成長の壁に当たる中国メーカー【北京ショー2014】

2014.04.25 自動車ニュース
長城(グレートウォール)の新型コンパクトSUV「哈弗H2」。
長城(グレートウォール)の新型コンパクトSUV「哈弗H2」。

【北京ショー2014】成長の壁に当たる中国メーカー

4月20日に開幕した北京モーターショー2014。地元中国メーカーのスタンドでは小型のセダンやSUVの姿が目立った。今、中国市場ではどんな“国産車”に人気が集まっているのか。そして中国メーカーはどんな問題に直面しているのか。

長城の小型SUV「哈弗H6」は、2013年の中国ブランド車販売ランキングでトップに立った。
長城の小型SUV「哈弗H6」は、2013年の中国ブランド車販売ランキングでトップに立った。

■近年は独自デザインが主流

北京モーターショーの楽しみのひとつは、日本の路上では見ることのない中国メーカーのクルマをまとめて観察できることだ。中国車といえば、7~8年前は日本車などの外観をそっくりまねた「コピー車」が珍しくなかったが、近年は独自のデザインが主流になっている。ボディーパネルの立て付けや内装の質感も年々向上。展示車両を見る限り、外資系ブランドとの落差はますます縮まってきたように思える。

そうなると、中国市場では地場メーカーが「ホームグラウンド」の強みを生かして躍進しそうなものだ。ところが、現実にはそうなっていない。2013年の乗用車販売台数に占める中国ブランド車のシェアは40.3%と、前年(41.9%)よりわずかながら低下してしまった。中国メーカーは今、成長の壁に突き当たっているのである。

「哈弗H2」はツートンカラーを採用するなど、最新の流行を取り入れている。
「哈弗H2」はツートンカラーを採用するなど、最新の流行を取り入れている。

■一番売れているのはSUVの「哈弗H6」

今回の北京ショーで、中国メーカーは87台の新型車を初公開。前回(2012年)よりたった3台増えただけで、会場の話題をさらうような個性的なクルマも見当たらず、勢い不足は否めなかった。

そんななか、ひとり気を吐いていたのがSUVを得意とする長城(グレートウォール)だ。同社の小型SUV「哈弗H6」は、2013年に21万8000台を販売。中国ブランド車の販売台数ランキングで、SUVとして初めてトップに立った。中国では都市部を中心にSUVの人気が急速に高まっているが、外資系ブランドの多くはSUVをプレミアム車種と位置付けており、セダンに比べて割高感がある。哈弗H6は都市型SUVらしいスタイリッシュな外観と10万~13万元(約165万~215万円)という手頃な価格で、消費者のニーズをつかんだようだ。

哈弗H6に続けとばかり、長城は北京ショーで新型コンパクトSUV「哈弗H2」を初公開。展示車両はピラーより上のルーフとボディーを2色に塗り分け、ホイールにもボディー同色のアクセントをあしらうなど、最新の流行をいち早く取り入れていた。価格次第では相当な人気を集めそうだ。

吉利(ジーリー)の小型セダン「帝豪EC7」。
吉利(ジーリー)の小型セダン「帝豪EC7」。
吉利のプラグインハイブリッド車「帝豪クロスPHEV」。
吉利のプラグインハイブリッド車「帝豪クロスPHEV」。

■吉利とBYDの成長率は市場平均下回る

一方、成長の壁の影響をはっきり感じたのが、数年前まで中国ブランド車の“御三家”と呼ばれていた吉利(ジーリー)、BYD、奇瑞(チェリー)だ。吉利といえば、2010年にスウェーデンのボルボを買収して自動車業界の注目を集めたのが記憶に新しい。だが、少なくとも吉利ブランドのクルマに関しては、4年後の今も目に見える買収効果は出ていない。

2013年の吉利の販売台数は約55万台と、前年(約49万台)より11.8%伸びたものの、市場全体の伸び率(13.9%)を下回った。しかも販売の3割以上が5年前に発売した小型セダン「帝豪EC7」に集中しており、新型車の売れ行きは芳しくない。2年前の北京ショーで初登場した小型SUV「全球鷹GX7」の販売台数は、長城の哈弗H6の4分の1にとどまっている。

今回の北京ショーで、吉利はプラグインハイブリッドの小型SUVのコンセプトカー「帝豪クロスPHEV」を初公開した。その洗練されたデザインに、筆者は「中国車もここまで来たか」と感心したのだが、プレスデイの展示車の周りはなぜか閑古鳥が鳴いていた。理由はわからないが、地元の中国メディアがこのクルマに期待していないことだけは確からしい。

BYDの小型セダン「速鋭」。
BYDの小型セダン「速鋭」。
BYDもプラグインハイブリッドのSUV「唐」を公開。
BYDもプラグインハイブリッドのSUV「唐」を公開。
奇瑞(チェリー)の「コンセプトα」。
奇瑞(チェリー)の「コンセプトα」。
「奇瑞コンセプトβ」は小型SUVのスタディーモデル。
「奇瑞コンセプトβ」は小型SUVのスタディーモデル。

■ジリ貧の奇瑞は巻き返せるか

BYDの状況も似たり寄ったりだ。同社は、米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏が2008年に出資したことで一躍有名になった。しかし、昨年の販売台数は約51万台と11%増えたものの、伸び率はやはり市場平均を下回った。最量販車種の小型セダン「速鋭」は9年前に発売された「F3」の改良型であり、価格の安さ以外には見るべきところがない。

北京ショーでは、吉利と同じくプラグインハイブリッドの小型SUV「唐」を初公開してアピールしていた。外観を見ると、既存車種の「S6」を手直ししただけなのが素人目にもわかる。新型車の開発に十分な資金を投入できないほど、経営的に追い込まれているのかもしれない。

奇瑞はさらに苦しい。昨年の販売台数は約42万台と、市場全体が伸びるなか前年より19.7%も減ってしまった。奇瑞は、中国メーカーのなかで最も早く独自のデザインやパワートレイン開発に力を入れてきたことで知られている。しかし新型車の売れ行きがことごとく振るわず、ジリ貧に陥っている。

北京ショーでは小型セダンの「コンセプトα」、小型SUVの「コンセプトβ」という2台のコンセプトカーを初公開。来年にも量産型を発売するという。奇瑞は果たして巻き返せるか。吉利やBYDも含めて、これから数年が成長の壁を突破できるかどうかの正念場になりそうだ。

(文と写真=岩村宏水)

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