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マセラティ・ギブリ(FR/8AT)

成長戦略の切り札 2014.09.10 試乗記 年間販売台数5万台を目指すマセラティが量販モデルとして期待を寄せる「ギブリ」の実力を検証。ライバルのドイツ勢に対するアドバンテージを探った。

「年間5万台」の中核を担う

すでにいろんなところで報じられていることだが、マセラティは、2015年までに年間販売台数を5万台にまで引き上げることを目標に掲げている。2015年とは、いうまでもなく、来年のことだ。
ちなみに、マセラティがフィアット傘下になったのが1993年、経営権がフェラーリに託されたのが1997年のことだ。当時(1998年)のマセラティの年間販売はわずか500台強である。
さらに2005年、マセラティの経営がフェラーリから切り離されてフィアット直轄となり、モダンマセラティの土台となった先代「クアトロポルテ」の販売が本格化した。その時点でマセラティの年間販売は98年の10倍以上となる5659台まで急成長した。
しかし、今度の目標は5万台。フェラーリ経営権下当時のじつに約100倍(!)、2005年から考えても「10年で10倍!」という野心的な目標だ。その「年間5万台」の立役者の一台となることが期待されているのが、昨年秋に発表されたギブリである。

ギブリの基本的な成り立ちは、ご承知のように、フラッグシップセダンであるクアトロポルテのショート版……というべきものだ。ホイールベースと全長こそクアトロポルテより短いが、全幅(ギブリ:1945mm、クアトロポルテ:1950mm)や、その他の基本構成はクアトロポルテとほぼ共通である。
クアトロポルテがメルセデス・ベンツの「Sクラス」やBMWの「7シリーズ」にガチンコ対抗する量産ハイエンドサルーンと考えると、ギブリをドイツ勢のラインナップに照らせば、セダンの中間モデルである「Eクラス」や「5シリーズ」に相当することになる。
ただ、先行上陸していた「ギブリS」と「ギブリS Q4」は、搭載するV6ツインターボの出力/トルクは410ps/56.1kgmにも達して、価格は1000万円前後。Eや5とガチンコ比較するには、性能も価格もちょっと高すぎるきらいがあったことは否定しない。

マセラティが2013年に発表したEセグメントセダン「ギブリ」。今回は、最高出力330psの3リッターV6エンジンを搭載したベースグレードに試乗した。
マセラティが2013年に発表したEセグメントセダン「ギブリ」。今回は、最高出力330psの3リッターV6エンジンを搭載したベースグレードに試乗した。
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黒と赤でコーディネートされたテスト車のインテリア。「ギブリ」ではダッシュボードやシート、ルーフライニング、トリムと、各所にさまざまな色の素材が用意されている。
黒と赤でコーディネートされたテスト車のインテリア。「ギブリ」ではダッシュボードやシート、ルーフライニング、トリムと、各所にさまざまな色の素材が用意されている。
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ダッシュボードの中央に装備された、アルミのリムと青い文字盤が特徴の「マセラティ デザイン クロック」。
ダッシュボードの中央に装備された、アルミのリムと青い文字盤が特徴の「マセラティ デザイン クロック」。
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マセラティ・ギブリ(FR/8AT)【試乗記】の画像 拡大
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ライバルはドイツのEセグメント勢

「年間5万台のための稼ぎ頭」としてマセラティが本当に期待しているのは、Sのつかない……今回の「素ギブリ」である。素ギブリは価格・性能ともに、Eや5、あるいは「アウディA6」の上級モデルにガチンコの商品企画であり、性能はガソリンでいうと3~3.5リッター級、価格は700万~800万円台……というレベルにおさめられている。
ただ、欧州の素ギブリにはディーゼルもあるが、日本仕様は今のところガソリンのみだ。3リッターV6ツインターボというエンジンの基本構成はギブリSと同じで、過給圧その他の違いで330psまでデチューンされる。ただ、それでも同じく6気筒のエンジンを積む「E350」や「535i」、そしてA6の「3.0 TFSIクワトロ」と比較すると、それでもまだハイチューンな部類に入る。

素モデルといっても、Sとのちがいはエンジンのみといってよく、エクステリアやインテリアの仕立てや素材づかいにハショリ感はまるでない。まあ、今回の取材車も19インチや内装パーソナライゼーションなど、いくつかのオプションを盛った仕様だった。しかし、なにもつけない状態でも、見た目にはSとほとんど区別はつかない。

素ギブリの車両重量は1950kg。以前試乗したS Q4との重量差はわずか80kgであり、2WDのSであれば基本的に重量は変わりない。ギア比もSのままである。S Q4がハイチューン仕様エンジンを、こともなげに完全支配下に置いていたこと考えると「パワーが物足りないんじゃないか?」という危惧もあった素ギブリだが、結論からいうと、それはまったくの取り越し苦労だった。

ベースグレードとはいえ動力性能は高く、最高速は263km/h、0-100km/h加速5.6秒を誇る(ともにメーカー発表値)。


    ベースグレードとはいえ動力性能は高く、最高速は263km/h、0-100km/h加速5.6秒を誇る(ともにメーカー発表値)。
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上級グレードと同じくシートにはレザー表皮を標準で採用。オプションでポルトローナ フラウ製のレザーインテリアも用意される。
上級グレードと同じくシートにはレザー表皮を標準で採用。オプションでポルトローナ フラウ製のレザーインテリアも用意される。
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「ギブリ」のリアシート。アームレストには2つのカップホルダーのほか、USBチャージャーユニット、12Vソケットが備わっている。
「ギブリ」のリアシート。アームレストには2つのカップホルダーのほか、USBチャージャーユニット、12Vソケットが備わっている。
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サスペンションの仕立ては見事

もちろん、このギブリは基本的にはシャシーファスターのクルマである。少なくともドライであれば、トラクションコントロールが必要以上におせっかいを焼きにくるようなこともない。今回は可変ダンパーの類いもつかないアナログサスペンション(可変ダンパーの「スカイフックサスペンション」もオプションで装着可能)だったが、オプションの19インチを見事に履きこなしている。ロープロファイルタイヤ特有のコツコツ感は残るものの、全域でストローク感のあるたおやかな乗り心地であり、いざ山道などで「らしい」走りを試みても、アゴを出すようなそぶりはこれっぽっちもない。

そうはいっても、エンジンの最大トルクは自然吸気5リッター級(!)である。その気になってキッカケを与えれば、進行方向をリアタイヤにゆだねることは可能である。しかも、テールをジワジワとはらませながらも、きちんと前に進んでいくトラクション性能も十分だ。
可変ダンパーを持たないギブリに乗ったのは今回初めて(というか、Sでも標準では可変ダンパーはつかない)だった私だが、そのアナログサスペンションの能力の高さと調律の巧妙さには、お世辞ぬきに感心した。

全域でうるおい豊かなストローク感を味わえるフットワークは、ブレーキングでじんわりとノーズを沈ませながらフロントグリップを増加させて、いよいよヨーが発生しても適度なロールで安定しきっている。こうした適度な姿勢変化が濃厚な接地感を生んで、ある意味では可変ダンパーより、リアルで手応えのあるハンドリングテイストを醸し出すのは、なにもギブリにかぎったことではない。しかし、このレベルの性能を、ここまでうまく調律できているアナログサスペンションの例はそう多くはない。

エキゾーストシステムには、走行モードに応じて開閉するバイパスバルブを装備。スポーツモードを選ぶと、迫力のある排気音を楽しむことができる。
エキゾーストシステムには、走行モードに応じて開閉するバイパスバルブを装備。スポーツモードを選ぶと、迫力のある排気音を楽しむことができる。
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「ギブリ」に搭載される3リッターV6ツインターボエンジン。330psの最高出力と51.0kgmの最大トルクを発生する。
「ギブリ」に搭載される3リッターV6ツインターボエンジン。330psの最高出力と51.0kgmの最大トルクを発生する。
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センターコンソールなどを飾るインテリアトリムには、カーボンや木目など5種類の素材を用意。シフトセレクターの横には、走行モードの切り替えスイッチが並ぶ。
センターコンソールなどを飾るインテリアトリムには、カーボンや木目など5種類の素材を用意。シフトセレクターの横には、走行モードの切り替えスイッチが並ぶ。
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「ギブリ」の標準タイヤサイズは前後とも235/50ZR18だが、今回のテスト車には、オプションの前:245/45ZR19、後ろ:275/40ZR19が装着されていた。
「ギブリ」の標準タイヤサイズは前後とも235/50ZR18だが、今回のテスト車には、オプションの前:245/45ZR19、後ろ:275/40ZR19が装着されていた。
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絶妙のサジ加減

従来型マセラティV8の爆発的なパワーと、むせび泣くような高回転の美声を知る身には、新しいV6ターボは正直いって「色気なさすぎ」の感は否めない。ただ、世界の量産6気筒のなかで冷静に評価すれば、加速時の迫力や高回転における音質は、少なくともBMWの直6に次いでエンスーな響きをもつ。

ギブリはあくまでドイツ勢とガチンコ勝負して、悲願の年間5万台を達成する重要戦略モデル。843万円という本体価格も、Eや5、A6の3~3.5リッター級とドンピシャだ。
ドイツ勢と比較すると、ギブリの車体サイズはちょっと大きめで、スリーサイズの差を差し引いても車重は重めである。ただ、そのぶんエンジンがハイチューンなので、動力性能はライバルより高い。かわりに燃費は少し劣る。ただ、高級セダンとしては、サイズが大きいことは一概に悪いことではないし、実用域でのギブリの乗り心地に、ウェイトの重さが効いている可能性が高いのも事実だ。

基本的な味つけはドイツ勢よりスポーツ志向が明確。エンジン音が盛大であるだけでなく、運転席まわりのレイアウトも明確にタイトであり、フロントタイヤの位置が把握しやすいので、走るほどに実寸より小さく感じられる典型的なタイプである。安全や情報エンターテインメント関連におけるハイテク度は、正直いってドイツ勢には及ばないし、樹脂類の質感もトップクラスとはいえないが、そういう細部の弱点をうまく隠すデザインや丁寧なレザーの仕立てによって、トータルでの高級感はドイツ勢になんら劣るところはない。

繰り返しになるが、今回のノーマルサスペンションのデキにはとくに感心した。快適な乗り心地と、リアルな運転感覚、サイズとパワーをもてあまさないタイト感……という意味で、「イタリアの官能」だの「ラテンの血筋」だのという意味不明な表現を使わずとも、そのサジ加減の妙は、クラスでも随一のセンスといってよい。

(文=佐野弘宗/写真=高橋信宏)

「ギブリ」の車両重量は1950kgと、「BMW 535i」(1750kg)や「メルセデス・ベンツE350アバンギャルド」(1780kg)はもちろん、4WD車の「アウディA6 3.0 TFSIクワトロ」(1850kg)より重い。
「ギブリ」の車両重量は1950kgと、「BMW 535i」(1750kg)や「メルセデス・ベンツE350アバンギャルド」(1780kg)はもちろん、4WD車の「アウディA6 3.0 TFSIクワトロ」(1850kg)より重い。
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メーター内に装備される7インチTFT液晶のマルチインフォメーションディスプレイ。走行データなどの情報を表示する。
メーター内に装備される7インチTFT液晶のマルチインフォメーションディスプレイ。走行データなどの情報を表示する。
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トランクの容量は500リッター。後席は6:4の分割可倒式となっている。(写真をクリックすると、シートの倒れる様子が見られます)
トランクの容量は500リッター。後席は6:4の分割可倒式となっている。(写真をクリックすると、シートの倒れる様子が見られます)
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テスト車のデータ

マセラティ・ギブリ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4970×1945×1485mm
ホイールベース:3000mm
車重:1950kg
駆動方式:FR
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:330ps(243kW)/4750rpm
最大トルク:51.0kgm(500Nm)/1600rpm
タイヤ:(前)245/45ZR19 98Y/(後)275/40ZR19 101Y(ピレリPゼロ)
燃費:7.6km/リッター(JC08モード)
価格:834万円/テスト車=968万1261円
オプション装備:ヒーテッド・ワッシャー(2万2629円)/電動8方向調節フロントシート<運転席メモリー機能付き>(13万629円)/電動調節式ステアリング・コラム<前後・上下>(4万4229円)/リアビューカメラ(5万2457円)/サンルーフ(16万1485円)/19インチ・プロテオ・ホイール(13万1657円)/電動8方向調節フロントシート用シートヒーター(4万9372円)/プレミアムサウンドシステム(12万4458円)/フロント&リアパーキングセンサー<ビジュアル表示機能付き>(8万4343円)/自動防眩(ぼうげん)サイドミラー(6万5829円)/フルプレミアムレザー(32万7086円)/イージー・エントリー&エグジット・システム(4万4229円)/ラミネート・ドア・ガラス(10万2858円)


テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:3336km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(8)/山岳路(1)
テスト距離:290.4km
使用燃料:44.2リッター
参考燃費:6.6km/リッター(満タン法)/14.2リッター/100km(約7.0km/リッター、車載燃費計計測値)
 

マセラティ・ギブリ
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