第15戦日本GP「困難をはねのけて5連勝」【F1 2013 続報】

2013.10.13 自動車ニュース
25回目を迎えた、鈴鹿サーキットでのF1日本GPの表彰台。レッドブルのセバスチャン・ベッテル(写真左から3番目)は5連勝、今季9勝、自身通算35勝目を記録。2位にはポールシッターのマーク・ウェバー(同2番目)が入り、レッドブルは1-2フィニッシュを達成した。3位はロータスのロメ・グロジャン(右端)だった。(Photo=Red Bull Racing)
25回目を迎えた、鈴鹿サーキットでのF1日本GPの表彰台。レッドブルのセバスチャン・ベッテル(写真左から3番目)は5連勝、今季9勝、自身通算35勝目を記録。2位にはポールシッターのマーク・ウェバー(同2番目)が入り、レッドブルは1-2フィニッシュを達成した。3位はロータスのロメ・グロジャン(右端)だった。(Photo=Red Bull Racing)

【F1 2013 続報】第15戦日本GP「困難をはねのけて5連勝」

2013年10月13日、三重県の鈴鹿サーキットで行われたF1世界選手権第15戦日本GP。レッドブルのセバスチャン・ベッテルの4連覇決定がかかった一戦だったが、ベッテルはフリー走行と予選でKERSトラブル、決勝スタートでは3位に落ちるという困難に見舞われた。それでも見事な挽回劇を披露し、チャンピオンは決められなかったものの、自身初の5連勝を飾った。

このレースで優勝し、ランキング2位のフェルナンド・アロンソが9位以下なら4度目のタイトル獲得となるベッテル。しかし土曜日のフリー走行と予選Q3の最初のアタックではKERSのトラブルに見舞われ、連続ポールポジションも途切れた。さらに決勝スタートでは2番グリッドから3位に落ちたものの、そこからの挽回は見事だった。困難をはねのけてつかんだ5連勝目はその前の4勝とはまた違う、格別の勝利となったはずである。アロンソ4位でチャンピオン決定は次戦以降におあずけ。(Photo=Red Bull Racing)
このレースで優勝し、ランキング2位のフェルナンド・アロンソが9位以下なら4度目のタイトル獲得となるベッテル。しかし土曜日のフリー走行と予選Q3の最初のアタックではKERSのトラブルに見舞われ、連続ポールポジションも途切れた。さらに決勝スタートでは2番グリッドから3位に落ちたものの、そこからの挽回は見事だった。困難をはねのけてつかんだ5連勝目はその前の4勝とはまた違う、格別の勝利となったはずである。アロンソ4位でチャンピオン決定は次戦以降におあずけ。(Photo=Red Bull Racing)
今年初、自身通算11回目のポールポジションを獲得したレッドブルのウェバー(手前)。実は予選でベッテルを上回るのも今年初めてのことだった。日本GPを含めて残り5戦はF1へのフェアウェル・キャンペーン。是が非でもドライバーズサーキット、鈴鹿での一戦を制し勝利数を「10」としたかったが、スタートでグロジャンという伏兵にあい、3ストップという賭けがうまくいかず、それでも2位でレースを終えることができた。(Photo=Red Bull Racing)
今年初、自身通算11回目のポールポジションを獲得したレッドブルのウェバー(手前)。実は予選でベッテルを上回るのも今年初めてのことだった。日本GPを含めて残り5戦はF1へのフェアウェル・キャンペーン。是が非でもドライバーズサーキット、鈴鹿での一戦を制し勝利数を「10」としたかったが、スタートでグロジャンという伏兵にあい、3ストップという賭けがうまくいかず、それでも2位でレースを終えることができた。(Photo=Red Bull Racing)

■チャンピオン決定戦「第一幕」

ネルソン・ピケ、アイルトン・セナ、アラン・プロスト、デーモン・ヒル、ミカ・ハッキネン、ミハエル・シューマッハー──かつてそうそうたるドライバーがタイトルを獲得した、記録と記憶に残る場所であり、1987年の初開催からシーズン終盤の顔なじみとなった鈴鹿サーキットに、25回目となるF1サーカスがやってきた。
多くのチャンピオン誕生を見届けてきた鈴鹿。その回数はこれまで11回を数え、選手権初期に記録されたイタリアはモンツァでの最多レコードよりわずか1回だけ少ないという。そして今年も、セバスチャン・ベッテルの4連覇がかかったチャンピオン決定戦となった。

ただし今回は条件が若干きつめ。ベッテルは自身が優勝し、かつ77点差でチャンピオンシップ2位につけるフェルナンド・アロンソが「9位以下」でゴールしないと、日本ではタイトルが決められない。
今季アロンソが記録した最も低い順位は、DRSの不調に泣いた第4戦バーレーンGPの8位フロントウイング脱落で早々にリタイアせざるを得なかった第2戦マレーシアGP以外、全戦で8位以上に入っている事実を勘案すれば、さしずめ日本GPは決定戦「第一幕」という趣であった。

しかし、鈴鹿でベッテルが自身初の5連勝を達成する可能性は、タイトル獲得のそれと比べると、ぐっと現実味を帯びていた。何しろ直前の4連勝中のうち、シンガポール、韓国と連続で「グランドスラム」(ポールポジション、ファステストラップ、全周リード)という完勝を成し遂げているほど、今のベッテルには勢いがあった。2戦立て続けのグランドスラムは、過去にアルベルト・アスカリとジム・クラークだけしか達成していない、史上3人目の快挙でもある。

さらにベッテル優位を裏付けるデータとして、鈴鹿で過去4戦ポールポジションを決め、3回優勝しているという事実もある。この名うてのテクニカルサーキットは、ベッテルの、そしてレッドブルのテリトリーともいえた。

チャンピオン獲得は難しいかもしれないが、週末を前にベッテルは「鈴鹿で決められればいい」という思いをこぼしており、「ここでタイトルを決めるのは特別なこと。素晴らしい場所、スペシャルなコース、熱狂的なファンもいるし」というコメントも聞かれていた。

ウィナーのベッテル(奥)から「ファンタスティックなドライビングだった」と称賛されたグロジャン(手前)。好スタートで1位の座を奪いレース序盤をリード。初優勝を目指したが、終盤にベッテル、ウェバーとニュータイヤ履くレッドブルにコース上で抜かれ結果3位。しかし“クラッシャー”というありがたくない異名を頂戴した昨年から大きく成長した姿を見せることができた。(Photo=Red Bull Racing)
ウィナーのベッテル(奥)から「ファンタスティックなドライビングだった」と称賛されたグロジャン(手前)。好スタートで1位の座を奪いレース序盤をリード。初優勝を目指したが、終盤にベッテル、ウェバーとニュータイヤ履くレッドブルにコース上で抜かれ結果3位。しかし“クラッシャー”というありがたくない異名を頂戴した昨年から大きく成長した姿を見せることができた。(Photo=Red Bull Racing)

■ベッテルにトラブル、ウェバーが今季初のポールポジション

ベッテルのみならず多くのドライバーが“特別”と絶賛する鈴鹿サーキット。一瞬のミスにも寛容でいてくれない難関コースでは、今年もセルジオ・ペレスやパストール・マルドナドが壁の餌食になり、また強い風の影響もあってか、アロンソやルイス・ハミルトン、キミ・ライコネンといった名手たちも挙動を乱しコースを外れるなどしていた。

そんな中、土曜日の予選直前に行われたフリー走行からベッテルがつまずき始めた。レッドブルの数少ない泣き所、KERSのトラブルでセッションをフルに使えなかったのだ。予選になってもKERSが足を引っぱり、トップ10グリッドを決めるQ3の、最初のアタックはこの電気ブースト機能なしで走行。最速だったチームメイトのマーク・ウェバーに0.4秒の先行を許した。

すかさずピットに戻り挑んだ2回目のフライングラップ、ベッテルのKERSは元に戻ったがウェバーを追い越すことはできず、逆にウェバーはタイムをさらに更新して、今季初のポールポジション奪取に成功した。日本GPを含めあと5戦でF1を去るウェバーにとっては、通算11回目の予選P1だった。
連続ポールは「3」でストップしたベッテルは2番手。レッドブルは2010年、2012年に次いで鈴鹿でフロントローを独占した。

予選3位を奪ったのはメルセデスのルイス・ハミルトン。続いてロータスのロメ・グロジャン、フェラーリのフェリッペ・マッサ、その後ろにメルセデスのニコ・ロズベルグが並んだ。またシーズン後半戦に上り調子のザウバーは、ニコ・ヒュルケンベルグがQ3に進出、7番グリッドを得た。
そして8番グリッドに、ようやくフェラーリのアロンソ。既にチャンピオンになることは諦めているが、チームはメルセデスとコンストラクターズチャンピオンシップ2位の座を争っている。昨年同様に事故に巻き込まれる可能性もあり、グリッド中位には注意が必要だ。ロータスのライコネン9番グリッド、そしてマクラーレンのジェンソン・バトンは10番手から、53周のレースに臨むこととなった。

 
タイトル獲得は絶望的だが、ランキング2位のアロンソ(手前)は自らのレースをこなした。予選8位からスタートで6位、レース中盤には5位と駒を進め、シーズン後半戦になって勢いに乗るザウバーのニコ・ヒュルケンベルグを仕留めて4位でフィニッシュした。(Photo=Ferrari)
タイトル獲得は絶望的だが、ランキング2位のアロンソ(手前)は自らのレースをこなした。予選8位からスタートで6位、レース中盤には5位と駒を進め、シーズン後半戦になって勢いに乗るザウバーのニコ・ヒュルケンベルグを仕留めて4位でフィニッシュした。(Photo=Ferrari)
ザウバーのヒュルケンベルグ(手前)は、予選7位から韓国GP同様に4位まで順位を上げたが、今回はアロンソ、キミ・ライコネンに先行を許してしまい結果6位。ザウバーはルーキーのエステバン・グティエレスも力走し、キャリア初得点となる7位入賞を果たした。(Photo=Sauber)
ザウバーのヒュルケンベルグ(手前)は、予選7位から韓国GP同様に4位まで順位を上げたが、今回はアロンソ、キミ・ライコネンに先行を許してしまい結果6位。ザウバーはルーキーのエステバン・グティエレスも力走し、キャリア初得点となる7位入賞を果たした。(Photo=Sauber)

■スタートでグロジャンがトップ

秋晴れで迎えた決勝日、戦況はスタートから動いた。シグナルが消えた直後、最前列でもたつくレッドブルの2台に、ハミルトンとグロジャンが襲いかかったのだ。ベッテルを間に挟み、左からハミルトン、右の最もイン寄りからグロジャンが接近。グロジャンはウェバーをもオーバーテイクし、1コーナーをトップで通過した。一方ハミルトンはベッテルと接触しタイヤを傷めてしまい、メルセデスは早々に優勝戦線から脱落した。
1位グロジャン、2位ウェバー、3位ベッテル、4位ロズベルグ、5位マッサ、そして6位にアロンソという順位でオープニングラップが終了した。

10周過ぎからは、各車最初のタイヤ交換に飛び込み始めた。2台を除く全車が柔らかめのミディアムタイヤを履いてスタートしたのに対し、あえて硬めのハードを選んだダニエル・リチャルドのトロロッソが無交換で4位の座に居座り、1回目のピットストップを22周目まで引っ張った。これでグロジャン、ウェバー、ベッテルの先頭集団と後続との間にギャップが築かれ、この時点で優勝争いは3人に絞られた。

25周目、首位グロジャンとの差が0.8秒まで縮まった時点で、2位ウェバーが2度目のタイヤ交換を行った。レッドブルはウェバーを3ストップとし、2ストップをもくろむ1位グロジャン、2位ベッテルと作戦を分けてきた。結局、2位でレースを終えることになるウェバーだったが、このチームの戦術変更に疑問を投げかけており、「3ストップへのスイッチにはちょっと驚いた」とレース後に語っている。

2011年に鈴鹿を制したジェンソン・バトン。シーズン当初の絶不調からコンスタントに得点できるようになったマクラーレンを駆り、10番グリッドから9位でフィニッシュした。日本GP特別仕様のヘルメットにはスモウレスラーのイラストが。(Photo=McLaren)
2011年に鈴鹿を制したジェンソン・バトン。シーズン当初の絶不調からコンスタントに得点できるようになったマクラーレンを駆り、10番グリッドから9位でフィニッシュした。日本GP特別仕様のヘルメットにはスモウレスラーのイラストが。(Photo=McLaren)
ドライバーや海外メディアから「いつも熱く応援してくれる」といわれる日本のF1ファン。ここには、強過ぎるからという理由でベッテルにブーイングを浴びせるやからはいない。1987年の初開催から、25回目を迎えた鈴鹿でのF1。ちゃんとこの国に定着していると思わせるシーンだ。(Photo=Red Bull Racing)
ドライバーや海外メディアから「いつも熱く応援してくれる」といわれる日本のF1ファン。ここには、強過ぎるからという理由でベッテルにブーイングを浴びせるやからはいない。1987年の初開催から、25回目を迎えた鈴鹿でのF1。ちゃんとこの国に定着していると思わせるシーンだ。(Photo=Red Bull Racing)

■ベッテル、3位からトップを奪い5連勝

30周目、1位グロジャンが2度目にして最後のタイヤ交換を終えると、まだ1回しかピットに入っていないベッテルは、首位の座からペースを上げ始めた。また3回目のピット作業を残すウェバーは、グロジャンのアンダーカットに(取りあえず)成功、ベッテル1位、ウェバー2位のレッドブル1-2がこの時点で出来上がった。

古いタイヤに苦しみペースが伸びないトップのベッテルは、何とか38周まで2度目のタイヤ交換を我慢。コースに復帰すると、1位ウェバー(もう1回ストップ必要)、2位グロジャンに次ぐ3位に落ちていたが、ここからのベッテルのカムバックは圧巻だった。
ニュータイヤのアドバンテージを生かして2秒あったグロジャンとの差を瞬く間に削り取り、40周目の高速コーナー「130R」でロータスの背後についたレッドブルは、最終コーナーを過ぎてメインストレートを駆け抜けると、DRSの威力を存分に発揮しオーバーテイク。ベッテルはこれで2位、実質首位の座を奪還した。

ウェバーが3度目のタイヤ交換を済ませたのは43周目のこと。これで1位ベッテル、2位グロジャン、3位ウェバーとなり、もっともタイヤがきついグロジャンは窮地に追い込まれた。フレッシュタイヤのウェバーはベッテルほどやすやすとグロジャンを抜くことができなかったが、あと2周という時点でようやく2位に躍進。レッドブルは2010年に次ぐ2度目の鈴鹿1-2フィニッシュを飾った。

ランキング2位のアロンソは、前戦韓国GPでも力走を披露したヒュルケンベルグを抜き、4位でゴールしてベッテルのタイトル獲得を阻止した。とはいえ次の「決定戦 第二幕」ではそうはいかないかもしれない。

破竹の5連勝、今季9勝目をマークし、297点で2位アロンソに90点差をつけたベッテルは、次戦5位以上であればチャンピオンになれるのだ。その舞台は、今年で3回目を迎え、過去2年でベッテルが連勝しているインドGP。決勝は10月27日に行われる。

(文=bg)

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