トヨタ、高効率のパワー半導体でHVの燃費改善

2014.05.20 自動車ニュース
SiCパワー半導体のウェーハ(右がダイオード、左がトランジスタ)。
SiCパワー半導体のウェーハ(右がダイオード、左がトランジスタ)。

トヨタ、高効率のパワー半導体でHVの燃費を改善

トヨタ自動車は2014年5月20日、デンソー、豊田中央研究所と共同で、高効率のSiCパワー半導体を開発したと発表した。

SiCパワー半導体の特徴を説明する、トヨタ自動車 第3電子開発部の戸田敬二氏(右)と、濱田公守氏(左)。
SiCパワー半導体の特徴を説明する、トヨタ自動車 第3電子開発部の戸田敬二氏(右)と、濱田公守氏(左)。

■半導体の改良でクルマの燃費性能を改善

パワー半導体とは、1万分の1秒の単位で電流の伝達と遮断を繰り返す部品である。その構造は、電流をオン/オフするトランジスタと、電流を一方向のみに流すダイオードを組み合わせたもので、オンの時には最大で200Aの電流を通電。オフにすると最大1200Vの電圧がかかっても電流を通さないという。

今回発表されたSiCパワー半導体は、主にハイブリッド車(HV)などのパワーコントロールユニット(PCU)への採用を想定したものだ。PCUとはHVなどにおける電力の制御をつかさどる機構であり、加速や定速走行時にはバッテリーの電力をモーターに供給することで車速をコントロール。減速時には、ブレーキエネルギー回生で得た電力をバッテリーに充電するなどの役割を担っている。具体的な機能としては、電圧の昇圧や降圧、交流と直流の変換などが挙げられる。

ただ、これらの作業で生じる電力損失は車両全体の約4分の1と少なくなく、しかもその大半がパワー半導体での損失とされている。パワー半導体の高効率化は、燃費(電費)を改善する上での重要課題となっていた。

従来のシリコンパワー半導体(左)とSiCパワー半導体(右)のウェーハ。
従来のシリコンパワー半導体(左)とSiCパワー半導体(右)のウェーハ。

■材料にはシリコンと炭素の化合物を採用

従来のパワー半導体における電力損失の種類は、大きく分けて2つ挙げられる。ひとつは通電時に熱となって放出される定常損失。もうひとつが、電流を遮断する際に生じるスイッチング損失で、素早く電流を切ることができず、しばらく(と言っても100万分の1秒単位だが)漏れたように流電し続ける「テール電流」が主要因となっている。

今回発表されたSiCパワー半導体は、材料にSiC(Silicon Carbide)と呼ばれるシリコンと炭素の化合物を採用しており、シリコンを用いた従来のものよりこうした電力損失が少ないとされている。具体的には発熱による定常損失が低く、テール電流が流れない特性からスイッチング損失も小さいのだ。
また、SiCパワー半導体ではテール電流が発生しないため、より素早くオン/オフを繰り返す高周波駆動が可能。これにより、PCU内で一時的に電力をためる役割を担うコイルやコンデンサー(PCU体積の約4割を占める)の小型化も可能となるという。

トヨタはこの半導体を用いたPCUを試作車に搭載し、テストコースにおいて走行試験を実施。5%以上の燃費向上を確認しているという(JC08モード走行)。

シリコンパワー半導体を用いた従来のPCU(左)と、SiCパワー半導体を用いたPCU(右)。
シリコンパワー半導体を用いた従来のPCU(左)と、SiCパワー半導体を用いたPCU(右)。

■目標はHVの燃費性能の10%向上

一方で、実用化には課題も残されている。中でもハードルとなっているのが、大量に、安価に供給できる生産技術の確立。SiCは触媒やヒーターなどの材料、あるいは研磨剤として広く普及している素材だが、パワー半導体に使用できるのは高純度の単結晶のみであり、量産化には、それを安定的に生成する技術が必要となるという。

トヨタは、こうしたSiCパワー半導体の研究を推し進めるため、愛知県豊田市の広瀬工場に専用の開発クリーンルームを開設。今後1年以内に公道での走行試験を開始し、将来的にはHVで10%の燃費改善と、PCUの体積を5分の1まで小型化するという目標を掲げている。

なお、今回発表したSiCパワー半導体については、神奈川県のパシフィコ横浜にて開催される「人とくるまのテクノロジー展(開催期間:2014年5月21日~23日)」でも紹介される予定だ。

(webCG)

■高効率パワー半導体


 

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