第9戦イギリスGP「タイトル争いは振り出しに」【F1 2014 続報】

2014.07.07 自動車ニュース
イギリスGPのポディウム。優勝はメルセデスのルイス・ハミルトン(右から2番目)で今季5勝目、2位はウィリアムズのバルテリ・ボッタス(一番左)で自身最高位を更新、3位に入ったのはレッドブルのダニエル・リカルド(一番右)。(Photo=Red Bull Racing)

【F1 2014 続報】第9戦イギリスGP「タイトル争いは振り出しに」

2014年7月6日、イギリスのシルバーストーン・サーキットで行われたF1世界選手権第9戦イギリスGP。ポイントリーダーのニコ・ロズベルグがトラブルで今季初リタイアを喫した一方で、ランキング2位のルイス・ハミルトンが5月以来の勝利を飾った。いつもの“メルセデスの週末”は、しかし決してつまらないものではなく、各所で接戦が繰り広げられる、手に汗握るレースとなった。

雨の予選、最後のアタックを諦めてしまったことで、気分とともにグリッド順も6番手に沈んでしまったハミルトン。決勝ではスタート直後に4位、中断の後には瞬く間に2位に上がり、先行するニコ・ロズベルグを追った。ロズベルグの今季初リタイアでトップの座が転がり込んでくるとそのまま圧勝。ポイントリーダーのチームメイトとの差は29点から一気に4点まで縮まり、タイトル争いは再び混迷の度合いを深めることになった。(Photo=Mercedes)
予選の最後で大逆転しポールポジションを獲得したロズベルグ。しかしレースでは半ばを過ぎてギアボックスのダウンシフトが不調となり、トップ走行中から今年初めてのリタイアを喫した。(Photo=Mercedes)

■2015年レギュレーションの“演出”

6月26日、世界モータースポーツ評議会において2015年のF1レギュレーション変更が決まった。いくつかある中でも最大のトピックは、セーフティーカー導入後の再スタートを、これまでのようなローリングスタートではなく、スタンディングスタートにすること。不確実性を増して、最初のスタートと同じような“興奮の演出”を施したいという狙いがある。これに対し一部ドライバーからは、使い古しの冷えたタイヤでスタートするのは危険だ、あるいは作為的過ぎるといった声もあがったのだが、結局は問題ないとして採用されることとなった。
さらに来年から、ボディー下部にチタニウム製プランクを取り付けることが義務づけられるようになった。理由は、路面と金属が当たり火花が散るという“華麗なる演出”が欲しいからである。

これらの“演出”に加え、今シーズン当初から小さくなったエンジン音を大きくするにはどうしたらいいかといった、いってみればやや子供じみた論争も起こっている。

モータースポーツの最高峰カテゴリーに君臨するF1は、今年、環境配慮や持続可能性といった時流に乗った大胆な改革を敢行。新たに1.6リッターV6ターボと運動&熱エネルギーの回生機構を組み合わせたハイブリッドシステムや、燃費規制などを取り入れ、“グリーンなイメージチェンジ”を図ったのだが、その後聞こえてくるのは従来のイメージをいかによみがえらせるかという些末(さまつ)な対処法ばかりである。

背景には、F1人気の衰退という危機感、特にヨーロッパの一部主要国でのテレビ視聴率低下があるとみられている。興行としてのF1の屋台骨を支えるのは莫大(ばくだい)なテレビ放映料であるから、商業面のボス、バーニー・エクレストンも何かと語気を強めているのだろう。
しかし“テレビ離れ”は、何もF1に限ったことでも欧州だけの問題でもない。インターネット、特にツイッターやフェイスブックなどのソーシャルメディアの台頭は世界的な不可逆の潮流であり、F1がこの波に乗り遅れているのは関係者も認めるところ。テレビと違って、それら新興媒体ではマネタイズがまだ(永久に?)難しいのだ。

11年ぶりに復活した前戦オーストリアGPには多くの観客が訪れ、大変な盛況のうちに終わった。これら観客は、人為的にオーバーテイクを増やすDRSをはじめとするたくさんの“仕掛け”を見にはるばるサーキットにやってきたのだろうか? エキゾーストノートが大きくなったからといって、人々はどれほど喜ぶのだろうか? F1の何がヒトを引きつけ、どうすればヒトやモノやマネーが集まってくるのだろうか?

近年、GPと縁がなかった(ビジネス市場としては魅力的な)国で次々とレースを開催してきたF1。そんなF1新興国ではスタンドの空席も珍しくない。F1を本当に求めている国やひとたちに、より多様な楽しみとアクセスを用意することは、おそらく間違った策ではないはずである。

あらためて自分たちの存在意義を確認する時期にきているであろうF1は、1950年に1回目の世界選手権レースが行われた英国シルバーストーンに戻ってきた。このハイスピードコースでの、記念すべき50回目のGPが幕を開けた。

予選8位から1ストップで上位を狙ったレッドブルのリカルド。レース終盤のタイヤが苦しい中、ジェンソン・バトンの猛追を振り切り3位でゴール、今年4度目の表彰台にのぼった。「レースがあと1周あったらキツかったかも」とはレース後の弁。(Photo=Red Bull Racing)

■雨の予選、ロズベルグが逆転ポールポジション

土曜日の予選は、雨雲が来ては去る読みづらい状況の中行われ、セッションはオーストリアGPで3-4フィニッシュと健闘したウィリアムズ、そしてフェラーリが2台ともQ1敗退という波乱で始まった。

トップ10グリッドを決めるQ3では、乾きつつある路面でドライタイヤを履き各車最初のアタック。ルイス・ハミルトン、ニコ・ロズベルグのメルセデス1-2となった時点で、またコースの一部で雨が落ちてきた。
しばし様子見の各陣営がセッション終了間際に最後のフライングラップへ。ハミルトンは滑りやすいコンディションを前に途中でアタックを諦めてしまったのだが、実はコース後半部分は予想以上に改善していたようで、走行を続けたロズベルグがタイムを更新、今季4回目のポールポジションを獲得することとなった。

1.62秒も離されて2番手につけたのはレッドブルのセバスチャン・ベッテル。第2戦マレーシアGP以来となるフロントローからのスタートとなった。予選3位はマクラーレンのジェンソン・バトンで今年ベストグリッド。フォースインディアのニコ・ヒュルケンベルグ4位、マクラーレンのルーキー、ケビン・マグヌッセン5位と続き、ハミルトンは6番グリッドから巻き返しを図ることとなった。
フォースインディアのセルジオ・ペレス7位、レッドブルのダニエル・リカルド8位ときて、5列目にはトロロッソの新人ダニール・クビアトとジャン=エリック・ベルニュが並んだ。

ベテランのバトンは母国イギリスで優勝はおろか表彰台すら記録がない。15回目の挑戦では予選3位と好位置につけたものの結果4位。それでも最後は3位リカルドを追いつめ観客をわかせた。特製のピンクヘルメットは、1月に他界した父ジョンさんにささげたもの。チャリティーも行われ、ピンクのTシャツを着た多くのファンの姿も見られた。(Photo=McLaren)

■程なくして、いつもの1-2

ドライとなった決勝日はスタートから荒れた展開となった。ポールシッターのロズベルグがトップを守る一方、2番グリッドのベッテルは出だしが悪く、バトン、マグヌッセン、ハミルトンに次ぐ5番手までダウンした。
その後方では、キミ・ライコネンのフェラーリがウェリントン・ストレート手前でコースアウト。戻った瞬間にマシンは挙動を乱し激しくクラッシュ、フェリッペ・マッサのウィリアムズらを巻き添えにして止まった。これでセーフティーカーが入り、直後にレッドフラッグが振られ、レースは一時中断となった。

破損したガードレールの補修に約1時間を要し、セーフティーカー先導で再スタート。52周の3周目から本格的なレースが始まった。
トップ10は、1位ロズベルグ、2位バトン、3位マグヌッセン、4位ハミルトン、5位ベッテル、6位ヒュルケンベルグ、7位リカルド、8位クビアト、9位バルテリ・ボッタス、10位ジュール・ビアンキというオーダー。瞬く間に新人マグヌッセンを追いやりハミルトンが3位に、翌周にはバトンも抜き、あっという間にいつものメルセデス1-2が出来上がった。

この時点で首位ロズベルグは既に5秒先行。トップ2はほぼこの間隔を維持したまま周回を重ねていたが、やはり今回も3位バトン以降はどんどん離され、14周を過ぎる頃には、2位ハミルトンとの間には21秒ものギャップが築かれていた。

まさかの予選Q1敗退となったフェルナンド・アロンソ(写真)。他車のペナルティーもあり16番グリッドからスタートしたレースでは着実にポジションを上げ、さらにスタート時に規定位置を過ぎたことによるストップ・ゴー・ペナルティーもものともせず、終盤にかけてはセバスチャン・ベッテルと激しい5位争いを繰り広げた。結果6位入賞。なおチームメイトのキミ・ライコネンはオープニングラップで大クラッシュ、47Gものインパクトを受けたというが、幸い大事には至らなかった。(Photo=Ferrari)

■ロズベルグは今季初リタイア、ハミルトン5勝目

16周目、首位ロズベルグと2位ハミルトンの差が4秒を切る。この周にファステストラップを更新したハミルトンはさらに3.1秒まで間隔を縮め、ジリジリとライバルに迫った。
18周を終え1位ロズベルグが最初のピットインでミディアムからミディアムにタイヤを交換。ハミルトンは25周までミディアムで引っ張り、ハードに履き替えて優勝を狙う作戦に出た。2位でコースに戻ったハミルトンは、5.9秒前方のロズベルグを再び追うことになるのだが、ロズベルグのメルセデスにはトラブルの予兆が出始めていた。

事態が急変したのは28周目、ロズベルグが無線で不調を報告していたギアボックスがいよいよおかしくなったのだ。ギアがスタックした状態となりスローダウン、マシンをコース脇に止めざるを得なくなった。ポイントリーダーはレース半ばで今季初リタイア。そして母国の大歓声を受け、ハミルトンが首位に立った。

最大の敵がいなくなったコースでハミルトンに勝負を挑めるものはいなかった。最終的に後続に30秒もの大差をつけ、4連勝した5月のスペインGP以来となる今季5勝目をホームグラウンドで飾った。
ロズベルグとハミルトンの間にあった29点という大差はこれでほぼ帳消しとなり、ロズベルグのリードはわずかに4点となった。

何かとチームメイトのリカルドにお株を奪われているチャンピオンのベッテル(写真中央)。今回は予選2番手と期待の持てるポジションを得たものの、最終的にはリカルドの2つ後ろ、5位でゴール。それでもアロンソとの丁々発止で王者の技を見せつけた。(Photo=Red Bull Racing)

■ボッタス大健闘、ベッテル対アロンソの激しい争い

常勝メルセデスが圧勝した“いつものレース”は、しかし、決してつまらないものではなかった。

とにかく元気がよかったのは14番手スタートのボッタスだ。フェルナンド・アロンソのフェラーリやマクラーレンの2台、リカルド&ベッテルのレッドブルという強豪を次々とオーバーテイクし3位までポジションアップ。ロズベルグが戦列を去ると自身最高の2位まで駒を進め、1ストップでオーストリアGPに続く2連続ポディウムフィニッシュを達成したのだった。

さらにベッテル対アロンソの5位争いも熾烈(しれつ)を極めた。16番手スタートのアロンソは最初のスタート時に規定位置を過ぎてしまったことでストップ・ゴーのペナルティーを受けたものの順位を挽回。35周目にはベッテルを抜き5位まで上がるのだが、コプス・コーナーでのこの大胆なオーバーテイクには見るものを引きつけるだけの迫力があった。
勝負はまだ終わらない。38周目にはベッテルが再び抜きにかかるがアロンソが巧みにラインをふさいで先行を許さない。2人のチャンピオンはコース上で丁々発止、無線では互いに相手が譲らないとの舌戦を繰り広げたのだった。
残り5周となった48周目、アロンソにベッテルが並びかける。紅と紺のマシンは接触ギリギリ、しかし2人の王者の意地はガツガツぶつかり合いながらコースを駆け抜け、そしてフレッシュなタイヤを履いていたベッテルが5位の座を射止めたのだった。

その少し前では、1ストッパーの3位リカルドに4位バトンが迫る展開。過去14回の母国GPで表彰台すらないバトンの必死の追い上げは残念ながら結実せずに終わったが、観客のみならずテレビを前にした視聴者の注目を集めたことは間違いない。

かようにおもしろさがつまったレースを見て、エンジン音を大きくすることや、マシンから火花が飛び散ることを推し進めようとするひとたちは、いったい何を思ったのだろうか?

1カ月に3レースが詰め込まれる7月、次回はホッケンハイムでのドイツGPだ。決勝は7月20日に行われる。

(文=bg)

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