第60回:悪質ドライバーに警告……お仕置きされるぞ!
『クロニクル』

2013.09.27 エッセイ

あおってきたら、超能力で反撃

いくらクルマの性能がよくなっても、交通事故はなくならない。悪質なドライバーがいるからだ。ウィンカーを出さずに突然車線変更する、直進車が迫っているのに無理に右折しようとする、生活道路を危険な速度で走行する……。街を走っていると、たびたびそういう場面に遭遇する。運転免許を持つべきでないやからが、のうのうとまかり通っているのだ。後ろから執拗(しつよう)にあおってくるようなヤツには、ボンドカーのような装備で弾を撃ち込んでやりたくなることがある。あるいは、まきびし攻撃でもいい。

『クロニクル』では、もっと効率的な方法が描かれている。超能力を使うのだ。頭の中で強く願うだけで、乱暴な運転手の乗ったクルマの進路を変えてしまう。それができれば最強だ。自分にそんな力があったなら、使わずにいられるとは思えない。やられたらやり返す。倍返し……いや、これは別の物語だ。

主人公のアンドリュー(デイン・デハーン)は、ぼっち系のオタク青年だ。学校に友達はおらず、家に帰れば病気で寝たきりの母親と飲んだくれで暴力的な父。どこにも居場所のない彼の相棒は、ボロいビデオカメラだけだ。昼休みにグラウンドの観客席にひとり座ってパンを頬張る時も、家で酒に酔った父親が殴りかかってくる時も、カメラですべてを記録している。耐えがたい現実だが、それをクロニクルとして対象化することでようやく精神の均衡を保っている。

(C)2011 Twentieth Century Fox 



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鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。