初のタイラウンド、勝者はPETRONAS TOM'S RC F【SUPER GT 2014】

2014.10.06 自動車ニュース
初の開催となったタイラウンドを制した、No.36 PETRONAS TOM'S RC F(中嶋一貴/ジェームス・ロシター組)。
初の開催となったタイラウンドを制した、No.36 PETRONAS TOM'S RC F(中嶋一貴/ジェームス・ロシター組)。

【SUPER GT 2014】初のタイラウンド、勝者はPETRONAS TOM'S RC F

2014年10月5日、SUPER GTの第7戦がタイのチャーン・インターナショナル・サーキットで開催され、GT500クラスはNo.36 PETRONAS TOM'S RC F(中嶋一貴/ジェームス・ロシター組)が、GT300クラスはNo.3 B-MAX NDDP GT-R(星野一樹/ルーカス・オルドネス組)が勝利をおさめた。

日本国内と同様、レース前のグリッドはにぎやかな雰囲気に包まれた。
日本国内と同様、レース前のグリッドはにぎやかな雰囲気に包まれた。
GT500クラスがスタート。チャーン・インターナショナル・サーキットは、このレースが“こけら落とし”となった。
GT500クラスがスタート。チャーン・インターナショナル・サーキットは、このレースが“こけら落とし”となった。
安田裕信/J.P・デ・オリベイラ組の駆る、No.12 カルソニックIMPUL GT-R。最終的に3位でレースを終えた。
安田裕信/J.P・デ・オリベイラ組の駆る、No.12 カルソニックIMPUL GT-R。最終的に3位でレースを終えた。

■不安定な舞台での駆け引き

完成したばかりのサーキットで繰り広げられるレースが、波乱の展開になるのはいつものこと。とはいえ、今日のこの結果を2日前に予想できた者はおそらくいなかったはず。新設されたチャーン・インターナショナル・サーキットで開催されたSUPER GT第7戦は、それほど意外な結果に終わったといえる。

F1グランプリの開催も可能なサーキットが建設されたのは、バンコクの北、およそ400kmに位置するブリーラムという街。いや、実際にこの地に立ってその景色を眺めれば、“街”という言葉があまり適切ではないことに気づくだろう。それどころか、付近には民家もなければ商業施設も工業地帯もない。荒野のまっただ中に、チャーン・インターナショナル・サーキットは広がっているのだ。
この地にサーキットを建設したのは、地域の振興を目指すひとりの地元政治家。彼は4年ほど前、このサーキットの隣にサッカースタジアムを建設し、タイ・プレミアリーグに所属するブリーラム・ユナイテッドFCのホームスタジアムとした。つまり、サッカーに続いてモータースポーツを活用して、地域の活性化を図ろうとしているのだ。

完成したサーキットは全長4.554km。ほぼ真っ平らな土地に建設されており、コースは大小12のコーナーで構成されている。GT500クラスの平均速度はおよそ180km/hと比較的高め。しかも、長いストレートが2本あるため、オーバーテイクも決して難しくないとみられていた。
けれども、完成したばかりのサーキットで、しかも周囲は荒れ地のため、路面は砂ぼこりで覆われ、非常に滑りやすい状態となっていた。おかげで、走行ラインをわずかに外すとあっという間にコースアウトを喫し、またたく間に順位を落とすという光景が、決勝レース中に何度も見られた。

しかし、今日のレースの勝敗を分けたのは、そうしたコースコンディションではなく、ひとつのチームが編み出したある種の“奇策”だった。その背景となったのは、金曜日に特別に設けられたフリープラクティスの結果。この日のリザルトは、メーカーごとのポテンシャルを驚くほど明瞭に示すものだった。

こちらは、2番グリッドから2位でゴールした、No.24 D'station ADVAN GT-R(ミハエル・クルム/佐々木大樹組)。勝利こそ逃したものの、日産勢は2-3位を占めた。
こちらは、2番グリッドから2位でゴールした、No.24 D'station ADVAN GT-R(ミハエル・クルム/佐々木大樹組)。勝利こそ逃したものの、日産勢は2-3位を占めた。
GT500クラス表彰式の様子。大胆な「タイヤ無交換作戦」がレース展開を左右した。
GT500クラス表彰式の様子。大胆な「タイヤ無交換作戦」がレース展開を左右した。
こちらはGT300クラスのスタートシーン。地元タイのポルシェがレース序盤をリードした。
こちらはGT300クラスのスタートシーン。地元タイのポルシェがレース序盤をリードした。

GT300クラスを制した、No.3 B-MAX NDDP GT-R(星野一樹/ルーカス・オルドネス組)。今季初の勝利を手にした。


    GT300クラスを制した、No.3 B-MAX NDDP GT-R(星野一樹/ルーカス・オルドネス組)。今季初の勝利を手にした。
GT300クラスの2位は、No.7 Studie BMW Z4(ヨルグ・ミューラー/荒 聖治組)。トップと接戦を繰り広げたが、あと一歩およばず。
GT300クラスの2位は、No.7 Studie BMW Z4(ヨルグ・ミューラー/荒 聖治組)。トップと接戦を繰り広げたが、あと一歩およばず。

■勝利の決め手は「意外な戦略」

まず、トップ4を独占したのは4台の「日産GT-R」。その後ろに5台の「ホンダNSX」が続いた――と言いたいところだが、NSXの牙城に食い込んだ「レクサスRC F」もあり、残るRC Fがタイムシートの最下段を占める形となった。つまり、もっとも優勢なのはGT-Rで、その次がNSX。そして残念ながらRC Fにはまったく勝機がないことを、この日のリザルトは示していたのである。

フリープラクティス後、トヨタ系名門チームの首脳が、匿名を条件にこんなことを打ち明けてくれた。「RC Fのエンジンは日産やホンダに比べると開発が進んでいない。それが今日の結果に表れた」 。別のチーム監督はこうも語っている。「正直、いまのRC Fはパッケージとして負けている部分がある。自分たちは、戦い方を工夫することで、それを補わなければいけない」 。
今回、優勝したのは、No.36 PETRONAS TOM'S RC F。それはまさしく、チーム監督やエンジニアたちのたゆまぬ努力がもたらした結果だったのである。

レクサス勢は予選でも振るわなかった。最上位はNo.39 DENSO KOBELCO SARD RC F(石浦宏明/オリバー・ジャービス組)の6番手で、最後の4つのグリッドはいずれもRC Fで埋められていた。No.36 PETRONAS TOM'S RC Fもその一台で、彼らは12番グリッドからスタートしたのだ。
そのNo.36 PETRONAS TOM'S RC Fと、同じトムスが走らせるNo.37 KeePer TOM'S RC F(伊藤大輔/アンドレア・カルダレッリ組)は、なんとタイヤ無交換作戦でこの決勝レースに挑んだ。雨の絡むレースでは例外的に、1、2本のタイヤを交換せずに決勝を走りきることはあっても、ドライレースでタイヤ無交換作戦というのは、少なくともGT500クラスでは久しく見たことがない。それを、何のデータもないこの新設サーキットでやってのけたのだから、彼らの手腕は見事と言うしかない。

なお、同じくタイヤ無交換作戦で戦ったNo.37 KeePer TOM'S RC Fは、一時2番手に浮上したものの、最後はペースが落ち込んで4位に終わった。彼らに代わって2位の座を勝ち取ったのは、2番グリッドからスタートしたNo.24 D'station ADVAN GT-R(ミハエル・クルム/佐々木大樹組)。ヨコハマタイヤを履く彼らにとっても、この結果は快挙といっていいだろう。3位には、10番グリッドからスタートしたNo.12 カルソニックIMPUL GT-R(安田裕信/J.P・デ・オリベイラ組)が食い込んだ。

一方のGT300クラスでは“タイ旋風”が吹き荒れた。地元タイのI MOBILE AASというチームが走らせた「ポルシェ911 GT3 R」が予選でポールポジションを獲得。決勝でも順当にリードしていったが、レース後半にタイヤトラブルに見舞われて7位に後退。代わって優勝をさらったのは、2番グリッドからスタートしたNo.3 B-MAX NDDP GT-Rだった。そして2位はNo.7 Studie BMW Z4(ヨルグ・ミューラー/荒 聖治組)、3位はNo.4 グッドスマイル 初音ミク Z4(谷口信輝/片岡龍也組)と、2台の「BMW Z4」が表彰台を手に入れた。

シリーズ最終戦は11月15日(土)、16日(日)に栃木県のツインリンクもてぎで開催される。

(文=小林祐介/写真提供 GTA)

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