第16戦ロシアGP「ハミルトン圧勝、ロズベルグは自滅」【F1 2014 続報】

2014.10.13 自動車ニュース
初めての、F1ロシアGPの表彰台。ポール・トゥ・ウィンで4連勝を飾ったメルセデスのルイス・ハミルトン(右から2番目)、2位に終わったニコ・ロズベルグ(一番左)、3位に入ったウィリアムズのバルテリ・ボッタス(一番右)。(Photo=Mercedes)
初めての、F1ロシアGPの表彰台。ポール・トゥ・ウィンで4連勝を飾ったメルセデスのルイス・ハミルトン(右から2番目)、2位に終わったニコ・ロズベルグ(一番左)、3位に入ったウィリアムズのバルテリ・ボッタス(一番右)。(Photo=Mercedes)

【F1 2014 続報】第16戦ロシアGP「ハミルトン圧勝、ロズベルグは自滅」

2014年10月12日、ロシアにあるソチ・オートドロームで行われたF1世界選手権第16戦ロシアGP。たった数日前の日本GPで起きたジュール・ビアンキの大事故のショックと悲しみが癒えないまま、F1はロシアに初上陸した。
レースではポイントリーダーのルイス・ハミルトンが今年2度目の4連勝を飾る一方、追う立場のニコ・ロズベルグは1周目から自滅、その後挽回し2位でゴール。ドライバーズチャンピオンシップを争う2人の明暗が分かれたが、チームとしてのメルセデスは、今季9回目の1-2フィニッシュで初のコンストラクターズタイトルを決めた。

今年9回目の1-2フィニッシュ、13回目の勝利で、メルセデスは初めてコンストラクターズチャンピオンに輝いた。スリー・ポインテッド・スターのF1での活動は1954、1955年の2シーズンから長きにわたり休止していたが、2009年チャンピオンのブラウンGPを買収したことにより2010年から復活。それから5シーズン目で初戴冠の日を迎えた。(Photo=Mercedes)
今年9回目の1-2フィニッシュ、13回目の勝利で、メルセデスは初めてコンストラクターズチャンピオンに輝いた。スリー・ポインテッド・スターのF1での活動は1954、1955年の2シーズンから長きにわたり休止していたが、2009年チャンピオンのブラウンGPを買収したことにより2010年から復活。それから5シーズン目で初戴冠の日を迎えた。(Photo=Mercedes)
今季7回目のポールポジションから9勝目をマークしたハミルトン。一度もリードを譲ることなく、まさに圧勝だった。これでチャンピオンシップのリードをさらに7点増やし、ランキング2位ロズベルグに17点差をつけたことになる。ハミルトンは、ナイジェル・マンセルの持つイギリス人ドライバー最多勝記録に並ぶ、通算31勝目を記録した。(Photo=Mercedes)
今季7回目のポールポジションから9勝目をマークしたハミルトン。一度もリードを譲ることなく、まさに圧勝だった。これでチャンピオンシップのリードをさらに7点増やし、ランキング2位ロズベルグに17点差をつけたことになる。ハミルトンは、ナイジェル・マンセルの持つイギリス人ドライバー最多勝記録に並ぶ、通算31勝目を記録した。(Photo=Mercedes)

■事故の原因究明と対策を

マルシャのジュール・ビアンキがレース中の事故で頭部に深刻な大けがを負うというショッキングな出来事があった前戦日本GP。そのニュースは世界中に伝えられ、多くが25歳のフランス人ドライバーの回復を祈った。
事故後、ビアンキは意識不明の状態で四日市の三重県立総合医療センターに救急車で運ばれ、緊急手術を受けた。その後マルシャを通じて発表された家族の声明文から、集中治療室にいるビアンキの容体は深刻だが安定していること、“びまん性軸索損傷”と診断されていることなどが明らかになった。

このような大事故はその直後に混乱を伴うものであり、マルシャのチームメンバーをはじめ、多くのドライバーや関係者が動揺を隠さなかった。一方で、感情的な“犯人探し”を慎み、しっかりとした原因究明と対策を求めるという姿勢には、最高峰カテゴリーに携わるひとの矜持(きょうじ)というものが感じられた。GPDA(グランプリ・ドライバーズ・アソシエーション)の会長である元F1ドライバーのアレックス・ブルツも、早急な結論を求めず、まずは情報の収集に努めるべきだと語り、そしてパドックにいる誰もがいまもなお日本にいるビアンキの回復を願い、家族を思うのであった。

FIA(国際自動車連盟)はGPウイークの金曜日、ジャン・トッド会長らが出席して会見を開き、現時点で把握している情報を公表。「悪天候を理由にスタート時間を早めなかったことや、ビアンキのクラッシュ前に起きたエイドリアン・スーティルの事故直後にセーフティーカーを入れなかったこと、ヘリではなく救急車で病院に搬送したことなど、いずれも問題はなかった。ビアンキの事故はいくつかの不運が重なったことで起きたものだった」というFIAの見解が発表された。このような悲惨な事故を繰り返さないよう、イエローフラッグ中のスピード制限など具体的な対応が検討されている。

チーム国籍をロシアとし、イギリスに本拠を置くマルシャは、ビアンキへの敬意を表し、マックス・チルトンのみの1台エントリーとし、初開催のロシアGPを戦うこととなった。

スタートがよかった2番グリッドのロズベルグ(写真中央)だったが、ターン2でタイヤをロックさせ、フラットスポットを作って早々にタイヤ交換を行わざるを得なくなった。ライバルのハミルトンを追うことができず、後方からの追い上げに終始し、結果今年9回目の2位フィニッシュ。レース後、オープニングラップでのミスを「まったく不必要なものだった」と悔やんでいた。(Photo=Mercedes)
スタートがよかった2番グリッドのロズベルグ(写真中央)だったが、ターン2でタイヤをロックさせ、フラットスポットを作って早々にタイヤ交換を行わざるを得なくなった。ライバルのハミルトンを追うことができず、後方からの追い上げに終始し、結果今年9回目の2位フィニッシュ。レース後、オープニングラップでのミスを「まったく不必要なものだった」と悔やんでいた。(Photo=Mercedes)
コンストラクターズランキングでフォースインディアと5位を争うマクラーレンは金曜日から順調な仕上がりを見せ、ジェンソン・バトン(写真前)が予選と同順位の4位でゴール、ケビン・マグヌッセン(同後ろ)はギアボックス交換により5グリッド降格、11番手からスタートし5位まで挽回した。チームはこれでフォースインディアに20点差をつけ5位に上がった。(Photo=McLaren)
コンストラクターズランキングでフォースインディアと5位を争うマクラーレンは金曜日から順調な仕上がりを見せ、ジェンソン・バトン(写真前)が予選と同順位の4位でゴール、ケビン・マグヌッセン(同後ろ)はギアボックス交換により5グリッド降格、11番手からスタートし5位まで挽回した。チームはこれでフォースインディアに20点差をつけ5位に上がった。(Photo=McLaren)

■新設のソチでもメルセデスが最前列独占

これまで、F1開催の計画が持ちあがっては消えたロシアだったが、2月に冬季オリンピックが行われたばかりのソチに新設されたサーキットで、初のF1レースがようやく実現した。ちなみに世界選手権以前なら、帝政時代の1913、1914年にロシアGPが行われており、つまりロシアには100年ぶりにGPが戻ってきたことになる。

ソチ・オートドロームは、近年の新サーキットのほとんどを手がけてきたヘルマン・ティルケによるデザインで、カレンダー中3番目に長い5.848kmのコースは、一部に公道が使われている。メインストレートから実質的な直線の一部であるターン1を過ぎターン2に進入、五輪の聖火台をぐるりと回り込むターン3を抜け、アイスホッケーやスピードスケートといったオリンピック会場跡を縫うように走る。最終セクションでは、市街地コースに見られるような壁が近い90度ターンが続き、ドライバーにはスムーズなドライビングが要求される。

この新コースで速さを見せたのは言わずもがなのメルセデス勢。予選Q3ではルイス・ハミルトンが今季7回目のポールポジションを獲得し、0.2秒遅れたニコ・ロズベルグとともにシルバーアローが最前列を独占した。

しかしポールを狙えた“非メルセデス”がいたことも事実だった。ウィリアムズのバルテリ・ボッタスは、3つあるうち最初の2つのセクターで最速。メルセデスの8連続ポールを阻止するかに見えたが、タイヤを酷使しすぎ最終ターンでコースを外れ、3番グリッドどまりとなった。
ここにきてマクラーレンが堅調で、ジェンソン・バトンが予選4位、ケビン・マグヌッセンは6番手タイムを記録したが、ギアボックス交換で5グリッド降格のペナルティー。代わって6番グリッドには、レッドブルのダニエル・リカルドが繰り上がった。

予選の主役の座は、現役レギュラードライバー唯一のロシア人、トロロッソのダニール・クビアトが奪ったといってもいいだろう。若干20歳のルーキーで来季トップチームのレッドブルに“昇格”することが決まっている新進気鋭のドライバーは、見事、自身最上となる5番グリッドを獲得、母国ファンの前で最高のパフォーマンスを披露した。チームメイトのジャン=エリック・ベルニュは10番手タイム、マグヌッセンの降格で9番グリッドにつけた。

フェラーリは中団グループに埋もれ、フェルナンド・アロンソは8番手タイムで7番グリッド、キミ・ライコネンは9番手タイムで8番グリッド。トップ10の最後は、予選11位でQ2落ちしたチャンピオン、レッドブルのセバスチャン・ベッテルが収まった。

7番グリッドから6位に終わったフェラーリのフェルナンド・アロンソは、上位5台のメルセデス・パワーユニット勢に水をあけられた格好。フェラーリは燃料セーブに努めざるを得なかったという。16戦してスクーデリアは未勝利。このまま1年を通して勝てなければ、1993年以来となる、あしき記録を残すことになる。(Photo=Ferrari)
7番グリッドから6位に終わったフェラーリのフェルナンド・アロンソは、上位5台のメルセデス・パワーユニット勢に水をあけられた格好。フェラーリは燃料セーブに努めざるを得なかったという。16戦してスクーデリアは未勝利。このまま1年を通して勝てなければ、1993年以来となる、あしき記録を残すことになる。(Photo=Ferrari)

■ロズベルグ、オープニングラップでタイヤ交換

ピレリがソチに持ち込んだタイヤはミディアムとソフト。いずれも持ちがよく、さらにピットレーンのスピード制限が60km/hにまで下げられたこともあり、おおかたが1ストップでレースを終えるだろうと見られていた。

レースは、まずスタート直後のストレートで、2位ロズベルグが1位ハミルトンの背後に迫った。タイヤをロックさせながら強引にオーバーテイクしたロズベルグは、勢い余ってターン2でコースをはみ出し、さらにタイヤにフラットスポットを作ってしまいバイブレーションが発生、早くも1周でピットに飛び込んだ。ソフトタイヤからミディアムに変更し、53周レースの52周をノンストップで走り切る作戦に変更せざるを得なくなった。

10周を過ぎ、1位ハミルトンと2位ボッタスのギャップは2~3秒台。3位に上がったバトンはそこから10秒以上も離され、7番手から4位に上がったアロンソ、11番グリッドからポジションアップを果たした5位マグヌッセン、6位ベッテルらが続いた。

20番手まで順位を落としたロズベルグは14周時点で11位まで挽回。メルセデスの力量をもってすれば、抜きにくいコース特性も大した問題ではなかった。23周目に3位バトンがピットストップ、コースに復帰するとロズベルグが前。ロズベルグの表彰台獲得は十分に可能だった。

2月に行われたばかりのソチ冬季オリンピックの施設を利用した新サーキット。聖火台や各競技施設を縫うようにして1周5.8kmのコースが造られた。(Photo=Ferrari)
2月に行われたばかりのソチ冬季オリンピックの施設を利用した新サーキット。聖火台や各競技施設を縫うようにして1周5.8kmのコースが造られた。(Photo=Ferrari)

■ハミルトン、今季最多勝ドライバーに

その頃、首位ハミルトンはといえば、2位ボッタスとのギャップをさらに開きにかかり、20周で7.9秒のマージンを築いた。レース折り返しを前にアロンソ、ボッタスらが続々と1回限りのタイヤ交換に飛び込むのを見て、28周目、ハミルトンもピットに入り、トップのままコースに戻った。

30周目、ハミルトンの18秒後方には、まだタイヤを替えていないベッテルが2位を走り、3位ボッタス、4位ロズベルグの鼻っ面を抑えていた。翌周にレッドブルがピットに駆け込むと、ロズベルグがボッタスを抜きにかかり、メルセデスのもう一台はレース中盤にようやく2位のポジションに戻ることとなった。

1位ハミルトンと2位ロズベルグの間には20秒。ロズベルグはファステストラップを連発し追い上げを図ったが、その差はなかなか詰まらないばかりか、レース終盤にかけて3位ボッタスが最速タイムで猛追を仕掛けてきた。
結局、ボッタスは3.7秒差で3位のままチェッカードフラッグを受けたが、今年5回目の表彰台に、自身初のファステストラップという勲章が付くことになった。

メルセデスは今年9回目の1-2フィニッシュと13回目の勝利で、初めてのコンストラクターズタイトルを手中に収めた。ロシアGP初代ウィナーとなったハミルトンは今年2回目の4連勝。これで、16戦で9勝したことになり、今季最多勝ドライバーになることが決まった。一方、ランキング2位のロズベルグは、自らのミスでハミルトンとのポイント差を10点から17点に広げてしまった。

3戦を残して1人のドライバーが獲得できる最大ポイントは100点。最終戦ではダブルポイントが付与されるということを考えると、ドライバーズタイトルの行方はまだ分からないが、シーズン終盤にきて2008年王者のハミルトンが流れをつかんでいるということは事実である。

次戦アメリカGPの決勝は、11月2日に行われる。

(文=bg)

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