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ポルシェ・パナメーラS E-ハイブリッド(FR/8AT)

ひたひたと寄せる新たな電化の波 2014.05.23 試乗記 「ハイブリッド」から「E-ハイブリッド」へ。「ポルシェ・パナメーラ」のハイブリッド仕様がプラグインテクノロジーを得て、また一歩、電気自動車に近づいた。その実力を探るために、高速道路あり、ワインディングロードありのワンデイドライブに出た。

小次郎、待たせたな! のタイミング

さすがはポルシェ、まるで巌流島の宮本武蔵のような登場ではないか。
というのも、昨年、フェイスリフトにとどまらず搭載エンジンの変更やロングホイールベース版の追加など、「パナメーラ」シリーズが大幅なマイナーチェンジを受けた際にデビューしたのが「パナメーラS E-ハイブリッド」であり、国内での受注そのものも実は丸1年も前に始まっていた。従来型より格段に“電動系”を強化し、プラグインハイブリッドに進化したパナメーラS E-ハイブリッドの国内向けデリバリーはこの4月にようやく始まったが、そのタイミングには十分に間合いを計ったような、どうにも戦略的な匂いを感じてしまうのだ。

ひとつには一時の熱気がうそのように“EV”ブームが落ち着いたこと。日産リーフがデビューした直後は、今日明日にでも自動車はすべて電動化すると言わんばかりのヒートアップぶりだったけれど、結局電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)は今もそれほどの勢力にはなっていないことは周知の通り。ご存じのように日産は当初、2016年度までに世界で150万台のEVを販売するという計画を立てていたが、その先兵たる「リーフ」は度々の値下げにもかかわらず、2010年末から現在までの累計台数はトータルで10万台程度、そのうち国内では3万7000台にとどまっているのが実情だ。しかもレンタカーや自治体などの車両が少なからず含まれているはずだから、個人所有の本当の自家用車となるともっと少ないものと推測される。もちろん着実に増えてはいるのだが、本当にEVやPHVが必要な人、その特徴を十分に活用できる人は思っていたより、あるいはメーカーが主張していたよりもずっと限られていたということだ。

ブームが一段落してユーザーがそれぞれの長所と短所を冷静に判断するようになった頃合いを見計らったように、海外勢のユニークな電動車両が続々と上陸している。ちょうど同じ時期にはBMWの野心作である「i3」のデリバリーが始まり、間もなくフォルクスワーゲンもそれに続く予定だ。そしてポルシェである。「918スパイダー」の準備が整い、「919ハイブリッド」で世界耐久選手権とルマン24時間に挑戦を始めた今シーズンに合わせてのプラグイン・パナメーラの投入は、新型車投入の効果を最大限にするために間合いを計っていたのではないか、と見るのは考えすぎだろうか。

フロントドアの前端に「e-hybrid」のオーナメント。差し色の「アシッドグリーン」は、ポルシェのプラグインテクノロジーのテーマカラー。
フロントドアの前端に「e-hybrid」のオーナメント。差し色の「アシッドグリーン」は、ポルシェのプラグインテクノロジーのテーマカラー。 拡大
ハイブリッドパワーユニットは直噴の3リッターV6スーパーチャージャー付きガソリンエンジン(333ps、44.9kgm)と交流同期モーター(95ps、31.6kgm)で構成される。システムの最高出力は416ps(306kW)で最大トルクは60.2kgm(590Nm)。
ハイブリッドパワーユニットは直噴の3リッターV6スーパーチャージャー付きガソリンエンジン(333ps、44.9kgm)と交流同期モーター(95ps、31.6kgm)で構成される。システムの最高出力は416ps(306kW)で最大トルクは60.2kgm(590Nm)。 拡大
ハイブリッドパワートレインを上から見る。車両の前部(写真左)からエンジン、デカプラー(クラッチ)、モーター、8段ATの順。エンジンの左側にあるのはインバーターとDCコンバーターからなる「パワーエレクトロニクス」。駆動用バッテリーはリアオーバーハングに搭載され、その右側に充電用の「オンボードチャージャー」が配置される。(イラスト=ポルシェ)
ハイブリッドパワートレインを上から見る。車両の前部(写真左)からエンジン、デカプラー(クラッチ)、モーター、8段ATの順。エンジンの左側にあるのはインバーターとDCコンバーターからなる「パワーエレクトロニクス」。駆動用バッテリーはリアオーバーハングに搭載され、その右側に充電用の「オンボードチャージャー」が配置される。(イラスト=ポルシェ) 拡大

PHVに進化

新しい電動パナメーラの全体的な構成は従来の「S ハイブリッド」と同様である。エンジンはスーパーチャージャー付き3リッターV6(245kW<333ps>/5500-6500rpm、440Nm<44.9kgm>/3000-5250rpm)で、トランスミッションは1モーター2クラッチを備えた8段ティプトロニックSだが、外部電源による充電も可能なプラグインハイブリッドに進化したのに伴って、従来のパナメーラS ハイブリッドではニッケル水素だったバッテリーがリチウムイオンタイプに変更され、その容量も1.7kWhから5倍以上の9.2kWhへ、電動モーターの最高出力も70kW(95ps)と倍以上にパワーアップした。そのおかげでバッテリーの電力だけで36kmの走行が可能となり、また速度も135km/hまでモーター走行可能と大幅に引き上げられている。ハイブリッドとしてのJC08モード燃費は12.3km/リッターと発表されている。

エネルギーモニターの表示で見る限りバッテリー満タン状態で都心をスタートする際には、電動走行レンジは18kmと表示されていたが、実際には都心から首都高速~東名高速に入り、32kmほど走ったところで徐々に減っていた残り航続距離の数字が消えて横バーとなり、自動的にエンジンが始動した。その時点での車載コンピューター燃費は78km/リッターと表示されていた。途中、Eパワーモード(電動走行モード)でも追い越しや合流でペダルをちょっと踏み過ぎた時にエンジンが始動したせいでこの数字となったが、右足に注意してモーターだけで走れば99.9km/リッターのままだ。もちろんあくまで計算上ではあるが、ぎょっとする数字である。

その後は少しずつ平均燃費の数字が下がって行き、小田原厚木道路を下りたところでは13.8km/リッター、その後伊豆山中を走り回って再び高速道路に乗り、周囲の交通のペースに合わせて帰京という350km弱のコースの平均燃費は最終的に13.0km/リッター(満タン法では15.0km/リッター)に落ち着いた。ちなみに帰路の高速道路区間だけを取り出せば平均燃費は17.1km/リッターと表示されていた。

レザーインテリアが標準。試乗車ではオプションの「コニャックナチュラルレザー」が選択されていた。
レザーインテリアが標準。試乗車ではオプションの「コニャックナチュラルレザー」が選択されていた。
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シートはポルシェの伝統にしたがってヘッドレスト固定式となる。
シートはポルシェの伝統にしたがってヘッドレスト固定式となる。 拡大
リアシートは他の「パナメーラ」と同様に左右独立の2座。乗車定員は4人。
リアシートは他の「パナメーラ」と同様に左右独立の2座。乗車定員は4人。 拡大
フロア下に駆動用バッテリーを搭載するため、ラゲッジルーム容量はガソリン仕様の「パナメーラ」より狭い(E-ハイブリッド:335~1153リッター、ガソリン仕様:445~1263リッター。いずれもVDA法)。(クリックするとリアシートが倒れる様子が見られます)
フロア下に駆動用バッテリーを搭載するため、ラゲッジルーム容量はガソリン仕様の「パナメーラ」より狭い(E-ハイブリッド:335~1153リッター、ガソリン仕様:445~1263リッター。いずれもVDA法)。(クリックするとリアシートが倒れる様子が見られます) 拡大

駆動用リチウムイオンバッテリーの電圧は384Vで電力量は9.4kWh。従来の「パナメーラS ハイブリッド」のバッテリーはニッケル水素で1.7kWhだった。モーターのみによる走行可能距離は18~36km(本国資料による)。(イラスト=ポルシェ)


    駆動用リチウムイオンバッテリーの電圧は384Vで電力量は9.4kWh。従来の「パナメーラS ハイブリッド」のバッテリーはニッケル水素で1.7kWhだった。モーターのみによる走行可能距離は18~36km(本国資料による)。(イラスト=ポルシェ)
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スタイルに合わせていかようにも

マイナーチェンジでダウンサイジングしたV6ツインターボのパナメーラでも、燃費が向上したとはいえ実用燃費で10km/リッターに届くことはまずないはず。また2年ほど前にwebCGがテストした従来型パナメーラS ハイブリッドの実際の平均燃費は11.5km/リッターだったから、新型との違いは明白だ。そのうえ30km程度ならガソリンエンジンを使うことなく、しかも他の車から邪魔者扱いされることなくモーターだけで走行できる。つまり近所のスーパーでの買い物や、学校の送り迎え程度なら事実上エンジンを回すことなく往復できるということになる。エンジンの停止、再始動の際はわずかなショックも感じ取れず、タコメーターの針の動きでしか知ることはできないほど滑らかでスムーズに走る。ただし、パナメーラには急速充電機能が備わっていないから外部電源でバッテリーを満たすには3ピン200Vの設備が必要だ。

そのいっぽうでパナメーラS E-ハイブリッドは0-100km/h加速5.5秒、最高速270km/hを誇るハイパフォーマンスセダンでもある。PHVというと、「アウトランダー」や「アコード」のように基本的にエンジンを発電機として使用するレンジエクステンダーEV寄りの車を考えがちだが、パナメーラはエンジンも変速機も必要に応じてその能力を発揮するタイプである。エンジンとモーターを合わせたシステム最大出力は従来型の380psから416psにパワーアップされており、スポーツモードを選択してV6エンジンとモーターの能力を存分に引き出せば、いかにもポルシェと言うべき怒涛(どとう)の速さでワインディングロードを駆け回ることもできる。もっとも、その際にはこの車が2.1トンを超えるヘビー級だということを忘れてはいけない。

 

充電は持ち運び可能な「ユニバーサルチャージャー(AC)」(写真)を用いるか、ガレージの壁面などに設置して使う「充電ドック」を介して行う。
充電は持ち運び可能な「ユニバーサルチャージャー(AC)」(写真)を用いるか、ガレージの壁面などに設置して使う「充電ドック」を介して行う。 拡大
充電ポートは車両後部の左側にある(給油口は後部右側)。満充電までの所要時間は200Vで約2.5時間、100Vで約8時間。日本のCHAdeMOコネクターには対応していない。
充電ポートは車両後部の左側にある(給油口は後部右側)。満充電までの所要時間は200Vで約2.5時間、100Vで約8時間。日本のCHAdeMOコネクターには対応していない。 拡大
5連メーターの中心にタコメーター、その左隣はスピードメーターではなく「Eパワーメーター」(ハイブリッドシステムの作動量と回生量が表示される)となる。メーター針も「アシッドグリーン」に。
5連メーターの中心にタコメーター、その左隣はスピードメーターではなく「Eパワーメーター」(ハイブリッドシステムの作動量と回生量が表示される)となる。メーター針も「アシッドグリーン」に。 拡大
パワーユニット始動後の初期設定はモーターのみで走行する「Eパワー」モード。その後、エンジン走行に移行しても、シフトセレクターの右側にある「E-POWER」ボタンを押せば戻せる。その手前にある「E-CHARGE」ボタンは、充電を任意に行うためのもの。幹線道路や高速道路など、流れのいい環境での使用を想定している。
パワーユニット始動後の初期設定はモーターのみで走行する「Eパワー」モード。その後、エンジン走行に移行しても、シフトセレクターの右側にある「E-POWER」ボタンを押せば戻せる。その手前にある「E-CHARGE」ボタンは、充電を任意に行うためのもの。幹線道路や高速道路など、流れのいい環境での使用を想定している。 拡大

タウンスピードでは落ち着かないが

軽量化に配慮しているとはいえ、その絶対的な重さがプラグイン・パナメーラの数少ない弱点かもしれない。車重はノーマルモデルのパナメーラに比べて250kgほど重い2130kg(従来型ハイブリッドに比べても100kgほど増えた)、前後重量配分は車検証上で見ると、やはりバッテリーを積んでいるために48:52と後ろがやや重い。そのせいか、他のパナメーラのようにピシリと締まった乗り心地ではなく、いつもどこか揺れが残っているようなバランスの悪さを感じることがある。それでもスピードが増せば、いつものようにソリッドで硬質ながら安心感にあふれたフラット感が顔を出すが、タウンスピードでは路面によってゴロゴロとしたバイブレーションにもやや不満が残る。これまでに乗ったパナメーラの中では一番フラットさに欠けるように思う。

とはいえそれは他のパナメーラと比べた場合の話。街中ではガソリンを使わずに粛々と用事をこなし、飛ばせばその巨体を感じさせない敏しょうなハンドリングを見せ、また旅に出れば一気に1000kmを駆ける長い脚を持つパナメーラは、これを活用できる人には実に魅力的なスポーツサルーンである。ピシリピシリと、これまで空いていたマス目を埋めていくようなポルシェの攻勢をひしひしと感じるのである。

(文=高平高輝/写真=高橋信宏)

動力性能は0-100km/h加速が5.5秒で、最高速は270km/h。ちなみにモーター走行では0-50km/h加速が6.1秒、最高速が135km/hと発表されている。
動力性能は0-100km/h加速が5.5秒で、最高速は270km/h。ちなみにモーター走行では0-50km/h加速が6.1秒、最高速が135km/hと発表されている。 拡大
ステアリングを握る筆者。
ステアリングを握る筆者。
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ブレーキキャリパーも「アシッドグリーン」に。標準のホイールサイズは18インチだが、試乗車はオプションの19インチを履いていた。
ブレーキキャリパーも「アシッドグリーン」に。標準のホイールサイズは18インチだが、試乗車はオプションの19インチを履いていた。 拡大

ポルシェ・パナメーラS E-ハイブリッド(FR/8AT)【短評】の画像 拡大

テスト車のデータ

ポルシェ・パナメーラS E-ハイブリッド

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5015×1930×1420mm
ホイールベース:2920mm
車重:2130kg
駆動方式:FR
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ スーパーチャージャー
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:333ps(245kW)/5500-6500rpm
エンジン最大トルク:44.9kgm(440Nm)/3000-5250rpm
モーター最高出力:95ps(70kW)/2200-2600rpm
モーター最大トルク:31.6kgm(310Nm)/1700rpm
タイヤ:(前)255/45ZR19 100Y/(後)285/40ZR19 103Y(ミシュラン・パイロット スーパースポーツ)
燃費:12.3km/リッター(JC08モード)
価格:1578万円/テスト車=1809万8716円
オプション装備:インテリアカラー:コニャック(ナチュラルレザーインテリア)(90万6000円)/LEDヘッドライト(36万1000円)/19インチ パナメーラターボIIホイール(26万円)/カラークレスト ホイールセンターキャップ(3万円)/アダプティブクルーズコントロール(40万円)/フロアマット(3万3000円)/コンフォートメモリーパッケージ(Frt)(26万1000円)/アルミニウムペダル(6万7716円)

テスト車の年式:2014年型
テスト車の走行距離:4629km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:338.0km
使用燃料:22.5リッター
参考燃費:15.0km/リッター(満タン法)/13.0km/リッター(車載燃費計計測値)

ポルシェ・パナメーラS E-ハイブリッド
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