第14戦シンガポールGP「ハミルトン、ランキングトップへ」【F1 2014 続報】

2014.09.22 自動車ニュース
シンガポールGPを制したメルセデスのルイス・ハミルトン(右から2番目)、2位はレッドブルのセバスチャン・ベッテル(一番左)、3位は同じくレッドブルのダニエル・リカルド(一番右)。(Photo=Red Bull Racing)
シンガポールGPを制したメルセデスのルイス・ハミルトン(右から2番目)、2位はレッドブルのセバスチャン・ベッテル(一番左)、3位は同じくレッドブルのダニエル・リカルド(一番右)。(Photo=Red Bull Racing)

【F1 2014 続報】第14戦シンガポールGP「ハミルトン、ランキングトップへ」

2014年9月21日、シンガポールのマリーナ・ベイ市街地コースで行われたF1世界選手権第14戦シンガポールGP。この週末ライバルに肉薄されたメルセデス勢だったが、難局をものともせず、レースではルイス・ハミルトンが圧勝した。常勝チームの課題は、今回リタイア&無得点でランキング2位に落ちたニコ・ロズベルグに起きたような、マシンの信頼性不足であることがあらためてはっきりした。

1000分の7秒という僅差でポールポジションを獲得したハミルトン。早々に最大のライバルであるニコ・ロズベルグがリタイアし楽々と優勝できるかと思いきや、セーフティーカーにより難しい状況に。それでも爆発的なペースで飛ばし今季7勝目、シンガポールでの2勝目を挙げた。2連勝して波に乗る2008年チャンピオンはチャンピオンシップでも首位にたった。(Photo=Mercedes)
1000分の7秒という僅差でポールポジションを獲得したハミルトン。早々に最大のライバルであるニコ・ロズベルグがリタイアし楽々と優勝できるかと思いきや、セーフティーカーにより難しい状況に。それでも爆発的なペースで飛ばし今季7勝目、シンガポールでの2勝目を挙げた。2連勝して波に乗る2008年チャンピオンはチャンピオンシップでも首位にたった。(Photo=Mercedes)
フェラーリの一時代の終わりを告げるシーン。マラネロでの23年間の長期政権にピリオドを打つルカ・ディ・モンテゼーモロ会長(右)と、その後任となる親会社フィアット・クライスラー・オートモービルズのセルジオ・マルキオンネCEO(左)。(Photo=Ferrari)
フェラーリの一時代の終わりを告げるシーン。マラネロでの23年間の長期政権にピリオドを打つルカ・ディ・モンテゼーモロ会長(右)と、その後任となる親会社フィアット・クライスラー・オートモービルズのセルジオ・マルキオンネCEO(左)。(Photo=Ferrari)

■最古参チームの変革

前戦イタリアGP終了後の9月10日、フェラーリはルカ・ディ・モンテゼーモロ会長が10月13日をもってマラネロを去ることを発表、後任は親会社フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)のセルジオ・マルキオンネCEOとなることが明らかになった。
23年の長きにわたってイタリアを象徴するカーメーカーを率いてきたモンテゼーモロの辞任は、一時代の終わりを意味している。

かつて1970年代にエンツォ・フェラーリに乞われ、不振にあえぐスクーデリアを立て直したモンテゼーモロ。エンツォ亡き後にも迷走を続けていた跳ね馬に再び着任したのは1991年のことだった。
以後、監督にジャン・トッドを、ドライバーに2連覇を達成したミハエル・シューマッハーを招集。策士ロス・ブラウンや名デザイナーのロリー・バーンらを加えたドリームチームは、シューマッハーの5年連続タイトル、コンストラクターズチャンピオン6連覇という目覚ましい活躍を見せた。またこの時期に市販車の品質も大幅に向上しビジネスでも成功を収めたフェラーリは、名実ともにワールドブランドに成長した。

しかし、2007年のドライバーズタイトル(キミ・ライコネン)、翌年のコンストラクターズタイトル獲得を最後にマラネロの一軍は栄冠から遠ざかっている。2010年にフェルナンド・アロンソが加入したものの、チャンピオンの力をもってしてもドライバーズランキング2位が最高(2010、2012、2013年)。特に今季の戦績はまったくふるわず、ライコネンとのワールドチャンピオン・コンビはこれまで13戦して未勝利、コンストラクターズランキングでも4位に沈んでいる。

一方で、市販車メーカーとしてもフェラーリは岐路に立たされている。これまでフェラーリはモンテゼーモロのリーダーシップのもと、グループ内でも一定の独立性を保ち、年産は7000台までとしてきたが、FCAは来月にもニューヨーク証券取引所に上場予定であり、フェラーリを含めグループは新たな経営局面を迎えようとしている。

そんな事実を背景に、重鎮としてフェラーリを仕切るモンテゼーモロと、グループを率いるマルキオンネの間の溝が深まっていったと見られている。地元イタリアGPでアロンソがリタイア、ライコネン9位と惨敗。これが決定打となったか、マルキオンネはF1での不振を「許されない」とし、時を経ずしてモンテゼーモロの辞任のニュースが流れた。

フェラーリは単なる自動車メーカーではない。モータースポーツの最高峰F1での成功こそがロードカービジネスを含めたブランドの命である。
今年4月、不振の責任を取りステファノ・ドメニカリがチーム代表の座から降り、北米市場で最高経営責任者を務めた経験のある販売のプロ、マルコ・マティアッチがマラネロのF1チームを取り仕切ることになった。モンテゼーモロの長期政権が倒れたいま、最古参チームは大きな変革の真っただ中にいる。

 
過去3回シンガポールで勝っているベッテル&レッドブル(前)。予選で2列目を確保し、レースでは今季最高位の2位でゴールした。メルセデスとの性能差は依然として歴然としており、レース終盤は古いタイヤで苦しい戦いをしいられたが、与えられた状況で今年一番のパフォーマンスを披露できたことには違いないだろう。チームメイトのリカルド(後ろ)は、比較的近くにある母国オーストラリアから駆けつけたファンの声援に応えての3位表彰台。バッテリートラブルが2位への挑戦を阻んだ。(Photo=Red Bull Racing)
過去3回シンガポールで勝っているベッテル&レッドブル(前)。予選で2列目を確保し、レースでは今季最高位の2位でゴールした。メルセデスとの性能差は依然として歴然としており、レース終盤は古いタイヤで苦しい戦いをしいられたが、与えられた状況で今年一番のパフォーマンスを披露できたことには違いないだろう。チームメイトのリカルド(後ろ)は、比較的近くにある母国オーストラリアから駆けつけたファンの声援に応えての3位表彰台。バッテリートラブルが2位への挑戦を阻んだ。(Photo=Red Bull Racing)

■メルセデス、最前列独占ながらライバルが肉薄

ナイトレースとなるシンガポールGPは今年で7回目を迎えた。1周5kmのサーキットは多くの人工灯に照らされ、そこにカレンダー最多となる23ものコーナーがひしめく。繰り返されるギアチェンジ、壁をかすめるドライビング、2時間に垂(なんなん)とする長丁場、高温多湿な気候などが相まって、ドライバーはタフな戦いをしいられることになる。

金曜、土曜の3度のフリー走行で2回トップタイムを記録したのは、マリーナ・ベイで過去2勝しているアロンソ。渦中のスクーデリアはライコネンも好調で、予選に入るとQ1でライコネン1位、アロンソ2位、Q2でもアロンソ3位、ライコネン4位と上位に顔を出していた。

結果的に、Q3ではいつも通りメルセデスが最前列を独占したが、ライバルが肉薄するスリリングな内容であった。シルバーアローの2台は最初のアタックでルイス・ハミルトン6位、ニコ・ロズベルグ7位と苦戦し、2度目のフライングラップで何とか定位置を獲得。ポールポジションは今季6回目、シンガポールで3度目となるハミルトンだった。しかしポイントリーダーで予選2位に終わったロズベルグとは0.007秒差。あってないような極めて僅差で決まったことになる。

ギャップという意味ではライバルチームとの争いも同様で、0.3秒の間にトップ6台が収まる大接戦となった。2列目に収まったのはレッドブルの2台で、ダニエル・リカルド3位、セバスチャン・ベッテル4位。フェラーリはアロンソ5位、トラブルで本領発揮とならなかったライコネンは7位だった。ウィリアムズのフェリッペ・マッサが6位、チームメイトのバルテリ・ボッタスは8番グリッドを得た。

マクラーレンのケビン・マグヌッセンが予選9位となったが、ポールタイムからは0.6秒も離されていないことからも、各車の拮抗(きっこう)具合が見て取れるだろう。トップ10最後はトロロッソのダニール・クビアトが入った。

前戦イタリアGPでの惨敗、チームのカリスマ的存在だったルカ・ディ・モンテゼーモロ会長の退任と変革の中にあるフェラーリは、シンガポールで復調の兆しを見せていた。フェルナンド・アロンソ(前)は予選5位から4位フィニッシュ、セーフティーカーのタイミングでピットに飛び込み作戦を変えたが奏功しなかった。キミ・ライコネン(前から2番目)は7番グリッドから8位。(Photo=Ferrari)
前戦イタリアGPでの惨敗、チームのカリスマ的存在だったルカ・ディ・モンテゼーモロ会長の退任と変革の中にあるフェラーリは、シンガポールで復調の兆しを見せていた。フェルナンド・アロンソ(前)は予選5位から4位フィニッシュ、セーフティーカーのタイミングでピットに飛び込み作戦を変えたが奏功しなかった。キミ・ライコネン(前から2番目)は7番グリッドから8位。(Photo=Ferrari)
予選2位のロズベルグは、スタート前にギアチェンジがうまくできないというトラブルに見舞われピットから出走。最下位近辺での走行を余儀なくされたが、最初のピットストップで問題が解決できず今季2度目のリタイアを喫した。ハミルトンが優勝し25点を獲得したことで、22点あったリードは逆に3点のビハインドになってしまった。(Photo=Mercedes)
予選2位のロズベルグは、スタート前にギアチェンジがうまくできないというトラブルに見舞われピットから出走。最下位近辺での走行を余儀なくされたが、最初のピットストップで問題が解決できず今季2度目のリタイアを喫した。ハミルトンが優勝し25点を獲得したことで、22点あったリードは逆に3点のビハインドになってしまった。(Photo=Mercedes)

■ロズベルグ、トラブルで痛恨のリタイア

シンガポールGPから、ピットとドライバーの無線のやり取りに規制がかかることになり、ドライバーへの“コーチング”、例えばブレーキングのポイントや他車と比較してのDRSの使い方指南などが禁止された。
その効果が出るのかどうかということを含め、注目すべき点が多いナイトレースは、スタート前にチャンピオンシップリーダーにトラブルが襲いかかるという波乱で始まった。

2番グリッドのロズベルグはステアリングに起因すると思われる問題でクラッチやギアチェンジが不調、フォーメーションラップに出られず、ステアリングを交換してピットレーンからのスタートに。ライバル不在の中、ポールシッターのハミルトンがリードを守り、ベッテル2位、アロンソ3位、リカルド4位、ライコネン5位、そしてロズベルグは最下位の21位でそれぞれオープニングラップを終えた。

当初、1位ハミルトン、2位ベッテルは互いにファステストラップを更新しながら1.6秒の差を保っていたが、61周予定のレースの6周目から、少しずつメルセデスがレッドブルを引き離しにかかった。10周を過ぎるとベッテルのペース下落が顕著になり、12周で6.6秒まで開いた。

一方のロズベルグはトップから4、5秒遅れのラップタイムで20位。抜きにくいマリーナ・ベイではポイント圏内まで挽回することも至難の業といえた。13周目にピットへ飛び込み、ステアリング交換を試みるもマシンは完調とならず止まったまま。結局ロズベルグは今年2度目の、痛恨のリタイアを喫した。

宿敵ロズベルグがいなくなったコースでハミルトンはトップを快走。最初のピットストップを終え、2位ベッテルとの間隔は7秒から8秒、9秒と徐々に拡大していった。
その後方では、3位アロンソがベッテルに接近。3秒あったギャップは21周で2.3秒、1.9秒、1.6秒、1.2秒と縮まり、25周目、フェラーリはアンダーカットを狙い2度目のタイヤ交換を行った。そしてアロンソは、翌周ピットに入ったベッテルの前を行くことに成功したのだった。

今回もケータハムから“出場できた”小林可夢偉。予選ではライバルのマルシャの1台を何とか上回り20番グリッドを獲得したが、フォーメーションラップ中にマシンがストップ、1周もしないままコックピットを降りた。鈴鹿サーキットでの日本GP目前だが、いいニュースは聞かれない。(Photo=Caterham)
今回もケータハムから“出場できた”小林可夢偉。予選ではライバルのマルシャの1台を何とか上回り20番グリッドを獲得したが、フォーメーションラップ中にマシンがストップ、1周もしないままコックピットを降りた。鈴鹿サーキットでの日本GP目前だが、いいニュースは聞かれない。(Photo=Caterham)

■セーフティーカーをものともせず、ハミルトン圧勝

レース半ばの31周目、他車と接触したセルジオ・ペレスのフロントウイングが走行中に脱落、破片が飛び散ったことで、シンガポールでは毎年出動するセーフティーカーが今回も出番を迎えた。
38周目にレース再開。1位ハミルトン、2位ベッテル、3位リカルド、アロンソは作戦を変えセーフティーカー中にピットへ飛び込んだことで4位に落ちていた。ハミルトンはリードタイムを帳消しにされたばかりか、2種類あるタイヤのうちまだソフトタイヤを履いていなかったため、ルールに従いあと1回タイヤ交換に入らなければならなかった。つまりハイペースで飛ばして後続を十分に引き離さないと、既に規定の2種類を装着した、ノンストップで走り切れるベッテルやアロンソらに優勝を奪われかねなかった。

ハミルトンは再スタート後の1周で3.2秒も離し、5.8秒、7.6秒、9.7秒と、1周約2.5秒も速い異次元のスピードで逃げた。48周を過ぎると1位ハミルトンと2位ベッテルの差は20秒。ピットに入り首位をキープするためには27秒は欲しかったが、25秒開いた段階でいよいよハミルトンのタイヤがタレだした……。

メルセデスの緊迫したピット作業は52周終了後に訪れた。ピットアウトしたハミルトンの横を、ベッテルがトップで走り抜けて首位逆転。しかし古いタイヤをだましだまし走る1位ベッテルに2位ハミルトンはあっという間に追いつき、程なくして(しかしやや強引に)追い越してしまったのだった。

レースは規定の2時間を超えたため、予定されていた61周レースは60周でチェッカードフラッグを迎えた。セーフティーカーにより難しいポジションに立たされたハミルトンだったが、最終的に13.5秒ものマージンを築いて圧勝。これで22点あったロズベルクとのポイントギャップは一気になくなり、3点差でチャンピオンシップ首位に躍り出ることになった。

2位に終わったベッテルは今季最高位でゴール。リカルドとともに使い古したタイヤを何とかもたせ、レッドブルは2-3フィニッシュを飾った。セーフティーカー中にフレッシュなタイヤを履き賭けに出たアロンソは、チャンピオンチームの強固な壁と、抜きにくいサーキット特性に表彰台を阻まれた。

これまでタイトル争いをリードしてきたロズベルグから、2連勝したハミルトンに首位の座が移った。シーズンを席巻しているメルセデスにとっての課題は、時として熱を帯びすぎる2人のドライバーのマネジメントと、マシンの信頼性ということに変わりはないだろう。

次戦はいよいよ鈴鹿サーキットでの日本GP。10月3日の金曜日に開幕し、決勝は10月5日に行われる。

(文=bg)

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