッド」の一般向けリース販売の開始を予定している。
燃費はJC08モードで30.0km/リッター。ホンダはこの「アコード ハイブリッド」の一般販売に加え、2013年内をめどに、「アコード プラグインハイブリッド」の一般向けリース販売の開始を予定している。
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ホンダ・アコード ハイブリッド EX(FF)【試乗記】の画像 拡大

テスト車のデータ

ホンダ・アコード ハイブリッド EX

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4915×1850×1465mm
ホイールベース:2775mm
車重:1630kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
エンジン最高出力:143ps(105kW)/6200rpm
エンジン最大トルク:16.8kgm(165Nm)/3500-6000rpm
モーター最高出力:169ps(124kW)/3857-8000rpm
モーター最大トルク:31.3kgm(307Nm)/0-3857rpm
タイヤ:(前)225/50R17 94V/(後)225/50R17 94V(ダンロップ・エナセーブ050)
燃費:30.0km/リッター(JC08モード)
価格:390万円/テスト車=414万1500円
オプション装備:ボディーカラー<プレミアムスパークルブラック・パール>(4万2000円)/レザーパッケージ(19万9500円)

テスト車の年式:2013年型
テスト車の走行距離:1584km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:594.7km
使用燃料:35.7リッター
参考燃費:16.7km/リッター(満タン法)/17.3km/リッター(車載燃費計計測値)
 

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アコードホンダ試乗記

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