トヨタ、WEC富士でワン・ツー・フィニッシュ

2014.10.13 自動車ニュース
2014年FIA世界耐久選手権第5戦 富士6時間耐久レースにて、アウディの1号車を抑えて走るトヨタの8号車。(写真=トヨタ自動車)
2014年FIA世界耐久選手権第5戦 富士6時間耐久レースにて、アウディの1号車を抑えて走るトヨタの8号車。(写真=トヨタ自動車)

トヨタ、WEC富士6時間耐久レースでライバルを圧倒

2014年10月12日、世界耐久選手権(WEC)の第5戦となる富士6時間耐久レースの決勝が行われ、トヨタがワン・ツー・フィニッシュで勝利を飾った。

スタート直後の様子。序盤こそ3メーカーのLMP1マシンによる激しいつばぜり合いが見られたものの、その後はトヨタの2台が他を大きく引き離していく。(写真=トヨタ自動車)
スタート直後の様子。序盤こそ3メーカーのLMP1マシンによる激しいつばぜり合いが見られたものの、その後はトヨタの2台が他を大きく引き離していく。(写真=トヨタ自動車)

■レースのカギとなった富士スピードウェイの特性

WECは自動車メーカーの戦い。だから、メーカーごとの個性がはっきりと浮かび上がる。富士スピードウェイで開催されたWEC第5戦は、まさにそんな戦いとなった。

WECに参戦するLMP1マシンは、シリーズ最大の一戦であるルマン24時間に最適化した空力パッケージ(通称“ルマン・パッケージ”)と、それ以外のシリーズ用に開発した空力パッケージ(通称“WECパッケージ”)の2タイプが用意されるのが定石である。なぜかといえば、平均速度が飛び抜けて高いルマンではダウンフォースを極限まで削り取った空力パッケージが必要となるが、一般的なサーキットではもっと大きめのダウンフォースをつけたほうが速いラップタイムを刻める。これが、2タイプの空力パッケージを用意する最大の理由となっている。
ところが、富士スピードウェイで理想的とされる空力パッケージは、ルマン・パッケージとWECパッケージのちょうど中間くらい。このためルマン・パッケージのままではダウンフォース不足に陥り、WECパッケージのままではドラッグが大きすぎてストレートスピードが伸び悩むことになる。今回のレースは、これにどう対処するかでトヨタ、アウディ、ポルシェの明暗が分かれることとなった。

今回優勝を遂げたトヨタの8号車。ドライバーは、アンソニー・デビッドソンとセバスチャン・ブミエ。(写真=トヨタ自動車)
今回優勝を遂げたトヨタの8号車。ドライバーは、アンソニー・デビッドソンとセバスチャン・ブミエ。(写真=トヨタ自動車)
第3戦のルマン、第4戦のサーキット・オブ・ジ・アメリカズと連勝し、マニュファクチャラー・チャンピオンシップでトップに立ったアウディだが、今回、トヨタにワン・ツー・フィニッシュを許したことにより、その座を明け渡すこととなった。(写真=アウディ)
第3戦のルマン、第4戦のサーキット・オブ・ジ・アメリカズと連勝し、マニュファクチャラー・チャンピオンシップでトップに立ったアウディだが、今回、トヨタにワン・ツー・フィニッシュを許したことにより、その座を明け渡すこととなった。(写真=アウディ)
ルマン・パッケージのマシンで富士スピードウェイに挑んだポルシェ。予選では2番手、3番手と、トヨタの2台に割って入る速さを披露した。(写真=ポルシェ)
ルマン・パッケージのマシンで富士スピードウェイに挑んだポルシェ。予選では2番手、3番手と、トヨタの2台に割って入る速さを披露した。(写真=ポルシェ)

■それぞれのマシンに表れた三者三様の戦略

まず、トヨタはルマン・パッケージをベースとしながら、そこから徐々にダウンフォースを増やしていって、コーナリングスピードやタイヤ摩耗の点から必要最低限なダウンフォースを確保する手法をとった。
「先にダウンフォースの大きなセッティングを経験させると、ドライバーがローダウンフォース仕様になじめなくなってしまうから……」
トヨタのWECプログラムを担うTMGの木下良明代表はそう理由を説明してくれた。

一方のアウディは、WECパッケージをベースにダウンフォースを削っていったが、調整できる範囲で最もダウンフォースが小さい状態としてもまだ富士の最適レベルに対しては過剰な状態だった。このためAコーナーや100Rなどの高速コーナーではめっぽう速かったが、ストレートスピードでトヨタに一歩引けをとることになった。

では、ルマン復帰初年度となったポルシェはどうだったのか? 熱回生と機械回生の両方を備える高度なハイブリッドシステムを開発したポルシェは、ルマン・パッケージとWECパッケージの両方を用意する余力がなかったのか、ルマン後もルマン・パッケージのままシリーズ戦を戦ってきた。したがって今回も基本はルマン・パッケージそのまま。おかげでストレートは抜群に速いが、インフィールド・セクションでは大いに苦戦したのである。

つまり、ルマン・パッケージをベースにしながら富士にマッチしたセッティングを導き出したトヨタと、WECパッケージがベースのためダウンフォースが大きすぎる状態で臨んだアウディ、ルマン・パッケージしか手持ちがなく、ストレートは速くてもコーナリングスピードでは引けをとるポルシェとが刃を交えることになったのだ。

表彰台にて、笑顔を見せるトヨタ・レーシングのドライバーと、木下美明チーム代表。(写真=トヨタ自動車)
表彰台にて、笑顔を見せるトヨタ・レーシングのドライバーと、木下美明チーム代表。(写真=トヨタ自動車)
日本人選手としては、LMP1クラスでトヨタ・レーシングの中嶋一貴選手が2位に入ったほか、LMP2クラスではOAKレーシングの井原慶子選手が3位入賞を果たしている。(写真=webCG)
日本人選手としては、LMP1クラスでトヨタ・レーシングの中嶋一貴選手が2位に入ったほか、LMP2クラスではOAKレーシングの井原慶子選手が3位入賞を果たしている。(写真=webCG)
GTマシンのカテゴリーについては、GTE-ProクラスではAFコルセの51号車が、GTE-Amクラスではアストンマーチン・レーシングの95号車がそれぞれ優勝している。(写真=フェラーリ)
GTマシンのカテゴリーについては、GTE-ProクラスではAFコルセの51号車が、GTE-Amクラスではアストンマーチン・レーシングの95号車がそれぞれ優勝している。(写真=フェラーリ)

■ワン・ツー・フィニッシュでトヨタが首位を奪還

ここまで説明すれば、レースがどんな展開になったかは簡単に想像できるだろう。
予選では、ポルシェが高度なハイブリッドシステムをフルに活用してトヨタに迫ったものの、富士をホームコースとするトヨタはこれを意地で振り切り、8号車がポールポジションを奪い取った。2番グリッドと3番グリッドはいずれもポルシェ(20号車、14号車の順)。そして4番グリッドにはもう一台のトヨタ(7号車)が滑り込み、王者アウディは2号車が5番グリッド、1号車が6番グリッドという結果に終わった。

6時間で競われた決勝レースでは、トヨタの2台が8号車、7号車の順で後続を大きく引き離していったのに対し、ハイブリッドの効果を予選ほど引き出せなかったポルシェは20号車が3位、14号車が4位にとどまり、アウディの1号車は5位、2号車は6位でチェッカードフラッグを受けた。優勝は236周を走りきった8号車で、7号車は25秒差で2位。ちなみに、20号車はトップの1周遅れ、14号車と1号車は2周遅れで、2号車は3周遅れだった。
アウディ・スポーツを率いるウルフガング・ウルリッヒ代表は「今日は単にスピードが足りなかった。残るレースでは巻き返しを図れるよう奮闘する」と語り、悔しさをにじませた。

これでドライバーズ・チャンピオンシップではトヨタのアンソニー・デビッドソンとセバスチャン・ブエミが122点でトップに浮上。3番手にもトヨタのニコラス・ラピエールが96点で続き、アウディ2号車を駆るアンドレ・ロッテラー、ブノワ・トレルイエ、マルセル・ファスラーは93点で4番手にとどまっている。

一方マニュファクチャラー・チャンピオンシップでは、トヨタが183ポイント、アウディが175ポイント、ポルシェが109ポイントと、第3戦、第4戦の連勝でトップに立ったアウディをトヨタが抜き返した。とはいえ、その差はわずか8ポイント。残るは上海、バーレーン、サンパウロの3戦だが、トヨタとアウディの戦いは、おそらく最終戦までもつれ込むことだろう。

(文=大谷達也)
 

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